第百話
<大工のあんちゃん最終章 死闘!!エルサレム神殿編!!>
パウロが果敢に大工のあんちゃんへ討論バトルを挑んでいる頃、ユダは怪しげな老人にある場所へ連れてかれました。
「おい爺さん、いつになったら、神の子として救世主になれるんだYo!」
「もう少しじゃ、待っておれ」
二人が暫く歩いて行くと、そこはエルサレム神殿の南西部にある大祭司の官邸でした。そう!あの悪名高いアイドル大手レーベル会社『サドカイ』です!
「おい爺さん、ここってまさか。。。」
「そうじゃ。お主の望みを叶えてくれる屋敷じゃ」
「まじかYO!?」
開かれた大きな扉を、二人はゆっくりと中へ進みます。謁見の間には、あのヒステリックなカヤパが待っていました。
「お前があの忌々しい大工の弟子、ユダでザマスか!?」
「ああ、俺はユダっすYo。でも、もう奴の弟子なんかじゃねぇYo!」
「そうザマスか」
「もちろんだともYo!あんな自分の名声の為に人の心を踏みにじり、全て横取りするような奴は、こっちから願い下げだYo!」
ユダはバシッとヒップホップ・ニュー・スクールスタイルで決めます。そんなユダにカヤパは、ニヤリと嘲笑し、ある計画を持ちかけます。
「ではユダよ、我々の計画に賛同すれば、お前にデナリウス銀貨15枚を与えるザマス」
「な!銀貨15枚もかYO!?マジで?!」
「マジザマス。更に報酬として我々サドカイレーベルが全面的なバックアップで、お前を救世主として世界デビューさせるザマス!」
ユダは超嬉しい感じです。やっと自分にもツキが巡ってきたと感じました。
「その計画とは、どんな事をすればいいんだYO!?」
「簡単ザマス。先ずは大工のそばでスパイするザマス」
「スパイ?!」
「そうザマス。あの大工の行動を、逐一こちら側に報告するザマス」
「分かったYO!」
「そして我々が大工を逮捕する時になったら、その時にお前は我々に、どの人物が大工なのかを示すザマス」
ユダはカヤパの簡単な計画に、少々気が抜けました。
「そ、それだけやれば、俺に銀貨15枚くれるのかYO?」
「そうザマス」
すると欲深いユダは、傲慢な態度で報酬の上乗せを求めてきました。
「もう15枚で、合わせて30枚にしろYO!」
「な、何ザマスと?!」
「へ、へっへっへ。舐めてもらっちゃ困るぜ。大工の側には喧嘩ぱやいペテロや、疑い深いトマス、それに剛力なシモンやマタイもいるんだ。俺だって命懸けなんだYO!」
カヤパは欲深いユダの要求を、瞬時に拒否しようとしましたが、ユダの後ろにいる老人は、静かにカヤパへ首を横に振りました。
「わ、分かったザマス。銀貨は合計30枚、それ以上はびた一文、払わないザマス!」
「やったぜ!これで取引成立だな?」
手を突き出したユダに、歯ぎしりしながら握手するカヤパ。老人はその様子に頷き、ニヤリと微笑み返しました。
「それじゃカヤパのおっさんYO!、早速スパイしてくるぜ!」
「シッシッ!とっとと行くザマス!」
ユダは意気揚々と胸を弾ませ、その場を立ち去りました。しかし、カヤパは杖を床に投げつけ、ユダのような貧困層に妥協した自分を許せない様子です。
「キーー〜ーーー!あんなプータローに、銀貨30枚もあげるだなんて!勿体無いザマス!」
「ほっほっほ、しかしこれで大工を逮捕出来るのなら、安いもんじゃろ?」
その老人の言葉に、カヤパも渋々納得せざるを得ません。
「老人よ、本当にこれで、あの大工を処刑する事ができるザマスか?!」
「もちろんじゃとも。あのユダという若者に任せておけば、カヤパ様の所へ、きっと、逮捕された大工がやってくるじゃろう」
「ウッキー〜ー!これで、私もピラトゥス様から嫌われなくて済むザマス!!」
カヤパは老人の言葉に歓喜しました。そして老人はその姿をじっくり眺めながら、ゆっくりとその場を立ち去ろうとします。
「待つザマス!老人、名前を聞かせるザマス」
「いえいえ、あっしなんか名も語る程の者じゃありやせん」
「しかしザマス。あんたの提案した策には、妙な説得力があったザマスから」
「ですが、カヤパ様には、もっと大切な事がありますじゃろ?」
「何ザマス?!」
「あの大工を審問される時、ご自分を敵対する勢力に対して、今から準備なされた方が良いかと」
「敵対?」
老人はコクリと頷いて、ある人物の名前を口にします。
「長老ニコデモ様はいかがされるのじゃ?」
「キー〜ー!ニコデモ!!!奴を忘れてたザマス!やばいザマス!奴と私は犬猿の仲!何とかしないといけないザマス!」
そういうとカヤパも焦って、その場を立ち去りました。老人は大祭司の官邸を出るなり、辺りをキョロキョロしながら、歩き始めます。
「フッ。カヤパもユダも、所詮人間は欲深い動物。目の前にぶら下がる餌には、抵抗できないようじゃな」
そのギラつく冷たい瞳は、あんちゃんがお気に入りのゲツセマネ園を目指していました。
「そしてあの大工は、ちと人が良過ぎる。憎しみを抱かず、今時珍しく、他人の愛を信じているとはな」
すると、今まで丸めていた背中を徐々に伸ばし始め、力強い歩き方へと変わって行きました。
「そんな大工でも、弟子の悪さや悪人の罪を、何処まで赦せるのだろうか?ぜひ、自身が語る愛とやらで、解決してもらおうか」
羽織っていた衣服を脱ぐと、そこには、若々しい肉体を隠し持った人物の姿が現れます。
「それにしても、大工の奴は俺に面白い名をつける。俺を太陽神ラーを守護する蛇神の名で呼ぶとはな」
ゆっくりとした瞬きと共に、シワだらけの老けていた顔は、次第に若々しく鋭い表情へ変化していきました。
「だがな、大工。時折欲深い人間達から、俺はこんな風に呼ばれる事もあるんだ」
そうです!この人物こそ、あのあんちゃんに興味をもった男、ロボスだったのです!
「ギリシャ語で悪魔の名を意味する、ディアボロスとな」
続く




