第五話 修行へ
熱が冷めやらぬうちに投稿しまくります。
第四話のあらすじ騎士団副団長のウィンに[才]という特殊能力の存在を知ったアオ。そこで才のようなものをを持っているアオにウィンが騎士団に入らないかという提案をする。アオは悩んだ末にOKすると…
ウィンは微笑むと
「君がその選択をしてくれて私は嬉しいです。歓迎します。アオ君…といいたいところですが入団するには約一ヶ月後の入団試験に向けて身体を鍛えてもらいます。また騎士団に入るには学業も身に着けなければなりません。」
ウィンはアオに必要なことを早口で言った。アオはいきなり不安になった。
「一ヶ月後ですか!?僕はそんな短期間に今言ったことを身につけるのですか?」
「安心してください。入団試験は簡単ですから。一ヶ月でも十分です。」
ウィンがそう言うとイスクラの方に向き直り
「ではアゴールさん。アオ君の指導をジャールさんに頼んでくれませんか?」
と言った。その瞬間、イスクラの顔が青ざめた。
「副団長!?なぜアオ君の指導をジャール爺さんに?年もいっているし、厳しすぎると思いますが…」
イスクラが反論してもウィンは意見を変えることはなかった。
「あの方なら短期間でも力をつけられると考えたからです。前回お会いした時はまだまだいけるとおっしゃっていましたよ。」
イスクラは暗い顔でため息を付いた。
「わかりました…じゃあアオ君。この後、ここの病院の人が来るからその人の指示に従ってね。」
アオは頷いた。
「では頑張ってください。期待していますよ。」
ウィンはそう言うとイスクラと共に部屋を出た。
アオは少し待っていると白い服を着た女性の人が部屋に入ってきた。
「貴方がアオさんですね。今から衣服の洗濯と身体を洗いますのでついてきてください。」
アオはベッドその女の人について行った。階段を下りて長い廊下を歩いた。時々老人も見かけた。そして浴場らしきところに着いた。
「この先が浴場です。衣服はこの中の茶色のかごにお願いします。」
「案内ありがとうございました。」
アオは感謝の言葉を述べ、更衣室に入っていった。服を脱ぎ言われたとおりに茶色のかごに入れた。その先の扉を開けると大きな浴場がそこにあった。人は誰一人いなかった。アオは前、村の男達と入った事をおもいだしながら体を洗った。手前に並べてある桶で湯船の水を掬い、身体にかける。なんとも言えない心地よさだった。そして身体を洗い終えると風呂に入った。温かさがアオの身体を包む。
「あぁ~」
思わず声が出てしまった。疲れた身体に染み渡る。その温かさを堪能し浴場から出た。更衣室にはタオルと茶色のかごに新しい服があった。よく見ると騎士団のマークが施されている。身体をよく拭いて新しい服を着て更衣室から出た。あたりを見回すとイスクラがいた。イスクラはこっちに気付いて駆け寄ってきた。
「やぁ、アオ君。さっぱりしたかな?」
「はい。久しぶりに湯船に浸かりました。」
イスクラは頷いて話し始めた。
「それは良かった!じゃあ今から爺さんのところに行くよ。あと前から聞きたかったのだけれど君の村に落ちていた剣って君のかい?」
アオは一瞬、何のことか分からなかったがすぐに思い出した。
「あぁ、あの剣は僕が海辺で襲われそうになった械人が背負っていたものです。」
イスクラは驚いた表情をした。
「そうだったのか…それなら回収して馬車に詰んであるよ。」
アオは馬車という言葉を久しぶりに聞いた。村では馬車での遠出など一年に一回あるかないかだったからだ。
「馬車で行くんですか!」
アオは喜んだ。イスクラは無邪気なアオを見て微笑んだ。
「そうだよ。早速出発しよう!」
病院から出るまでの道のりでイスクラは沢山の人に応援の言葉をかけられていた。
(こんな人になりたいな…)
アオは内心思っていた。そして出ようとした時、浴場に案内してくれた人と会った。目が合うとその人がは微笑んで
「頑張ってね!」
と声をかけてくれた。アオは立ち止まり
「ありがございます!」
と深々とお辞儀をした。そして病院を出ると馬車が目の前にあった。そして辺りにはレンガ造りの大きな家が沢山あった。
「これがウィンドビル…」
街並みに驚いていると
「僕が操縦するから君は荷台で座ってて。」
「わかりました!」
アオは荷台に飛び乗った。そこには着替えや食料等が積んであった。そしてあの剣も立てかけてあった。
「それじゃあ行くよ!」
と前からイスクラの声が聞こえた。
「お願いします!」
と返事をした。荷台が大きく揺れて出発した。病院と街が遠ざかっていく。周りには草原が広がっていく。舗装されてない道を進んでいる。砂利で荷台がガタガタと揺れる。
「ここから揺れるけど、我慢してね。」
アオは揺られながら答えた。
「は、はい〜…わかりましたぁ〜」
変な声で返答してしまった。そして揺られること数時間。荷台から顔を出すと遠くに大きな建物が見える。
イスクラはアオが顔を出しているのに気付いた。
「あぁ…あれは王都だよ!この島の真ん中に位置していて、一番栄えているところだよ!」
アオはあんな大きな建物を見たことなかったので目を輝かせていた。すると、一つの家の前で止まった。アオは突然止まったので驚いた。
「ど、どうしたんですか!?」
「いきなり止まってごめんね!ここが爺さんの家だよ!」
イスクラが言った言葉にアオは少し落ち込んだ。なぜなら今からあの王都に行くと思っていたからだ。
(ちぇ…行きたかったなぁ…)
「じゃあ荷物を降ろそう。」
そう言ってイスクラは馬から降りてきた。アオは荷物を降ろして全ての荷物を持った。とても重かった。
「くっ…お、重い…」
その言葉にイスクラは笑っていた。
「ハッハッハ!そんなんでへこたれていちゃだめだよ!それじゃ、僕はこれで!何かあったら王都に行くといいよ!」
そういうとイスクラは馬車に乗って颯爽と行ってしまった。アオは一人きりになってしまった。とにかく家に入れてもらおうと少しの距離だが、重い荷物を持っていたので辛かった。そして玄関前に着いた。
「す、すいませーん!僕、貴方の指導を受けに来たアオというものです。」
できるだけ声を張って言った。すると少しして声が聞こえてきた。
「ほう…お前があいつが言って騎士団志望のガキということか?」
扉の向こうから老人のような声が聞こえてきた。色々とつっこみたい事はあったがその気持ちを押し殺して答えた。
「はい!その通りです!」
もう一度声を張って答えた。
「ならお前はなぜ騎士団に入りたいのか理由を教えてもらおうか。」
老人の真剣な声が聞こえてきた。アオは思いも寄らない質問に驚いたが少し考え、答えた。
「姉を械人から助けるためです!」
少しの間沈黙が流れた。するとカシャリという音が聞こえた。すると
「そうか…頭を冷やしてもう一度考えろ!六時間後に聞く。その間、話しかけることと荷物を地面につける事は禁止!」
と怒号が飛んできた。あのカシャリという音は扉の鍵をかけた音だったのだ。そして最後に
「ヒントは騎士団の存在意義じゃ。」
と言われた。アオは途方に暮れた。