第百六話
<大工のあんちゃん最終章 死闘!!エルサレム神殿編!!>
クェエーーーーーーーーーー!!
バサッバサッ!バサッバサッ!
好餌を待ち構えるカラス達が、不気味に舞う丘がある!その名も『ゴルゴタの丘』である!エルサレム神殿から少し離れた丘の頂上にあり、別名『髑髏の並ぶ丘』とも呼ばれるこの場所は、処刑を禁じたユダヤ人の代わりに、ローマ軍が磔刑を行う場所として名高い。罪を犯した者やローマ軍に歯向かった者は、このゴルゴタの丘で容赦無く磔刑にさせられていた!
<フラウィウス・ヨセフス著作『古代ユダヤのトンデモ風俗誌』25ページより>
「よいか?!属州民どもよ!我々ローマ帝国は寛大な国家である!貴様らの望む信仰を許し、そして納めるべき税も低くした!だがそれでも、我々に歯向かい、追い出そうとする愚か者達がいる!」
ローマ軍百人隊長のロンギヌスが、ゴルゴタの丘で険しい表情で民衆に叫んでいます。その横には、槍を持った部下のカッシウスが睨みを効かせています。
「属州総督ピラトゥス様は、この度首都ローマにて!あのローマ皇帝ティベリウス様の右腕である親衛隊長官セイヤヌス様より!『ユダヤ属州民には寛大な処置を取るように』と命じられたのにである!」
クェエーーーーーーーーーー!!
バサッバサッ!バサッバサッ!
再び不気味なカラスが空を舞い、自分達の餌を狙っているようです。民衆はロンギヌスの威圧的な言葉に、固唾を飲んで聞き入っていました。
「昨夜エルサレム神殿では!ヨハネの弟子を自称する輩が!我らローマ軍に歯向かったのである!これはもはやローマ国家に対する挑戦状である!その愚か者を、今すぐ我々ローマ軍に差し出すのだ!」
部下のカッシウスは槍を両手で持ち、他のローマ軍の部下達がようやく完成させた十字架を支えます。そう、本日は五人のアニキのファン達が磔刑にさせられるのです。
「その愚か者が出るまで!我々ローマ軍は何度でも!貴様ら属州民から怪しい奴らをひっ捉え、そしてここゴルゴタの丘で磔刑にする!よいか?!その愚か者を貴様らが差し出すか!?それとも本人が名乗り出るまでだ!!」
五人の十字架に打ち付けられたアニキのファン達は、両手首と両足首に太い釘を打たれています。血を流しうめき声で苦痛を訴えに対し、ローマ軍は事務的に打ち付けた釘の先を折り曲げ、そして容赦無く木槌で彼らの両脚を次々と折っていったのです。
「うあああ!!」
「いてぇええよ!!」
「アニキ!!助けてくれ!!」
「どうしてだ?!何で俺たちが?!」
「アニキ!!」
クェエーーーーーーーーーー!!
バサッバサッ!バサッバサッ!
民衆はアニキのファン達に同情しており、中には投石をしようと石を持ち出す人達もいました。しかし寡黙な部下のカッシウスは耳が良く、決して聞き漏らしません。鋭いローマ製の槍を彼らに向け、威嚇しながら一人一人に石を手放させたのです。
「よいか!貴様らユダヤ属州国は!我々ローマ帝国によって、手下にさせられた事を忘れるな!例え投石であろうと!我々は見逃しはしない!エジプトでも奴隷であった貴様らユダヤ属州民など!軍神マルスを祖とする我々ローマ軍にとっては、赤子も同然なのである!」
ロンギヌスは民衆に恐ろしい形相で睨みを続け、再び彼らを震え上がらせ続けてます。その民衆に紛れていたあんちゃんの弟子であるバルトロマイとフィリポは、ビビりながらも必死に、その模様をiPhone5で写真に収めています。
「(呟き)や、やべ〜よバルトロマイ。ローマ軍の奴ら本気だよ〜」
「(呟き)とにかくフィリポ。二、三枚写真撮ったら、とっととズラかろうぜ!」
二人はシャッター音が消せるアプリで磔刑模様を撮影していたのですが、
ピカッ!
「(呟き)あ、バルトロマイ!やべえ!」
「(呟き)何やってるんだ!フィリポ!」
操作ミスしたフィリポは、フラッシュを焚いてしまったのです。その光に気が付いたカッシウスは、民衆を無言でどかしながら、勢い良く槍を投げつけました。
ヒュン!ズサッ!
カッシウスの投げた槍は、見事にフィリポの股の間へ突き刺さりました。
「あわわわ!こええええ!!」
「(呟き)このままじゃ殺されるぞ!フィリポ。逃げるぞ!」
スタコラサッサ逃げ出すフィリポとバルトロマイ。ビビりまくってたフィリポは、自分のiPhone5を落とした事さえ気がつきません。カッシウスは強引に民衆を掻き分け、槍が突き刺さった場所へ辿り着きます。槍の側に転がるフィリポのiPhone5が一つ。
「どうした?カッシウス」
「槍を投げた先にこんなものが」
iPhone5を拾ったカッシウスは、ロンギヌスにそれを渡します。中身を確認すると、陽気なあんちゃんと弟子が映った写真がありました。ピクリと眉を上げるロンギヌス。
「ロ、ロンギヌス大隊長?!な、何をなさるんですか?!」
グシャ!
何とロンギヌスは、一握りでiPhone5を潰したのです!
「決して許さないぞ、愛の伝道師とやら!」
続く




