第百三話
<大工のあんちゃん最終章 死闘!!エルサレム神殿編!!>
気持ちがモヤモヤのあんちゃんは、未だに悩んでいました。そんな様子に周りの弟子たちも心配しています。
「(呟き)バルトロマイ、先生平気かな?」
「(呟き)フィリポ、今回の先生は結構スランプに陥ってるかも」
「(呟き)昨日の頭突き事件で、エルサレムの人達の見る目が変わって無ければいいけど」
「(呟き)確かにそれは不安だ」
フィリポとバルトロマイの不安は的中しました。せっかくあんちゃんの人気が高まっていたのにも関わらず、傲慢な態度で接したあんちゃんの人気は少し下降気味になってしまってます。
「最初は好感持てた若者だったんだけどな」
「いかんせん罰が当たるとか、自分を神扱いしたらしい」
「勘違いもいい所だ」
あんちゃんはさらにイライラし始めます。どうか今はあんちゃんに抑えるよう、ペテロとトマスは説得しますが、それでも民衆からの心無い言葉が気になってしょうがない様子です。すると、そこへある男がやってきました。
「あああ!あんたがギリシアの医学を学んだ愛の伝道師ですか?」
「ういっす。。。」
あんちゃんは少しスネてます。ペテロはあんちゃんへ愛想よく振るまえと言いました。仕方なしに、あんちゃんは愛想よく振舞います。
「いかにも、この俺様がヒポクラテス様の医学書も読破した、愛の伝道師だぜ!」
「おお、素晴らしい!どうか病で動けない友人を助けてほしです」
「その友人はどんな病なんだ?」
「それが原因不明で動けなくなっちまったんだ」
「なるほど。よし、先ずは見てみよう!」
気前よく依頼を受けたあんちゃんは、どうやら気分転換になったようです。それらを見ていたタンコブ作られたパウロは、忌々しい思いで歯ぎしりしてみています。
「ち、畜生!あの元大工め。この俺様に頭突きしやがって!どんなインチキ治療しているか、俺が必ず暴いてやる!!」
あんちゃんがいる南口の小屋には、これから起きるであろうミラクルを見定めようと、多くの群衆が詰めかけてきました。とてもじゃないけど患者を、戸口から入れさせる事はできません。
「愛の伝道師!俺達はアニキのファンだ!」
「おおお!そっか」
「この中風の患者を天井から入れてやるぜ!」
「マジで?サンクス!」
アニキのファン数人が小屋の屋根の板を外して、病人の寝ている床をつり降ろしました。あんちゃん色々と診察をします。病人は必死にあんちゃんへ救いを求めます。
「どうか、どうか!治して下され」
「うーん。あんた、暴飲暴食してたろ?」
「ギク!」
「この酒焼けした浅黒い肌も、毎晩飲み歩いてたな?」
「ギク!ギク!」
あんちゃんの診断を聞いた民衆は、贅沢三昧な病人を罵倒し始めました。
「なんだってそんな奴を治療するんだ!」
「そうだ!そうだ!俺達は満足に飯も食えないのに!」
「贅沢は敵だ!そんな奴は放っておけ!」
あんちゃんはシカトして治療を続けますが、民衆の罵倒に病人は不安がります。もちろんタンコブ作られたパウロも便乗して野次を飛ばします。
「いやいや!みんな。こうなったら、この元大工のインチキ治療を見届けてやろうじゃないか!」
「あ!パウロ!てんめぇーいつの間に!」
「昨日はよくもやってくれたな?元大工!さぁ、愛の伝道師なら治して見せろ」
ムス!
あんちゃんは再びインチキと言われてイラついてます。すぐさまペテロとトマスがあんちゃんを宥めました。気持ちを落ち着かせたあんちゃんは、病人の口元から豪華な羽の先を見つけます。それはローマ皇帝名物の『孔雀焼き』でした。勘付くあんちゃんと勘付かれた病人。しばらくの間が流れた後、あんちゃんは耳元で囁きます。
「こんな贅沢な物喰ってたら、そりゃあんた罰が当たるよ」
「や、やっぱり?ですよね?」
「これからは贅沢は止めて、その分食べれない子供に分け与えるか?」
「え?」
「それを約束したら治してやるぜ」
「もちろんっす!治してくれるなら、絶対に約束します!」
「うんうん、あんたは良いやつだ♪」
するとあんちゃんは、その病人の足のツボを攻めまくります。さっきまで紫に膨れ上がってた足は、見る見るうちに元通りに治っていきました。そしてあんちゃんは病人の前に立ちあがって、詰めかける民衆に大声で叫びだしたのです。
「元気を出して立ちあがれ、病人よ。あなたの罪は赦された!」
両手を広げてあんちゃんに感化されるように、病人は恐る恐る立ちあがりました。なんと!民衆もこれにはびっくり!誰もが目の前で起きていることに、信じられない様子でした。しかし一連の様子を隈なく見ていたパウロだけは、異議を唱えたのです。
「やい!元大工!お前のインチキは見破ったぞ!」
「なんだと!?」
「はははは!そうやって貴様は今まで騙してきたんだな!?」
「バカ言ってんじゃねーよ!」
「いいか!さっきいった言葉こそ!神への冒涜だ!!!」
そこには、でっかいタンコブを抱えて不敵に笑う、あのパウロが立っていたのでした。
続く




