第百四話
<大工のあんちゃん最終章 死闘!!エルサレム神殿編!!>
「遂にインチキ治療を見破ったぞ!元大工!」
「なんだと?!」
声高らかに訴えたパウロの主張は、周りにいた民衆の注目を集めます。
「こいつらは元々グルなんだ!病のフリをさせて、タイミングを計って奇跡を起こしたパフォーマンスをしてやがったのさ!」
ザワザワ!ザワザワ!ザワザワ!
しかしあんちゃんは一笑します。
「たははは、パウロっち。それは飛躍し過ぎだな。俺とこの病人は、知り合いでも何でもないさ。なぁ?」
「ええ、そうですね」
しかしタンコブパウロは諦めません。
「そんな事、信じられるか?!蘇らせたラザロは、あんたと同じセクシー女優のファンだったじゃないか!」
「あのなー、ラザロは落ち込んで、生きる気力を無くしてただけだ。死んでもねーし、生き返らせたわけでもねーよ」
ザワザワ!ザワザワ!ザワザワ!
確かにそうでした。あんちゃんは素直に事実を有りのまま語りましたが、奇跡を起こす救世主と崇めていたファンは、今のあんちゃんの発言に落胆を隠し切れません。
「何だよ、愛のミラクル伝道師とか宣伝してるくせに、やっぱりインチキかよ」
「どうせ水をワインに変えたとか、何だか眉唾ものになってきたぜ」
ムカ!
心無い民衆の言葉に、あんちゃんはむかっ腹立てました。
「おい!ちょっと待て、そこの民衆AとB!聞き捨てならねーな!俺がいつ、水をワインに変えたとか言ったよ?!」
「(民衆A)はぁー?何だよ。ワインもやっぱりインチキかよ?!」
「(民衆B)主人公だからって、粋がるなよ!」
ザワザワ!ザワザワ!ザワザワ!
民衆を脇役扱いしたあんちゃんは、ますます嫌われてしまいますが、あんちゃんの怒りはおさまりません。そこへパウロはすかさず、畳み込むようにあんちゃんを攻撃しました。
「こんなインチキ野郎なら、まだ洗礼者ヨハネの方が、しっかりしてたぜ!そうだろう?みんな?!」
オオオオオ!オオオオオ!
こればっかりは、流石のあんちゃんも言い返せません。タンコブパウロに扇動されてる民衆は、あんちゃんを攻め始めます。
「確かにタンコブのパウロの言うとおりだ!愛が大切だとか云うが、結局ヤクザ・ローマ帝国には何もしやしないぞ!」
「そうだ!そんな一銭にもならないもんで、俺たちの貧乏が救われるのかよ?!」
「そう言えばローマ皇帝にも、ユダヤの神にも金を払ったら、俺達は大損じゃねーかな!」
オオオオオ!オオオオオ!
炊きついた民衆の怒りは、どんどん膨れ上がります。あんちゃんは必死に叫びますが、所詮は一人の声。掻き消されるのがオチ。
「みんな聞いてくれ!得とか損とかの価値観だけに捉われたら、憎しみしか生まれない!」
「そうは言っても!今日喰えるものが無ければ、どうやって生きるんだ?!」
「だから!ソクラテスさんも言ってるだろ!人はパンのみで生きるにあらずって!」
「あんたは得意のインチキで、俺達貧乏人から恵んでもらえていたから、そんな悠長な事を言ってられるんだ!」
「何だと?!」
「税金も納めてないプータローが!偉そうに理想を語るな!この社会童貞野郎!」
カッチー〜ーーん!!
遂にあんちゃんブチ切れです。インチキ呼ばわりならまだしも、一番言ってはいけない言葉を言ってしまったのです!
「誰だ?!チェリーって言ったクソ野郎はぁああああああ?!」
「本当の事だろうが?!」
「てめーーー!!覚悟しやがれ!」
「愛の伝道師が暴力ふるうぞ!!」
しかし民衆も負けてません!パウロに唆された彼らは暴徒化したのです!
「ヤバイ!トマス!元大工を止めろ!」
「分かった!ペテロ!」
二人が必死にあんちゃんを止めますが、怒り狂ったあんちゃんは暴れるばかり。もはやこのままでは、あんちゃんヴァーサス民衆の喧嘩バトルになりかねません!
ザッザッザッザッザ!ザッザッザッザッザ!
この聞き覚えのある足音!軍律を重んじる厳めしい軍靴が地面を刻む音!あのローマ軍団の百人隊長ロンギヌスとカッシウスです!
「貴様ら!一体何の騒ぎだ!?」
「ここをローマの属州と知っての事か?!」
これには民衆もビビりました!弟子たちもビビりました!
「この暴動を煽った奴は誰だ?!」
威圧的なロンギヌスの声が、暴徒化していた民衆を抑えます。するとパウロがタンコブを抱えて、痛がりながらロンギヌス隊長に訴えました。
「あいつです!あの自らを救世主と名乗る元大工が暴動を起こしたのです!」
「なんだと?!」
流石に危険を感じたトマスとペテロは、あんちゃんの援護に回りましたが、しかしあんちゃんは両手で止めます。
「アニキの方がマシだってか?」
「馬鹿野郎!元大工!何を格好つけてるんだ?!」
「ローマ帝国に何もしないだって?」
「元ヤン!先ずは一先ずここは脱げるぞ!」
バコーーーン!バコーーーン!
あんちゃんは裏拳両手で、ペテロとトマスの二人を気絶させます。
「あわわわ!ペテロさんとトマスさんが!」
ロンギヌスの後ろには、この場所を密告したユダの姿。しかし逃げ惑う民衆に紛れて逃げ出しました。パウロもそのままその場を立ち去ります。ロンギヌスは再び威圧的な声で、確かめました。
「貴様が暴動の首謀者か?!」
「だったら、それがどうした?!」
あんちゃんの怒りの矛先は、明らかにヤクザ・ローマ帝国の百人隊長ロンギヌスに向けられてます。
「貴様!それがローマ軍に対する属州民の口の聞き方か?!」
しかし流石元ヤンキー。青筋を立てて怒り狂ったあんちゃんは、拳をポキポキ鳴らしてロンギヌスを挑発したのです!
「うるせぇーーーー!!ローマ軍がなんぼのもんじゃぁああ!!!かかって来いや!!!」
とうとうあんちゃんは、ローマ軍に喧嘩売ってしまったのでした。
続く




