「きっと」
えっと、話がどうしてもずれそうになりましたが。
途中までなら完成に近いぐらいに出来たのでのせました。
どうぞ、ご覧下さい
右を見た、箪笥があった。左を見た、窓があった。上を見た、天井があった。下を見た、自分がいた。
罪をしてしまった人。それは、取り返しのつかない罪。
「お母さん……」
実の母親が、義理の父親に殺されていた。
いつも、真実が隠れていて、俺は、偽りだけを見てきた。の、かもしれない。そんな自分が憎い。真実がそこにあったのになんで俺はその真実に気づかなかったのだろうか。
その日、母親が死んだ日。俺はまだ、5歳だった。
今は、一人で歩いていける。だが、あのころは一人で何もできなかった。悲しくて、辛くて、心底自分が憎く思えた。
「真実をみなければ、何も始まらないだよ」それを教えてくれたのは、俺の一つ下の妹だった。
義理の妹、『近藤 ( こんどう )湊 ( みなと )』は、前を向いて歩いてくれた。実の父親が、義理の母を殺したのに、前をむいて歩いている。俺の分まで。俺は、前を向いて歩けなかった。
だって、俺は、義理の父の気持ちが……殺してしまった、気持ち、わかってしまうのだから。
「お兄ちゃん!」
かたい地面に寝そべっていた自分、瞼が重い、窓から入ってくる日差し、重たい瞼をひらくと、脚が見えた。
「パンツ、見えてる……」
「いやっ!」
なんて、他愛もない会話をする。頭を抱えながら下半身に力をいれ上半身を起こす。背骨が悲鳴をあげた。
「お兄ちゃん、徹夜したんだね。体壊すよ?」
なんて、君に言われると、もぉ、寝てはいけないような感じがする。
俺は、妹に恋をしているのかもしれない。なんて、思うけど、きっとそれは『恋』ではなく、僕たちには懐かしい『家族愛』というものだろう。
「早くしないと大学に遅れちゃうよ」
そういい告げると、俺の仕事部屋を後にする。俺は、髪の毛を掻きむしるようにかく。そして、目線を上にして天井を眺める。いや、眺めている。そのまんまバランスをとりながら、立ち上がった。
カレンダーを見ながら「4月14日か」とカレンダーの今日の日付を読み上げる。のんびりと足を動かしながら、自分の狭苦しい部屋から抜ける。
「やっときた。ご飯食べてね」
エプロン姿の湊がやけに大人びて見えた。もう高校3年か。なんて、考えると心に込み上げてくる悲しいと言う感情。俺は、ソファーに吸い込まれるように座り込む。そして、ため息をつくと手にしていたのは煙草だった。
「お兄ちゃん。タバコはダメ」
俺の手にあった煙草が湊の手の中でぐちゃっと音をたてた。俺は、また深いため息をついた。
「お兄ちゃん、今週いっぱいで小説の原稿上げないといけないんでしょ? 早く書きなよ? 先月も編集者さん困らせて、ニュースになり掛けだったんでしょ?」
俺は大学でたまたま書いていた本を、たまたま文化祭で展示したら、たまたま、有名な文庫さんに拾われたのだ。そしたら、結構ヒットしてしまい。今となってはファンもついた有名小説家だ。
「大丈夫だ。あと少しで終わる」
「それならいいけど」
机に並ぶブラックファスト。朝食。フォークを手に取り、ウィンナーをつぶすように刺す。そして、口へと運び歯と歯で砕く。はごたいがある皮付きウィンナー。
「一緒に登校しよう」
エプロンを脱ぐと、現代の高校生へ変化する。
「おぉ」
飯を口いっぱいにほおりこむ。そして、ソファーから離れ、リビングのカウンターの上に置いてある昨日からそのまんまの鞄を手にする。
「準備できた」
「じゃあ、行こう!」
何にも考えていないまっすぐな笑顔。そんな笑顔をされると、嫌なことが無かったように、風がどこかに連れて行くような。幸せが感じられる。これは、世に言う『恋』というものなのか。今の俺にはそんなこと考える余裕がない。
春の日差しが強すぎて、俺には、幸せすぎて。この瞬間を大事にしていて。心で何度も想っていたこと。君に会えるだけで、感じられる〝幸福〟が無くなる不安。必死で手をのばす自分が手にしている幸せ。でも、それは今だけのほんの小さな幸せかもしれない。
二度と戻らない時間。誰もが知らない、君と過ごした日。それは、ほんの数ページにしかないかもしれない。でも、俺はそれでも、君がそばにいるだけで、いつか君は他の人を愛してしまっても、君の事が特別で、大切で……そんで、愛おしい人。
――――そんな俺を、許してくれますか?
また、あの笑顔を俺に送ってくれますか?
俺は隣にいても……いいですか?―――――
「お兄ちゃん! いってらっしゃい!」
高校の前まで、送り終わると、いつものように手を振りながら俺を見送る妹。そして、女友達と合流。戯れない女子の会話。それを、何度も耳を傾ける。かすかな音も逃がさないように。
「お~、近藤君」
友人鈴木雄二が、俺に声を掛けてきた。俺は、少し間を空けて歩き出す。その後ろをヒョコヒョコと足を弾ませながら来る雄二。
「なんだよ……」
「久し振り!」
「この前会っただろ」
「つめたいなぁ」
俺は、小説のせいでろくに大学ライフというものを送っていない。別に、大学はただ行っているだけで、行く理由もない。ま、いいサボリだ。
「今日も、いい天気だな」
雄二が、空を見上げながら、眩しそうに俺のほうを見る。
春の日差しが強すぎて、目の前に手をかざした。桜の花びらが、踊るように風で散らばっている。そんな、道を雄二と歩いていた。妹と同じ学生服を着た人とすれ違う。道は、長くて俺は少し息を吐く。
「そういやさ。お前、何日ぶりだ」
雄二が聞いてきた。俺は頭の中のカレンダーを探る。何日だろう。一週間ぐらい。正確には何日だ。
「1週間ぐらい?」
「そうだっけ?」
二人して考える。何もない、通学路を、男二人で歩いていた。花がこんなに咲いているのに、俺らには目の前のことで精一杯。大学生というものはそういうものだ。とくに、夢見ている「大学ライフ」というものはうまくはいかない。
大学の門が近づいていくにつれ、俺にあいさつする奴も多くなってきた。俺は、軽く挨拶を返す。
「おぉ、工藤じゃん」
と、大学の先輩や同年代の人々が俺の周りに集まってきた。
「お久しぶりです」
俺は丁寧に頭を少し下げる。社交辞令というものだ。一応は俺も大学という社会にいる限り、礼儀を知らないとダメだろ。
「あ、工藤くん」
女性の声。俺は振り返ると、同じサークルの朝倉もえぎが話しかけてきた。前にも、ちょくちょく本の話で盛り上がったことがあるが、そこまで浸しいほどではない。
「えっと、朝倉?」
「そうだよ」
「久しぶり」
「本当だね。工藤君なかなか来ないから」
俺は苦笑いをしながら、彼女のとこまで歩いていく。彼女は俺に微笑む。俺も少しだけ微笑む。だが、俺は彼女にそれ以上の顔は見せない。だって、見せたらすべてを捧げそうで怖いからだ。
朝倉は、顔もいいほうでもてる。俺もたまに可愛いなとか思ったときがある。でも、彼女の噂はたまに聞く、いい噂ではない。だから俺は、彼女にあまり触れないでかかわる。
これが、彼女にとっても俺にとっても一番よいのだと俺は思っている。これが、人とかかわる上での一番の状況。深入りしないで触れ合う、これが大学ライフで一番大事なもの。
「あ、工藤君が前みたいって、言っていた本見つけたけど、一緒に図書館行く?」
「マジ!? 行く」
「じゃあ、今日サークル終わったら図書館で待ち合わせね」
彼女はそういい告げると、走って何処かに行ってしまった。俺は腕時計を見るとちょうど9時だ。この後、授業出るのがメンドイし、どうするか頭の中で考える。考えていると携帯に電話が入る。妹からだとすぐ分かる。妹だけ歌が違うのだ。
「もしもし」
「-あ、お兄ちゃん?」
「なんかあったのか?」
妹の声。俺の耳に吸い込まれていく。俺は、近くのベンチに腰をかける。
「あのね、今日部活で遅くなるおからご飯お兄ちゃん宜しくね」
「あぁ。分かった」
遅くなるなよ、とか、早く帰って来い。などという、余計な言葉は要らない。俺は、そのまま携帯を切った。深いため息をする。空気が息苦しく、太陽がまぶしい。これでいいのか? なにがいいの? という疑問が頭の中に生まれる。だが、俺は眠さで消した――。
人間の弱さがあるから、闇というのは生まれる。それと同じで、人間の強さから、光が生まれる。それが、闇と光、人類の法則――。
初めまして、夏目柚と申します。
はい、えっと、初めてこのサイトにうpさせてもらいましたが、えっと、まだまだうpしてもいいのかと言うぐらいのレベルです;
これから、コノ続きを頑張って書いて行きたいと思いますので、宜しくお願いします。
どうぞ、暖かい目で・・・