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第百一話

<大工のあんちゃん最終章 死闘!!エルサレム神殿編!!>


今日もいきり立ったパウロは、マッシュルームカットのマッカートニー坊やのいでたちであんちゃんに勝負を挑みます。


「やい大工!俺と勝負しろ!!」

「なんだなんだ?またまた、あのマッカートニー坊やがやって来たのか?」

「くそ!マッカートニー坊やって呼ぶな!」


するとパウロはマッシュルームカットのヅラを床に投げ捨て、自らの姿を晒しました。


「俺の本当の名は、パウロ!ファリサイ・レーベルのパウロだ!」

「パウロパウロ~♪」

「こらー!人の名前で唄うな~!」

「パウロパウロ~♪」


しかしあんちゃんは陽気にパウロを茶化してます。周りの人も釣られて笑ってました。バカにされたパウロだけは、怒り心頭であんちゃんに勝負をけしかけました。


「いい加減にしろ!そんな風にバカにしてられるのも、今のうちだぜ!」

「よーし、この俺様に挑戦する、その心意気だけは褒めてつかわすぞ、パウロパウロ~♪」

「パウロだ!」


<大工のあんちゃん VS パウロパウロ~♪(実はパウロ)討論バトル in エルサレム神殿 第三戦!>


「やい大工!聞けばあんたは、何時何処でも誰に対しても治療してるそうじゃないか」

「まぁ、そうだな。世の中こんなにいっぱい不安だらけで、困っている人がいっぱいいるんだからな」

「つまりそれは、年中無休ってことか?」

「まー、年末は紅白歌合戦があるから、コタツに入ってみかん食べてごろ寝しているけど、頼まれたら断れんわな」


するとパウロは高笑いしました。


「フワッハッハッハッハッハ~!!大工!ついに敗れたり!」

「な、何だと!?」

「言ったな?今、年中無休っと」

「言ってねーって。。。」

「いや言った!頼まれたら断れないから、いつでも働くと!」

「まぁ、そう言われたらそうだな」

「あれを見ろ!!」


するとパウロは、ヘロデ王の柱廊南西端屋上を指さします。そこにはラッパを片手に持つ人間が立っていました。あんちゃんは目を凝らして眺めています。


「なんだ?うちの楽器隊の一人か?」

「ちがーう!彼は日曜日を知らせるラッパを吹く男だ」

「ほうほう」

「つまりだ、大工!日曜日はどんな仕事もしてはいけないのだ!なのにお前は頼まれたら、断れないと言った!それはモーゼの十戒違反じゃないのか!?」


パウロの質問は、非常にクレバーでした。そうです、第三十話に出てきた、『モーゼおっさんの十戒』の一つを思い出してみましょう。


"四、日曜日は休む為にあるのじゃ!仕事しちゃあかん!"


そうです。十戒に厳しく刻まれているように、ユダヤ人達にとって安息日と呼ばれる日曜日は、仕事に関わる全ての事をしてはいけない法律だったのです。しかし、あんちゃんは頼まれたら、日曜日でも治療すると言ってしまったので、パウロに指摘された通り、これでは法律違反で逮捕です。


「なるほど、パウロパウロ~♪が言うのは一理あるな」

「人の名前で唄うな!どうだ!?お前はモーゼ法律違反だぞ!」


するとあんちゃんはじっと目を閉じて、両腕を組みながら考え込んでしまいます。してやったりのパウロは満足気でした。


「それじゃパウロ。お前の父ちゃんと母ちゃんが、日曜日で死にそうになった時も、お前は見捨てるのか?」

「え?そ、それは」

「仮にお前が病院に駆け込んでも、医者も日曜日で休みだ。どうするんだ?仮にお前自身が両親を治療しようとしても、それは仕事に関わる事だから、やってはいけないんだろう?」


パウロは答えに困りました。しかし、ここで日曜日は絶対に休まないといけない!と答えなければ、あんちゃんを論破する事はできません。あんちゃんをぶっ潰すためには、心を鬼にして宣言しました。


「そうだ!例え自分の両親が死にそうになっていても、日曜日には、絶対に仕事をしてはいけないんだ!!!」


ザワザワザワザワ、ザワザワザワザワ、ザワザワザワザワ。

周りの人々パウロの答えにはざわつき、あんちゃんの答えに注目が集まります。しかしさすがあんちゃんです。ニンマリと笑顔を浮かべ、パウロに答えました。


「するってーとよう、お前は二つもモーゼおっさんの十戒を破ることになるんだぞ?」

「へ!?」

「おっさんの十戒に刻まれた五番と六番を思い出してみろよ」


"五、父ちゃん母ちゃんは大切にするのじゃ!"

"六、人殺しはもちろん絶対にダメ"


そうです。十戒に厳しく刻まれているように、両親を大切にすること、そしてもちろん人殺しを認めておりません。パウロはまんまとあんちゃんに論破されてしまったのです。


「あああああああああああああああああああああああああ!!!!!そうだった!!!」


頭を抱えて落ち込むパウロでしたが、あんちゃんは優しく肩に手を添えて諭します。


「あのな、パウロ。確かにモーゼのおっさんは日曜日は仕事しちゃあかん!って言っているけど、絶対に破ってはいけない事を、破ってまでする必要があるとおもうか?」

「うぐぐぐぐぐ!」

「それにこの安息日って、神が6日間この世界を作って、7日目に休んだから、モーゼのおっさんも仕事しちゃあかんって言ってるだけなんだから」

「え、そうなの?」

「そうなんだよ。二つの罪を重ねるくらいなら、一つの罪にしておいた方がいいぞ」


結局パウロは、あんちゃんの言葉を、聞くしかありませんでした。


「俺はあわれみは好むが、いけにえは好まない。それだけだパウロ」


これにはパウロも八方塞。あんちゃんは今回も圧勝で、スタン・ハンセン宜しく、人差し指と小指を立てたジェスチャー『テキサス・ロングホーン』サインで勝利宣言します。


「ウィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィイイイ!」

「くっそ!覚えておけ!」


スタコラサッサー!パウロは再び、逃げるようにしてその場を去りました。その晩、オリーブ山にあるゲツセマネ園では、あんちゃんは夜の静かさを満喫していました。


「またもや圧勝だな?あんちゃんさん」

「おお、ロボス。あんたもここにやって来たのか」


あんちゃんは胸を張って、偉そうにしています。しかしロボスはそんなあんちゃんにある言葉を掛けます。


「しかしあんちゃんさん、あんたは天下無敵状態だな」

「あはははは、まーな」

「でも、自分がこの世でビッグな人間だと思って、あんまり調子乗っていると足を掬われるかもしれない」


ロボスのせっかくの言葉でしたが、あんちゃんは聞く耳を持ちません。


「ふふふ、俺の足元を見ない事だ」

「ほう?大した自信だ」」

「いいか?ロボス。こんな先行き不安な世の中で、みーんな夢も希望も諦めて、結婚や子供を持つことさえめんどくさいと思っている輩が多い中で、誰が救うというのだ?」

「だから自分が人の為に、その存在になろうと?」

「ああ。その通りさ!みんなの為さ!」


そんなあんちゃんの熱い想いに、ロボスはまるで水を差すように苦言をしました。


「あんちゃんさん。"人"と"為"の漢字を合わせると、なんという漢字ができる?」

「うーん。俺は漢字を使わないから分からないな」

「"にせ"という漢字ができるんだ。つまりな、人の為なんて言っている人間は、偽善者が相場なんだ」

「。。。」

「自分のエゴを心の奥に秘め、どこかで人の為にやっている自分に快感を得ているのさ。騙される奴もいるだろうが、所詮、そんな奴を信じた人間は、振り回されて不幸になるもんなんだ」

「だから?」

「今のローマの権力者達を見てみろ。いいや、ユダヤでもエジプトでもいい。世の中の縮図や図式というものは、支配する者と支配される者で構成されている。その中で、貧困層に下手な希望を与えるだけ、残酷というものさ」


あんちゃんさんは、初めてロボスに真正面から睨みを利かせました。


「それで、所詮世の中はそんなもんだから、無駄な事は止めろって言うのか?」

「いいや!あんたのエゴで発言したことが、あんたを信じる多くの人間が不幸になっても、あんたは責任をとれるのか?って事さ!人の心は複雑で、そしてとても繊細でもろい。ちょっとした言葉で傷付き、人は信じていた者に裏切られれば、その刃の先を簡単に他人へ向ける。そして幸せを奪い、憎しみの連鎖を続けていくものさ」


あんちゃんは、ふと哀しい瞳を浮かべながら、自分の思いをさらけ出します。


「それはよ、ロボス。何もしなくても同じじゃねぇか?」

「!?」

「俺の言葉に耳を傾けない連中だって、幸せになる奴もいれば、裏切られて他人を突き落とす人間だっているだろ」

「まぁ、確かに」

「それだったら、少しでも俺に耳を傾けてくれる人々には、悪感情に踏みとどまれるようなきっかけを持って欲しいのさ。もしそれが出来れば、ひょっとしたら何か芽生えるかもしれないだろう?」

「だがしかし!」

「いいか?ロボス。愛っていうのはよ、種まきと一緒なんだよ。道ばたに種を蒔けば人に踏みつけられ、岩の上に蒔けば水分がなくて枯れてしまうし、いばらの真中に蒔けば芽は塞がれてしまうかもしれない。でもよ、もし良い場所に蒔かれれば、生え出て百倍の実を結ぶんだぜ?」

「だが、そうは言っても!」


するとあんちゃんは右手を広げ、ロボスを黙らせました。


「それじゃ聞くけど、この世の中にエゴイストじゃない奴なんてどこにいるんだ?!」

「?!」

「普段弱いおとなしい動物だって、何も言わない草木だって、それこそ自然だって、その牙を人間に向ける時だってある。ローマの神々やギリシャ神話のオリュンポスの神々だって、我がままし放題だぜ!?」

「それは、神だから許されるのだろう?」

「それだったら我らユダヤの神だってよぉ、エイブラハムに子供を生贄にしろって言ったじゃねーか!神だからって何やっても許されるのかよ?ああん!?」

「。。。」

「エイブラハムは喜んで子供を生贄にしようと思えたか?否!その後に生贄を止めろって言われて、心から本当に嬉しかったと思うぜ!!」


あんちゃんの言葉は、ますますヒートアップしていきます。


「そんな気まぐれでエゴイストの神に比べたらよ!俺の叫んでいる愛なんて、可愛いもんじゃんか!無駄って言われようが何と言われようが!俺はみんなでハッピーな気分でいたい!それだけなんだよ!」


まるで鬱積した自分の思いを吐き出すように、あんちゃんは滝のように涙を流してロボスに訴えかけました。


「あんちゃんさん、俺はどうやら一つ誤解をしていたようだ」

「え?誤解?」

「ああ。あんちゃんさんは、エゴイストなんかじゃない」


しかし冷酷なロボスは見下すような視線で、あんちゃんに残酷な言葉を投げつけたのです。


「あんたは、ただ人に愛されたいだけの、惨めで中途半端なクソガキなのさ」


続く

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