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第二話「異世界」

森を抜けた先には確かに道があった。

しかし、それは俺の予想していたアスファルトで舗装されたような道ではなく、

見渡す限りの草原を踏み鳴らしてできた土が剥き出しのひとつの線でしかなかった。


「何処の田舎に迷い込んだんだ……」


森の外に出れば道路標識等から現在位置が割り出せると思ったんだけど……。

と言うかここは日本なのか疑いたくなるほど広がる草原。

地平線とか見えてるぞ?


「あ、そうだ携帯!」


森を抜けたところで電波も改善されているかと思い、携帯を取り出す――。


「けんが……い?」


こんな開けた場所でもアンテナの部分は『圏外』の二文字が浮かぶ。

いや、それよりも不思議なことは画面に表示された時計の時刻。


――一時ジャスト。


森で目覚めてから、

不思議な女性と出会い森を抜けるまでは体感でも30分は超えているはず。

なのに携帯はおろか腕にはめた時計も秒針すら動いていない。

壊れた……にしては携帯の機能は壊れてはいない。

カメラは動くし過去のメールだって読める。

時計だけが全く持って動かない。

……と言うかAM1:00と表示されていて余計に訳がわからないし、

腕時計も同じ時刻で止まっているのも気味が悪い。

しかし、考え様によっては時刻は昼を過ぎてない可能性もあるわけだから、

急げばまだ出社時間に間に合うかもしれない。

……うん。この道の先が知ってる場所であればの話だけど。


「とりあえずその街って奴に行ってみますかね……」



………………。

その後、いくら歩いても電波が戻ることも無かったし、

時計が針を進めることも無かった。

何時間歩いたかは解らないが街には着けた。

着けたんだけど……


「ここ、何処?つーか何時代?」


ビルとか電線とかそんなのを期待してたんだけど……

なんと言うか、中世のヨーロッパのような町並み?

森を抜けてからずっといやーな予感がしてくる。


「えーっと、すいません」


予想を確かめるために街の人に声をかける。


「……なんでしょう?」


あー言葉が通じるか……。

少し警戒されてるのが気になるけど。


「此処に来るのは初めてなんですが……詳しく教えて貰えませんか?」

「ん?旅の人かい?そんなもの着てるから貴族の方かと思ったよ!」


ふむ……

警戒されてたのは服装からだったか……

まぁ服は後でどうにかするとして、貴族制度があると。


「此処はクエセル領シクダの街さ」

「クエセル領?」

「……あんた田舎モンかい?クエセル国って言ったら大陸1・2を争う大国だよ?」

「いやぁ、お恥ずかしながらこの大陸の歴史と言うものを

 何も学べなかったものですから……」

「普通は親が――いや、あんた結構苦労してるんだね?

 良かったら今日はウチに泊まりな!」


なんか、ものすごい勘違いされてそうだが逆に今は都合がいいかもしれない……

話を合わせて情報を少しでも引き出そう。

少ない会話からでもいやーな予感はもやが晴れてくるように鮮明になってくる。


結論から言うと、どうやら俺は異世界に飛ばされたらしい。


判断材料としては森を出たときに見た草原。

まず、日本ではありえない。(地平線とか見えてたし……)

だからと言って海外でも今の時代ありえないと思う。

言葉が通じてるし。

あと、考えられることはタイムスリップなのだけれども……。


「あったあった、これが大陸地図ってやつさね」


見せてもらった地図には見たことの無い形の地図だった。


「ありがとうございます、えぇっと……」

「私かい?私はマリー。」

「マリーおば……お姉さん」

「お姉さんだなんてやだよぅこの子ったら!」


言いかけた瞬間の目が怖かったので以後気をつけよう。

さて、此処からが本題だ……。


「僕の知らないことばかりでびっくりです。

 なんか僕って違う世界の人間なんじゃないかと思うぐらいです」

「ハッハッハ!面白いこと言うわねぇ!

 ……でも、冗談でもそんな話はしないほうが身のためだよ?」

「と、言うと?」

「最近はほら、魔物の数が増えたりとか活発化してるだろう?」


魔物!?

勘弁してくれ……異世界だけでもおなかいっぱいなのに……


「あーその、嫌なこと思い出させちまったかい?」


魔物に反応した俺を見てマリーさんが困った顔をした。

多分、マリーさんの中で俺は魔物に追われて流れてきたとでも勘違いしてるんだろう。


「いえ、大丈夫です」

「……とにかく、最近は不吉な噂が後を立たなくてね。

 未知のモノは排除しようって流れが強くなってきてんのサ」

「なるほど……詳しいんですね」

「ま、こういう話は中央からの流れでね?

 知らない旅人さん達が巻き込まれることもあるからサ」


酒場で働いているというマリーさんはその後も色々な話を俺に教えてくれた。

詳しいことは解らないが普段からやってるRPGの設定に似たところがあり、

ある程度把握できた。

正直、この世界のことを何も知らない俺にとってはありがたい。

とりあえず異世界から来たということは伏せて情報収集したほうが良さそうだ。


「……ところでマリーさん、

 先程から可愛いお目目がこちらを向いているのですが?」

「ん?あぁ、私の孫達サ。

 ほらリリー、ヨシュア挨拶しな!」


呼ばれた二人は緊張した様子で扉から出てくる。


「リリーです、よろしくええっと初めまして?」


歳は10と言った所かな?

幼いけどしっかりした様子でペコリと頭を下げる姿が可愛らしい。


「ヨシュアだよ!おじさんは貴族な……デスカ?」


こちらは少し離れて6か5歳ぐらいかな?

元気いっぱいだけど知らない(ましてやスーツ姿の)人が居たらそりゃ緊張するよね。

だけど、おじさんは……いや、彼等からしたら俺ももうおじさんだな……。


「アッハッハッハ!おじさんは失礼だよヨシュア!アンタまだ20そこらだろ?」

「いえ……これでも30になったばかりです」

「そうなのかい!?それじゃもうおじさんだねぇ!アッハッハッハ!」

「えーっと、リリーちゃんとヨシュアくんだね?僕はイチ、まぁ旅人だよ」

「旅人ぉー?」


旅人と聞いてヨシュアの目が輝く。


「強いの?魔物倒したの?洞窟とか行った?お宝ある?」

「えーっと、まだ旅を始めたばかりでね冒険はあまりしたことが無いんだ」


正直、魔物に会わなかったのが不思議なくらいだし。


「……なんにしろ、その服装は変えたほうが良いねぇ。

 リリー!おじいちゃんの服があったろ?アレ持ってきてあげな」

「はぁい!」

「いいんですか?」

「……箪笥で腐らせるよりかマシさね」


一瞬悲しそうな顔を見せたマリーさんに対して、俺は深く聞かないことにした。

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