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微笑みの裏の顔  作者: 穏世青藍


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微笑みの裏の顔

 私はいつも微笑んでいる。

 悲しいときも。

 苦しいときも。

 心を押さえ込んで微笑むの。

 彼が振り向いてくれたとき、いつも微笑んでいてあげたいの。

 安らぐ場所にしてあげたいの。

  

 でも・・・。

 でも・・・。

 でも・・・。

 彼には女がいる。

 また、服の趣味が変わった。

 最近、大胆になった。

 前々から、女好きだった。

 付き合う前から、何度も何度も泣かされた。

 

 女が出来ると、私とは何もなかったかのように、放っておかれた。

 話しかけても、まるで別世界にいるかのように、無視をした。

 その繰り返しだった。

 本当は離れたかった。

 でも、彼に初めて会ったとき、私の頭の中に 一生側にいるよ という成人になった彼の心の声が入ってきた。

 だから、私は、この人が私の一生の伴侶になるのだと思った。

 神様が私に与えてくれた人だと思った。

 えっ・・・ と、思った。

 不思議な感覚だった。

 嬉しい。

 素直にそう思った。

 だから、その心の声に、 一生側にいます と、誓った。

 神様の前で、誓いを立ててしまった。

 きっと神様がお膳立てをして下さったと思った。

 普通の人なら、運命の出会いとしてハッピーエンドな恋愛話になるだろう。

 でも違った。

 彼は付き合う前から、浮気をしていた。

 気が済むまで私を翻弄して、ボロボロになったら捨てて、他の女の元へ行った。

 その繰り返しだった。

 だから、離れたかった。

 

 周囲からは、私が彼に未練があって離れられないでいるのだと思われているだろう。

 確かに、それも、あるかもしれない。

 彼は、私の、初恋の人だった。

 満面の笑みと大胆な立ち居振る舞いで、平凡な私に、心の底まで光を差した。

 

 いつも、側にいた。

 いつも、振り回された。

 いつも、泣かされた。

 いつも、捨てられた。

 

 どうしてなの。

 どうしてなの。

 どうしてなの。

 

 他の女の子達には優しいのに。

 どうして私には優しくしてくれないの?

 

 神様が与えてくれた人が悪いはずがない。

 神様は全てを見通していらっしゃる。

 きっと、彼は、最後には側にいてくれるんだ。


 でも・・・。

 でも・・・。

 でも・・・。


 でも、もう、疲れちゃったみたい。

 それは、その感情は、昔からあったけれども。

 

 神様。

 どうか、私を許して。

 もう、私は微笑めない。

 彼に安らぐ場所を作ってあげられる、精神的体力がもう無くなってしまった。

 ここまで頑張った私を、どうか、どうか、許して。

 

 神様がお膳立てしてくれた人なんだ。

 神様の命に従わないといけない。

 神様に逆らう事なんて、私には、出来ない。

 神様に、逆らいたくない。

 そんな、おかしな人に、なりたくない。


 神様、どうしてこの人なの。

 神様、どうしてこの人の声を私に聞かせたの?

 この人は神様の前で私に誓ったのに、好き勝手に生きている、思うがままに生きている。

 ただ、純粋な人なんだ。

 神様の誓いを破っても許される人なのか?

 私はその無垢な心を邪魔する悪者なのか?

 

 嫌だ。

 嫌だ。

 嫌だ。

 私はそんな人になりたくない。

 私はこの人から愛されなくてもいい。

 お願い。

 神様。

 私を許して。

 私の微笑みを、彼に向けたくない。

 どうか、神様、命をお下げ下さい。

 私は、自由になりたい。

 この人から、自由になりたい。

 そして、誰か他の人からの、本当の愛を受けたい。


 神様の命はきっと正しい。

 でも、私は耐えられない。

 助けて。

 助けて。

 誰か、助けて。

 もう、もう、微笑めない。


 神様の言うことを、聞かなかった後のこと、を考えられない。

 きっと、それは、恐ろしい。

 罰を与えられる、その瞬間が想像できない。

 神様に見放されたら、どうやって、生きれば良いの?

 私は神様なしでは生きられない。

 そんな恐ろしいことを考えられない。

 神様のご加護がないと、生きていけない。

 逆らいたくない。

 言うことを聞きたい。

 良い子でいたいのに、悪い子だと思われたくない。

 嗚呼、でも、私は悪い子だ。

 彼から離れたい。

 本当に心から自由になりたい。

 私の微笑みを自由にしてあげたい。

 

 病めるときも健やかなるときも・・・。

 嗚呼、分かったいる。

 彼は、きっと、病気なんだ。

 神様の言うことを聞かないなんて、悪い病気なんだ。

 その病気の人を私は見捨ててはならないと、神様は、おっしゃっている。

 分かってる。

 分かってる。

 嗚呼、分かってるの。

 病気ならば、助けてあげなければ。

 病気でない私が、病気の彼が治るまで、側にいてあげなければ。

 

 ずるくないか?

 ずるくないか?

 するいでしょう?

 だって、彼は、好き勝手に心の赴くままに、人生を謳歌しているんだ。

 神様の教えを無視して。

 私は神様の教えを、ずっと、守ってきた。

 心の底をずっと我慢して。

 そして、いつも、微笑んで待っている。

 思わない。

 でも、思っても良いのでは?

 

 彼は、私を、馬鹿にしている。

 彼から離れられない私を、馬鹿にしている。

 何か、とても、ムカつく。


 だれが、彼と一緒にいたいものですか。

 私は彼も都合のいい女じゃない。

 私は彼のものじゃない。

 彼の裏の顔の欲望が、いつも黒く見えるのよ。


 彼が怖い。

 彼以上に神様が怖い。

 なんて、ひどい試練を私に与えるのですか?

 私の微笑みは、彼を見ると、演技をしなければ微笑めなくなっている。

 私は、もう、ボロボロです。

 情けない女だと思われている。

 彼から、離れられなくて。

 惨めです。

 笑われて、惨めです。

 

 彼から、きっと、見下されている。

 だから平気で浮気するんだ。

 彼はいつも幸せそうだ。

 他の女の子達も、いつも、幸せそうだ。

 私はいつも不幸せだ。


 彼が、たまに、私の元へ戻ってくる。

 堂々と、戻ってくる。「

 そして、甘えてくる。

 私は、今度こそ、神様のいうことを聞いてくれるかもしれないと、期待する。

 でも、都合の悪い所になると、私を悪者にする。

 そして、何事もなかったかのように、私から離れる。

 視界に私がいても、その目は認識していない。

 彼には私は空気に映っている。

 空気すら映っていないだろう。

 私の存在すら忘れている。

 私の微笑みが、存在から、消えている。

 それは、まるで、私は、最初からいなかったかのようだ。

 

 どうすれば良いの。

 どうすれば良いの。

 どうすればこんな彼を愛せるというの?


 離れたい。

 離れたい。

 嗚呼、神様。

 お願い。

 私が彼を見捨てるなんて言わないで。

 見捨てるんじゃない。

 諦めただけ。

 私に彼を諦めさせて。

 どうか。

 どうか。

 嗚呼、どうか、お許し下さい。


 私は幸せになりたい。

 私の幸せの先には彼はいません。

 それでも、私にこの屈辱を浴び続けろとおっしゃるのですか?

 耐えられないのは罪ですか?

 これは、私の業ですか?

 私はまだ人間が出来てはいませんか?

 こんなに耐えているのに。病気を治そうとしているのなら、助けたい。

 でも、治そうとしていないのなら、離れたい。

 私はそんなに我儘ですか?

 私は結構頑張りました。

 もう、これ以上は無理なのです。

 心の底から四方八方に筋繊維がきりきりと引っ張られているようです。

 とても、とても、痛いのです。

 心の底も、体中も、痛いのです。

 だから、どうか、お許しください。

 どうか、私を、見捨てないで下さい。

 私は、何も、悪いことをしてこなかったのに。

 この彼から離れることが、そんなに、駄目なのですか?

 

 嗚呼、誓いの取り消しの魔法の消し方が分からない。

 心の声が私に入ってきたときは、間違いなく大人になった彼の声だった。

 でも、それをまた、言ったら、どうなるのだろう。

 合っている。

 合っている。

 合っている。

 確かに、大人になった彼の声だった。

 そして、その声を私に聞かせたのは、神様のはずだ。

 そんな事が出来るのは、神様しかいない。

 彼は、神様の前で誓いを立てた。

 私も、神様の前で誓いを立てた。

 心の中で。

 そして、その心の声は、彼の頭の中に入ったはずだ。

 声に出してはいない。

 声に出してはいない神様の前で誓いを立てたことを、彼に言ったら、どういう反応をするだろうか?

 言っていないと言いそうだ。

 きっと逃げるだろう。

 声に出してはいけない。

 声がどうして聞こえたのだと言われるだろう。

 そして誓ったのだから、お前は一生側にいろ と、平気な涼しい顔で言うだろう。

 どうすれば良いの?

 どうやって、心の声の誓いを取り消せば良いの?

 私は頭が悪い。

 考えなくっちゃ。

 私の微笑みを守るために。

 

 嗚呼、神様の前に行かないと、心の声の取り消しが出来ない。

 きっと、彼は、してくれないだろう。

 嗚呼、嗚呼、どうすれば良いのだろう?

 彼が、私から離れるまで待つしか無い。

 それなら、私が、責められることは無い。

 だって、彼が、誓いを破っただけなのだから。

 私のせいにはならない。

 でも、何か、しっくりこない。

 ずるいような気がする。

 そんな子に、私はなりたくないの。

 でも、でも、でも、もう、限界なの。

 私が、私でなくなっちゃう。

 だから、もう、ずるい手を、私に許そう。

 ごめんね。

 私の、真心。

 こんなこと、したくなかったね。

 全てが終わったとき、そっと、泣こうね。

 許してね。

 

 彼の病は心の底から受け入れる。

 でも、彼の病は他の女の子達が癒やせば良い。

 私より、彼の側にいるのだから。

 それくらい、彼にしてあげてよ。

 それに、彼がそれを望んでいるから。

 私ではなく。

 他の女の子達を望んでいるから。

 ただ、戻ってきたときだけ、受け入れよう。

 でも、もう、心は、戻らない。

 私は、彼から、自由になる。

 私の健やかな微笑みを取り戻せる。

 神様の教え通り、病んでいる彼を受け入れよう。

 でも、それは、社会人としてのマナーとしての対応だ。

 マナーとしての微笑みを彼には向けよう。

 一定の敬意を払おう。

 それでも、少しは、一緒にいた人だから。

 でも、心が伴うかどうか、これからの彼次第で、分からない。

 きっと、彼へは、心が、伴わない。

 それでいいんだ。

 彼の愛は希望しない。

 その代わり、私の愛も与えない。

 彼は、いらないみたいだし・・・。

 だから、彼への微笑みは、愛がなくてもいいのよね。

 彼が健やかになるときまでどうしよう。

 健やかになっても、戻ってこようとしても、もう無理だわ。

 頑張った私は、ご褒美をねだろう。

 それくらい、してくれても、良いと思う。

 

 楽しみだ。

 楽しみだ。

 楽しみだ。

 その時、私は自由になる。

 長かった。

 長かった。

 長かった。

 ああ、 かれこれ、十数年。

 早く自由になりたい。

 そして、本当の愛を感じたい。

 私も愛される女になりたい。

 そして、その人に微笑みたい。

 それを、夢に見る。

 

 こんな当たり前のことが、こんなにも難しい。

 もう、惨めな思いは沢山だ。

 もう、笑われたくはない。

 

 これが、私の出した、答えです。

 神様、どうか、私をお許し下さい。

 

 彼の、他の女の子達への愛を受け入れよう。

 嗚呼、とても悲しい。

 でも、いいのよ。

 これでいいのよ。

 この試練の先に、自由があるわ。

 でも、苦しい。

 苦しいの。

 だって、心の底は、昔は、彼を愛していた気持ちが残っているのだから。

 愛していたんだもの。

 他の女の子達も元へ行く彼を見続けて、いつも振り返っても良いように笑っていた私を終にしよう。

 いつも愛する人を笑って迎えてあげられる人でいたかった。

 だから、苦しくても、笑っていた。

 もう、惨めな笑みは浮かべなくて良い。

 これからは、頑張ってきた私のために、微笑もう。

 切ない私の初恋。

 そして、さようなら、私の初恋。

 微笑んで、お別れ申し上げます。



                     終




 最後までお読みいただき、有難うございました。

 皆様は、どのような初恋の思い出がございますでしょうか?

 どんな思い出でも、いつか、振り返ったときに、頑張っていたご自分を褒めてあげて下さいね。

 

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