俺の居場所なんてどこにもなかった
「お前キモいんだよ!!!」
俺の横顔に激しい衝撃が走る。
これは何だろうか、、、
黒板消しか......
そんなもの投げつけられる機会がないのですぐにはわからなかった。
夕陽が差し込む教室で勉強をしていただけなのに……
どうしてこんな仕打ちを受けなければならないんだ。
この女共に何かしらの反抗をするべきなのだろうが
そんな気力も既に失ってしまった。
ここにいたら次は何をされるか分からない。
俺はカバンをもって教室から逃げだした。
途中、後ろから取り巻きの女の怒声が聞こえてきたが構わず走り続けた。
「はぁはぁ、な、なんとか撒けたかな」
気づけば駅まで走って来ていた。
駅のホームは人で埋め尽くされている。
「おーい皇く〜ん」
ふと振り返るとそこには同じクラスの鴻池さんがいた。
彼女とは1年生の時からテストで学年1位の座をかけてしのぎを削ってきた仲だ。
さらに、彼女は空手で全国トップレベルの実力を持ち合わせている。
今日もちょうど部活動が終わって帰る途中のようだ。
「もしかして皇君、今日もいじめられたの?
ほっぺた真っ白のまんまだよ」
逃げることに必死で全く気にしていなかったが
いざ指摘されると恥ずかしくなってきた。
「実は………」
彼女だけは俺に優しく接してくれて相談にも乗ってくれる。
「もー、嫌なことされてるんだったらちゃんと嫌だって言わないとダメじゃない」
「あはは……」
「もうそんな幼稚なことは辞めるように言っておくから気にしちゃダメよ」
「いつも迷惑かけてごめんな」
彼女はいじめっ子によく注意をしてくれているようでその優しさが嬉しかった。
ふと、彼女の顔が真剣な表情へと変わった。
「そういえば、皇君って遅稲田大学の指定校推薦狙ってるってほんと?」
「そうだけど、、、どうかしたの?」
彼女はじっと俺を見つめている。
急に改まってどうしたのだろうか。
「やっぱりそうだったんだ、、、」
やけにうるさい列車の走行音が聞こえて来る。
どうやら特急列車が近づいて来ているようだ。
「皇君、私の為に──────」
電車の警笛と重なりよく聞き取れなかった。
その言葉について聞き返そうとした刹那、俺の体は線路に突き飛ばされた。
その姿を見て彼女は満面の笑みを浮かべている。
「は?」
理解が追いつかない。
どうして俺は突き飛ばされているんだ。
なぜコイツはこんなに笑っているんだ。
「なん…で……?」
その問いの答えを聞く暇もなく、、、
ゴンッという鈍い音とともに俺は意識を失った。