第二話 救助
第二話です!今回からあらすじを入れておきます!
第一話のあらすじ 漁村に住んでいた主人公のアオとその姉のマナ。いつものように漁をしていると人型の機械に襲われて妙な力を手に入れた。夜、村に戻ると村全体が炎に包まれており、村人達が焼け死んでいた。その犯人である二人の男達に殺されそうになるが力を駆使して逃げ延びた。朝になって村に戻ると悲惨な現実が待っていた…
アオは何も考える事が出来なかった。昨晩起こった出来事が嫌でも時折フラッシュバックする。そのたびに地面にうずくまり、声にならない悲鳴が嗚咽となって響いた。そして涙が枯れるほど泣いた。一夜にして自分の故郷に知り合いがいなくなってしまった。そして自分自身の居場所も同時に失った。冷静になろうとしても、自分の今後を考えると悪寒がして冷や汗が出て鳥肌が立つ。木偶の坊になろうとしていたとき、ふと頭に光が灯ったような気がした。
「マナは…姉ちゃんは…」
いきなり頭にマナの姿が浮かんだ。マナを最後に見たのは燃え盛る我が家の下敷きになっていた所だった。しかし、アオはそれを認めたくなかった。気付いたらアオは走り出していた。ただがむしゃらに。瓦礫を飛び越え、マナが生きていることを願って。だがその願いは届かずそこには焼け焦げた我が家しかなかった。アオの心の何かが折れた様な音がした。最後の希望の火が消えてしまった気がした。しかし人は藻掻こうとするもの。アオは全力を振り絞り、体中から汗が出ながら、手が切れてもお構いなしに焦げた木屑をどかし始めた。死体でも良い。とにかく見つけたい。そんな思いがアオを動かしていた。でもやはり、マナは出てこなかった。アオは疲れてその場にへたり込んだ。肩で息をしている。体を動かしたからか、頭にあった靄が晴れたようだった。するとある違和感に気づいた。
(なんで死体がどこにもないんだ?)
村人の焼死体はあらかた見たが、マナだけみていない。皮膚が全て焼けて骨になっているとしても、これだけ探してないはずがない。骨が風に吹かれたとしても道中で見かけたはずだ。アオはこう思わずにはいられなかった。
「あいつらが……あの二人がやったのか!」
死体がその場から跡形もなく無くなるなんて人為的でないと起こり得ないことだ。さっきまで悲しみに暮れていたのに腸が煮えくり返るような怒りがこみ上げてきた。
「復讐してやりたい……けど…」
自分が弱虫なことは自分が何よりも知っている。あの場面を想像するだけで身体中が震える感じがする。しかし姉であるマナを何処かにやったのは許しがたいことだ。気づけばもう昼頃になっていた。これからどうするのか考えたとき、アオが昨日隠れていた森の方から何かが飛び出してきた気がした。
(助けが来たのかもしれない!)
そう思い、森の方へ向かった。
(ここで起こった事を話して助けてもらおう。)
そんな前向きなことを思ったが、現実は更に試練を突きつけてきた。森の近くまで来たとき、アオが目にしたのは昨日出会った人型をした機械が倒れていた。誰かにやられたのか傷がついている。そしてこちらを見ると
「グルァァル!」
獣の様な咆哮をして、アオに飛びかかってきた。
「うわぁぁ!」
驚きで尻餅をついてしまった。アオは無意識に目を瞑り、息を止めた。痛みが来ないことがわかると目を開けた。あの白い世界にまた一人だった。人型の機械はアオを見失っているようだ。しかしアオは先程、マナを探すため身体を酷使していた。
(いつもより息を止めていられない!)
息を吸った瞬間に殺されるのは目に見えて想像できた。その時、昨日の事を思い出した。
(そうだ……)
アオは走り出していた。命の危険が迫っているので、白い景色がいつもより早く過ぎていくように感じる。
(あった!)
そう安堵した瞬間、誤って息を吸ってしまった。風景に色が戻ると同時にあいつの咆哮がまた聞こえた。後ろに奴が来るのを感じる。自分の首を掻っ切られる前に「それ」を手に取り、奴が右腕を振り下ろした瞬間に受け止めた。
「グルゥゥゥ!」
「くっ…重い!」
アオが手に取ったのは昨日会った人型の機械が背負っていた剣だった。鞘は未だに抜けないが、攻撃を防ぐ事が出来るとアオは考えていた。さっきできた切り傷から血が垂れる。しかし一つだけ誤算があった。それは機械の力の方が強いことだった。機械は傷を負っているので弱いだろうと見た目で判断してしまった。
「グルゥ!グルァァア!」
機械の力が増して、どんどん押される。
(やばい!)
そう思ったとき
「避けて!」
どこからか声が聞こえた。青年の声だった。アオは気合を入れて息を止めた。景色に色がなくなっていく。いきなり機械の重みがなくなった衝撃で手から剣がこぼれてしまったしまった。アオは安全のため身を一歩引いた。支えがなくなった機械の右腕が地面に叩きつけられた。アオは疲弊していたので息を止められている時間はかなり短い。
(早く誰か……)
次の瞬間、何か小さなものが無数に飛んできた。色がわからないので何が飛んできているのかが判別できない。その小さな物に当たった機械は身を悶えさせた。そして奥から槍を持った青年が走ってきた。青年は眉一つ動かさず、悶えている機械の胸を貫いた。機械が動かなくなってるのを確認したあと息を吸った。景色に色が戻る。青年の姿にも色が戻る。青年の身長は高く、それよりも長い槍を背負っている。薄い赤髪で背中に銃と剣が斜めに重なっている真ん中に盾がある独特な服を着ていた。
「うわぁ!どこに隠れてたの!?」
青年もアオの事を見失っていたようだ。アオはその独特な服に見覚えがあった。
「あなたは…騎士団の方ですか?」
アオは恐る恐る聞いた。青年は少し笑って言った。
「そうだよ、僕は騎士団の団員だ。もう大丈夫だよ。ここで何があったのか教えて…」
優しい声だった。安心しては緊張の糸が吹っ切れて、最後まで言葉を聞く前に、アオは倒れるように眠ってしまった。