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6.ティアの信頼


 冒険者ギルドはいつも以上に混んでおり、まるでお祭りのように騒がしい。それには一つに理由があった。


「ティアには魅力は人間以外にも通じるってことが分かってもらえたと思う。次はこれに着替えて接客をしてもらい魅了の力自体を高めてもらおうと思う」

「これは……メイド服ですか? なぜ……」



 私は師匠であるグスタフさんが掲げるレースのあしらわれたメイド服を見て思わず間の抜けた声をあげてしまう。

 しかも、ただのメイド服ではない。上半身の胸元の部分にはハート形の穴が開いており谷間が強調されるようになっており、下半身はなぜかミニスカートである。 


 確かに可愛い私が可愛い服を着ればより可愛くはなると思いますけど、これで家事はおかしいでしょ。メイドというよりもそういうお店のエッチな衣装じゃないですか!

 思わず脳内でツッコミを入れてしまった。



「よく聞いてくれた。メイド服は、本来は貴族の屋敷というシチュエーションでしか見れないので一般の人々に非日常感をあたえるんだ。特に冒険者たちは憧れこそあれメイドとは縁遠いからテンションも上がると思う。その上、メイド服を着たスタッフに、丁寧で細やかなサービスをしてもらうことによって、自分がえらくなったような満足感を味あわせることができる。その結果魅了の効果が倍増するんだよ」

「「……」



 むっちゃ早口な師匠にカウンターのアイシャさんと私は固まってしまった。



「うわぁ。きっしょ……きもさもAランク冒険者級だね!! ティアちゃん、紹介してなんだけどいやだったら断っていいんだよ」



 アイシャさんが苦笑しながら気遣ってくれるが私の答えはとっくにきまっていた。



「やります……やらせてください!!」



 その言葉にアイシャさんがおどろきを……師匠はよかったと安堵の表情を浮かべてくれてうれしくなる。

 だって、やっとあこがれの人に再会できたのだ。仮に師匠の性癖でもこれを着た私を可愛いと思ってくれたらうれしい。

 私が可愛いの砂糖が甘いことと同じくらい当たり前のことだけど、あこがれの人に可愛いと思ってもらえるのはやはりうれしいのだ。



「ティアちゃん、こっちのテーブルに麦酒をおねがい」

「はい、わかりました。こちらでよろしいでしょうか、ご主人様♡」

「「うおおおおお!!」」



 飲み物を置いただけだというのに、男たちが興奮した声をあげる。格好のおかげか、セリフのおかげか……それとも、可愛すぎる私のスキルのおかげなのだろうか? 正直わからない。

 胸や尻をさりげなく触ってこようとする手をかわしながら私は接客を続ける。可愛いと思われたり魅了するのは好きだが、好きな相手意外とスキンシップをするつもりはない。



「うふふ、ティアちゃんのおかげで今日はとっても繁盛しているわ。お給料は弾むから楽しみにしててね」

「はい、ありがとうございます。そういえば師匠は……」



 先ほどまでカウンターいたグスタフの姿を探すと喧嘩を仲裁しているようだ。本当に世話焼きであり、その姿に本当にこの人は変わらないなと自分まで誇らしい気持ちになる。



「グスタフのやつはさ、半年前に傷だらけでここにやってきたのよ。どこで何をしていたのもわからないし、仮面も胡散臭いし。おまけにこっちが踏み込もうと距離を取ろうとするの……だけど、私は彼をずっと見てきてね。信頼できると思ったの。ティアちゃんは彼と過ごしてどうかな?」



 優しく微笑みながら師匠を見つめていたアイシャさんは、こちらを振り向くと少し緊張した様子で尋ねる。

 その答えはすでに彼が私を守るために魔眼を使ってくれたのを見たときにきまっていた。


「私はあの人は信用できると思います。それにもう完全に信頼していますから」

「へぇ、即答だね。何か理由はあるの?」

「はい……実は昔、師匠に助けられたことがあるんです。あの人は覚えていないだろうけど、私と友達を人さらいから救ってくれて、『大丈夫?』と優しく微笑んでくれたんです……私はそんな彼にあこがれて冒険者になったんです。だから、私は師匠を信じます。私はあの人の優しさを知ってますから」

「そうなんだ……あいつは本当にいいやつなんだね」

「はい、師匠は……私のあこがれの人ですから」



 魅了というスキルのせいでさらわれそうになった私を救ってくれたあこがれの人。そして、『こんなスキルなんて』……といった私に、『その力があれば君はなんにでもなれるぞ』と励ましてくれたあこがれの人。

 あの時は仮面こそつけていなかったし、名前も教えてくれなかったけど魔眼を使うの見てあの人だとわかった。あの人の言葉があったから、魅了というスキルをもちながらも道を踏み外さずに生きてこれたのだろうと思う。だから、私は今の彼の言葉も信じられるし、ついて行くことに抵抗はないのだ。



「ティア……なにをやっているんだ?」

「なんでこんなところにいるのよ?」

「二人とも久しぶり……」



 お客さんに呼ばれて注文を取ると、そこにいたのは元いたパーティーメンバーのリーダーであるアベルとその幼馴染のフラウだった。



「その……ちょっと刺激が強い格好だね……」

「また、男に媚びるような恰好をして……」



 アベルが私を見て顔を赤らめるとフラウが不快そうに眉を顰める。もしかしたら、私に嫉妬して追放したんじゃ……と頭をよぎったがもうどうでもよかった。

 だって、私が可愛すぎるのは真実で、追放されたおかげであこがれの人と再会できたのだから。



「いらっしゃいませー、 今日は麦酒がおすすめですよ。フラウは甘いお酒が好きだったよね。こっちのカクテルはどうかな?」

「あ、ああ……じゃあ、麦酒をもらおうかな」

「……私はじゃあ、カクテルをもらうわ」



 気にせずに満面の笑みを浮かべるとアベルだけでなく、フラウも顔を赤くする。これは二人を魅了できたっていうことだろうか?


 さすがは師匠です。あなたのおかげで私は自分を追放した相手だって魅了できるようになりましたよ。



 私は満足してうなづくのだった。


実はティアちゃんみたいなキャラをかくのははじめてなんですが、魅力的にかけてますかね……


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