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機械人  作者: すぷりんた
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第六話 存在意義

第五話のあらすじアオは騎士団に入団するために1ヶ月後の入団試験に向けて修行することになった。しかしその師匠の元に向かうが扉をしめられてしまい…

夜が来てしまった。辺りが暗くなり、気温も下がっている。アオは重い荷物を持ちながら考えていた。


(騎士団の存在意義だあ?んなこと知ったこっちゃないよ…団員もそれぞれの目的を持って頑張ってるんじゃないのか?)


深く考えすぎると荷物がズレ落ちてしまいそうだ。体温が下がっていくのを感じた。身体が震えてきた。


(クソォ…寒い…そうだ!)


アオは思い出したかのように重い荷物を持ちながら地面につかない程度にその場で飛び跳ね始めた。


(冬の漁で寒い時はこうやって飛んだり跳ねたりして体を温めたっけ…)


しかし飛び跳ねていくうちにだんだんキツくなっていった。汗もかき始めた。


(ヤバい…いつもより体重が重いからすぐに疲れちまう…汗も垂れてきた…これじゃあ逆に身体が冷えちまう…)


アオは一旦、飛び跳ねるのをやめてまた深く考え始めた。そしてある一つの考えが浮かんだ。


(はっ!まさか…六時間この荷物を持って夜を生き延びることが最初の修行なのか?)


しかしアオは頭を振りその考えはすぐに捨てた。


(いやいや…あの爺さんの喋り方からして騎士団の存在意義とやらを言えなきゃずっとこの地獄が続きそうだ…)


アオはそう思うと騎士団の存在意義を考えた方がいいと思った。


(うーん…存在意義って存在している意味ってことだろ…)


アオはいつどのようにしてなんのために騎士団が出来たのかなんて知る由もなかった。しかしアオは、はっとしてある一言を思い出した。


「悪い人達から私達を守ってくれる…」

(姉ちゃん…)


アオの姉、マナの言葉だった。村に来た騎士団の人を紹介するときに言っていた言葉。


(そうか…俺は大事な事を見逃していたんだな…俺ってつくづくバカだな…)


アオは騎士団に入ることが何を意味するのかようやく理解した。そして朝が来た。扉からまたカシャリという音が聞こえた。


「六時間よく耐えた。そこは褒めよう。さてお主はなぜ騎士団に入りたいのか教えてもらおう。」


あの爺さんの声だ。アオは限界だった。重い荷物を持ちながら六時間地面につけずにやり遂げたのだ。そして震える声で言った。


「は、はい…僕は…この島にいる全ての人が…はぁ…はぁ…」

「ふむふむ…それで?」


アオは声を振り絞って答えた。


「全ての人が…僕の姉のような目に遭わないよう…平和に暮らせるよう…守る事です!」


そういった瞬間、アオの意識が途切れた。気がつくと布団に寝かせられていた。アオが住んでいた村とは家の作りが全く違った。辺りを見回すと白髪の老人が出てきた。一目で元騎士だということがわかる佇まいだった。腰が丸まっておらずピンとしている。


「ホッホッホ、目が覚めたか。」


ジャールはあぐらをかいてどっかり座った。


「すまんかったのう…六時間も。じゃがいい修行になったじゃろう?儂の名はジャール・アゴーニ。よろしく。あ、お前の荷物ならお前が今日から住む部屋に置いておいた。感謝しろ!」 


と冗談交じりに言った。アオは苦笑いして言った。


「ありがとうございます。そしてよろしくお願いします。ジャールさん。僕の名はアオといいます。あの…質問よろしいでしょうか?」

「ふむ、駄目。と言ったら?」 

「質問しません。」 


はその正直さに驚いた。


「真っ直ぐじゃのう…良いぞ、聞いてみろ。あと儂の事、師匠って呼んで。」


アオは質問した。


「では師匠。なぜ僕に騎士団に入りたいのか聞いたのですか?」

ジャールは驚いた顔をしていった。


「ほう、そこを聞くか…いいじゃろう。教えてやろう。最近、械人による被害が増えているのは知っているな?」


アオも驚いた顔をした。


「そ、そうなんですね…僕は田舎の漁村出身なので知りませんでした。」


「どこまでも真っ直ぐじゃのう…では話を戻して最近械人による被害が多発している。隣の島の倭州も械人に乗っ取られてしもた。」


アオは唾を呑み込んだ。


(島一つを乗っ取るなんて…)


ジャールは続けて話した。


「そのせいでこちらにも械人が進出するようになった。そのせいで、肉親を亡くした者も多いのじゃ。アオ。お主もその一人じゃろう?」


アオは頷いて答えた。


「はい。僕も一昨日、村が襲われて…」

「それ以上は良い。副団長から聞いておる。そして

その肉親を亡くしてしまい、残された者が騎士団に入ってくるようになった。使える者ならよいのじゃが、生半可な覚悟を持ったヤツが増えてきている。肉親の為と目標があるのはいいことじゃが、目標を追いすぎて命を落とすものも多い…」


ジャールは悲しい顔になった。弟子を多く亡くしていることがひしひしとアオに伝わってくる。


「お主が言った通り、騎士団は人々を守る為の団体じゃ。それを疎かにしているヤツを騎士団に入れたくない…じゃからお主に質問させてもらった。さっきも最初と同じようなことを言っていたら蹴飛ばして帰らせるところじゃったぞ!ホッホッホ!」


またもや冗談交じりに言った。


「では…食いもん食ったら修行を始めるぞ!いつまで布団にくるまっとる!ついてこい!」


アオはすぐに布団から這い出てジャールについていった。

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