第三話 誓い
第三話です!新キャラ登場!
第二話のあらすじ 村が燃やされ、何もかも失ってしまったアオ。しかし姉のマナの遺体が見当たらない。アオは村を燃やした二人組がマナを何処かへやったのだと推理する。復讐を考えていたとき、人型の機械に襲われて絶体絶命のときある青年が助けてくれた。その青年は騎士団という団体に所属しているようだった。助けられたアオは緊張の糸が切れ、眠ってしまった。
夕方ごろアオが漁から帰って来たとき、変な格好をした見知らぬ人と長老が話していた。そこにちょうどマナが出迎えてくれた。
「おかえり!沢山捕れた?」
いつも通りの声なのに何故か懐かしさを感じる。
「うん!沢山撮れたよ!ところで…あの人は誰?」
アオは長老と話している人を指さした。マナはアオが指さした方を向いて
「あぁ~あの人はね、騎士団の人だよ。」
と答えてくれた。アオは騎士団と言う言葉を初めて聞いたので更に困惑してしまった。
「騎士団って何?あの人は何をしている人なの?」
マナは少しの間考えた後、喋りだした。
「あの人は悪い人達から私達を守ってくれている人なの。あの人がいなかったら悪い人が村をめちゃめちゃにしてたかもしれないんだよ!」
アオは想像して鳥肌がたった。寒くもないのに身体が震える。マナはそれを見てほほえみながら言った。
「あはは!そんなに怖がらなくても大丈夫だよ。騎士団の人は強いんだよ!」
そう言われてアオは安心した。そして同時にカッコいいと思った。
「じゃあ、あの人がいないときは俺が皆を守るよ!」
と胸を張って言った。マナはそれを見て笑い出した。
「あんたじゃ無理だよ〜ビビリなんだから!」
とからかった。アオは頰を膨らませ
「何だと〜!その言葉、覚えておけよ!いつか皆を守れる位強くなってやる!」
アオはもう一度、胸を張って言った。マナはその姿をみて微笑んだ。
「わかった、覚えておくわ。それじゃ家に帰りましょう。」
他愛もない会話。日常の一ページ。この生活がずっと続くといいなと思った。そしてマナが手を差し伸べてきたので手を握ろうとしたとき。景色に色がなくなりマナや村人達が足元から亀裂が入り崩れ始めた。アオは崩れた断片を握ろうとした。その時、眩しい光が辺を包みこんだ。アオはその眩しさに目をつぶった。そしてもう一度目を開けると、見知らぬ所にいた。無意識に手を天井に向けていた。自分の体を見ると夢に見たふかふかのベッドの上で寝ていた。辺りを見回すと小さい個室のようで左には小さな窓がある。朝のようだった。アオが寝たのは昼頃だったのでほぼ一日寝ていたようだ。右にテーブルがあり、飲み物と果実が置かれていた。それを見た途端に喉が渇いたのでアオは少し痛む体を起こし、飲み物を一気飲みした。幸いただの水だった。赤い果実を皮ごと食べると甘い香りが口の中に広がった。無我夢中で食べていると、テーブルの更に奥にある扉が開いた。そこにいたのは先程、助けてくれた騎士団の青年だった。槍は持っていないようだった。
「やぁ!起きたみたいだね。」
アオは口の中の果実を飲み込んで話しだした。
「あの…助けてくれてありがとうございます。」
「そうかしこまらなくて良いよ。これが仕事だからね。僕の名前はイスクラ・アゴール。君の名前を教えてくれるかい?」
アオはいきなり名前を聞かれたのでドギマギしながら答えた。
「ア…アオといいます。」
イスクラは難しい顔をして頭を掻きながら言った。
「ごめんね。僕の聞き方が悪かったみたい。名字も教えてくれないかな?」
(ミ…ミヨウジ?)
アオは一瞬混乱したが、過去にも同じようなことをマナに聞いたのを思い出した。村の皆は〜・〜みたいに名前が二つあるのに何故、自分達は二つ名前がないのかと聞いたときマナは
「二つ名前がある人は親を知っている、もしくは知っていた人達なの。けど私達みたいに親の姿とか顔を知らない人達は二つ名前を持っていないの。けど安心して!私達を産んでくれた親がわかれば二つ名前をもらえるわ!」
アオはマナが明るく話してくれた事を覚えていた。
「ぼ…僕には親がいないのでその…ミ…ミヨウジはないです!」
アオは驚いた。イスクラが自分の事かのように顔色が暗くなったからだ。
「ご…ごめんね立ち入った事を聞いてしまったね。」
アオは首を左右に振って答えた。
「いえ!そんなことは…ところでここはどこでしょうか…」
イスクラは顔を上げて言った。
「ここはウィンドビルの病院だよ。」
アオはウィンドビルという言葉を一月前に聞いていた。長老が
「今日、儂らはウィンドビルの新酒を飲みに行ってくる!」
と朝礼のときに言った。村の男達はいつもより気合が入っており漁を早く切り上げた。そしてアオ達未成年と女性達を置き去りに長老は若い男共を連れてどこかへ行ってしまった。その日の夜、我が家で寝ていたとき外がうるさいと思い窓から外を見ると長老含めて男達全員が顔を真っ赤にして酔っ払って帰ってきた。全員千鳥足でアオ達と村の女性達で介護したこともいい思い出だ。そんなことを思い出していたときイスクラが言った。
「もしもでいいんだけど…君がいたところで何が起こったのか教えてくれないかな。」
アオはそれを聞いた瞬間、頭の中に映像となってあの出来事が思い出された。息が荒くなる。それを察してイスクラはアオの背中をさすってくれた。
「本当に怖いことがあったね…僕が偶然、械人を追いかけていなかったらどうなってたか…君はあの中よく生き残ってくれたよ…」
ごつごつした手だった。しかし温かみがあり気が安らいだ。そして気になった事を聞いてみた。
「あの…その械人ってなんですか?」
イスクラは驚嘆の表情を浮かべていた。
「一番知っていて欲しい地域に械人の名が知れ渡っていないとは…これは報告だな。」
とうつむいてぶつぶつ言っていた。
「ああ、ごめんごめん。械人って言うのは君が会ったあの人型の機械のことを言うんだ。械人は君の住んでいた漁村の海の向こう側にいる人達が僕達の住んでいる地域を占領するために送り込んでいるんだ。」
アオは軽い気持ちで尋ねたが、思ったより難しい事を言われて混乱した。アオは頭を整理するため黙り込んてしまった。アオは初めて海の向こうにも自分達と同じ人がいることを知った。
「少し難しかったかな?」
イスクラは頭を掻きながら答えた。アオは
「いえ、大丈夫です…あのなぜ海の向こうの人達はその械人を送ってくるのでしょうか?」
イスクラは腕を組んで難しい顔をして言った。
「う〜ん…それを話すと話が長くなりそうなんだ…僕じゃ分かりやすく伝えられないかもしれない。ごめんね。」
アオは申し訳なくなり
「ご…ごめんなさい。僕、頭悪くて…」
と答えた。少しの間、沈黙が続いた。そしてアオは思い出した。あの村で起こった事を話さなければならない事を忘れていた。
「で…では僕が住んでいた村で何が起こったのか話しますね。」
アオは一息ついて村で起こった地獄を事細かに話した。イスクラは真剣に聞いてくれた。話していくうちにアオは自分の奇妙な能力についても話した。
「…あとその男達から逃げるとき変な力を使ったんです。」
イスクラは首をかしげた。
「変な力ってどんなの?」
アオは砂浜で械人に襲われたこと等も話した。話していくうちにイスクラの顔が青ざめていく。そして話し終えたときイスクラが口を開いた。
「え…えとじゃあ息を止めてみてくれる?君の言っていることを信じられないわけじゃないけど、確認したくて…いいかい?」
アオは頷いて息を止めた。景色の色がなくなっていく。イスクラは辺りを見回している。やはり見えていないようだ。息を吸うと景色に色が戻った。突然出てきたのでイスクラは一歩バックした。少しの沈黙の後イスクラは
「僕だけでは対処できなさそうだから少し待ってて、もっと偉い人に相談してくるから。」
そう言うとそそくさと部屋を出ていってしまった。
一人になってしまった。アオは自分が何か言ってはいけない何かを言ってしまったのではないかと不安になった。少しの間ベッドで寝転がっているとまた扉が開いた。
そこにはイスクラともう一人メガネを掛けていて緑色の髪と瞳をしていてる騎士団らしき人が入ってきた。しかしその人はイスクラと違い、地面に付きそうなくらい大きな緑色のマントを羽織っている。
「待たせてごめんね。この人は騎士団副団長ウィンさんだ!」
イスクラに紹介されたウィンはお辞儀をして答えた。
「こんにちはアオ君。僕は騎士団副団長ウィン・サイハルトです。」