第四話 勧誘
色々あってめちゃくちゃ期間が空いてしまいました。すいません…m(_ _)m
第三話のあらすじ アオは械人に襲われそうになったところを騎士団のイスクラに助けられた。そしてイスクラに昨日起こった事実を話した。すると偉い人を連れて来ると言った。少ししてイスクラは同じ騎士団の人を呼んだ。その人は騎士団副団長のウィン・サイハルトと名乗った。
「君は『才』というものを知っていますか?」
ウィンは優しい口調で質問した。しかしアオは情報が一気に来たので混乱していた。なぜこんなところに騎士団副団長がいるのか。才という言葉など聞いたこともなかった。アオがどう言葉を返そうか悩んでいたときウィンがもう一度言った。
「おっと、驚かせてしまったのならすみません。いきなり質問するのは失礼でしたね。私も気が急いていたもので。気が落ち着いてから話して頂いて結構です。」
まるでお金持ちと話しているようだとアオは思った。これ程までに丁寧な話し方をする人は見たことなかったからだ。アオはこの人は本当に副団長であることを確信した。そして自分も丁寧に話すため、マナに以前教えてもらった目上の人との話し方を思い出した。
「あ…ありがとうございます。副団長さん。えと…僕は才という言葉は聞いたことがありません。」
アオは緊張しながらも答えた。ウィンは頷くと
「ふむ、ご回答ありがとうございます。では私が才
についてお教えしましょう。」
と答えた。すると後ろにいたイスクラが慌てた様子で
「や…やはり!副団長のお手を煩わせる訳にはなりません!私が…」
と一歩前に出て答えた。ウィンは咳払いをして
「アゴールさん。私がさっき言った事を忘れたのですか?説明は私がします。その心意気は大切にしてください。」
と言った。イスクラは険しい表情をして一歩後ろに下がった。そしてウィンが話し始めた。
「才と言うのはこの大陸に住んでいる人が稀に手にする事が出来る能力のことです。才を持つものは大抵生まれた瞬間、手から火を出したり、風を操ったりなど科学では証明出来ない事が出来るのです。」
アオは驚いた。そんな夢の様な力を持つ人が現実にいるなんて知らなかったからだ。
「信じられないと思うので、実際にやってみましょう。アゴールさん。」
呼ばれたイスクラはアオの前まで近づいてきた。そして手を出してきた。
「よく見ててね。」
そう言うとイスクラの手から真っ赤な火花が舞った。舞った火花がアオの右側にあるテーブルの上の食べていた赤い果実に当たると火花が熱いことを証明するようにジュッという音がした。
「うわぁ!」
アオは驚いてベッドから落ちそうになった。村で械人に襲われ、息を止めていたときに見た無数の小さなものはイスクラが飛ばした火花だったのだ。するとまたウィンが話し始めた。
「このようにアゴールさんの場合、火花が手のひらから発生する才を持っています。」
ウィンの話を聞いてアオは疑問に思った。
「イスクラさんは熱くないんですか?」
「ああ、全く熱く感じないよ。」
イスクラは得意げに答えた。
「アゴールさんの様に手から火を出したり、電気を出したりする才を持つ人には耐性があるんです。」
ウィンが補足の説明をしてくれた。そしてアオは一番気になっていた質問をした。
「あの…僕のこの変な力も才なのでしょうか?」
ウィンは眉を上げ、難しい顔をして言った。
「アオ君、君は械人に襲われてその能力を手にしたというのは本当ですか?」
アオは頷いて
「はい!本当の事です。生まれたときにその才とやらを持っていたとしたら、僕は漁村で漁をしようと息を止めて海に潜るときに気付いているはずです。実際僕も械人に襲われた後、海に潜ってその能力に気づいたんです。」
アオは信じてもらえるよう力説した。するとウィンは右手を顎に当て考えながら言った。
「先程言い忘れましたが才は受け継がれないのです。才を持った親から普通の子どもが生まれることはよくあります。しかし炎の一族は例外です。」
「炎の一族?」
アオは無意識に声に出していた。するとイスクラが
「炎の一族は僕の一族の事で代々、なぜか継承出来ないはずの才を受け継いだ子どもが生まれるんだ。もちろん僕も才の継承方法なんて知らないよ!」
とここぞとばかりに話した。ウィンは咳払いをしてまた話し始めた。
「とにかく才は実質的には継承不可能です。ましてや械人が知っているわけないのです。械人から才を受け継ぐなど前例のないことなのです!」
ウィンは話していくうちに興奮しているのかどんどんアオに近づいていった。アオは少し引いていた。ウィンは話し終えるとハッとした表情をして後ろに一歩下がった。
「失礼、興奮していたようです。とにかく君のその能力は才と呼べるのか分からないのです。しかし私たち以外の他の人にその能力を知られてしまった場合にはその能力を才と紹介するようにしてください。」
アオは頷いた。そしてまた質問した。
「あの…僕はこの後どうなるのでしょうか。」
アオは自分が今後どうなるのか不安に思っていた。帰るべき故郷はもうなくなってしまったのだから。
「それは私が今からする質問によって変わります。」
ウィンがそう言った途端、空気が重くなったような気がした。ウィンもイスクラも真剣な顔をしている。
「君は騎士団に入る気はありますか?」
少しの間、沈黙が流れた。アオは一瞬理解できなかった。
(き…き…騎士団に入る?お、俺が?)
アオは思いがけない質問に声が出せずにいた。驚きながらも声を出そうとした。
「な……なぜ僕なんかが?」
声は出たがさっきよりも情けない声しか出なかった。ウィンは顔色を変えず、淡々と話した。
「君は気配を一切消せるとアゴールさんから伺いました。気配を消せるという事は敵にとってとても厄介です。今、騎士団は械人から人々を守るため必死に戦っています。人手は多いほうがいいのです。力を持つものはその力を力のない人々の為に役立てるべきであると私は考えています。もちろん強制はしません。選択するのは君です。」
アオは空いた口が塞がらなかった。自分なんかが人を守れるのか。自分が臆病な事は自分が何より知っている。しかし械人から力を人の役に立てたいという気持ちもある。騎士団に入れば臆病な自分を変えられるかもしれない。悩みに悩んだ結果、アオは決断した。
「わ…わかりました。僕入ります、騎士団に入ります!」
すると重たい空気が一気に軽くなった様な気がした。