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51.VSカイン

「ファントム……お前はいったん休んどけよぉ。相性が悪いんだろ?」

「そうですよ、師匠……そんなにつらそうな顔をしているというのに戦わせられないです」



 目の痛みに耐えながらもカインと対峙している俺をかばうようにして二人が割り込んでくる。

  


「でも……あいつは俺の仲間なんだ……今は様子がおかしいけど何とかしなきゃ」

「仕方ねえなぁ。手加減は得意じゃねえけど、お前の頼みだ。特別だぜぇ」

「だったら任せてください。相手を無効化するのは私の得意分野ですよ。それてもあなたの弟子はそんなに頼りないですか?」


 

 アモンがカインに襲いかかり、ティアが俺に優しく微笑んでくれるものだから何も言えなくなってしまう。まったく気が利きすぎる弟子である。




「はっは、なんだぁ? 魔族と冒険者ごときがこの魔王殺しの英雄である僕に勝てるとおもっているのか?」

「はっ!! なめるんじゃねえぞ。俺とティアの相性は最高なんだよ!!」

「え、私アモンと一緒に戦った時ありましたっけ……? あと言い方がきもいです……」



 そういやないなと思い一気に不安になってきた。カインは主人公らしく剣技を得意とし、回復も魔法も使える万能キャラだ。

 一緒に冒険していたときもいろいろとサポートしつつ決めるときは決める優秀な戦士だった。この転生者がその力を完全につかいこなしていたら苦戦は免れないだろう。



「大丈夫ですよ……師匠。こういう相手は村にもいましたから」

「は、僕のような選ばれた人間がそうそういるはずがないだろ? なんて破廉恥な!!」

「どうしたんですぁ? あなたって王子様なんですよね? それなのに私のような平民の谷間に反応しちゃうんですかぁ♡」



 アモンとカインの距離ができると、ティアがあえて谷間を強調するように短剣をかまえると、その豊かな谷間が強調されカインの動きが鈍る。



「はっ!! 何を言っている!! 僕はアンリエッタたん以外の女に興味なんてないんだよ!!」

「あはは、じゃあ、なんでさっきから顔じゃなくて胸を見て私と話しているんですか? わかります。私が可愛すぎるから顔を直視できないんですよね」

「な……それは……」



 すげぇぇぇぇぇ!! カインがたじたじになってる!! 魅了が成功したのか戦う感じに一切ならない。転生したあいつの正体がなんだか、わからないがあまり異性への耐性はないようだ。

 なんでわかるかって? 俺も童貞だからだよぉぉぉぉ!!



「食らいやがれ、ざこが!!」

「ぶべら!?」



 ティアの谷間に気を取られているカインの胸にアモンの拳が突き刺さるとそのまま壁まで吹き飛ばされていく。

 受け流すことも反応することすらもできなかったのか? あれ……予想以上に弱くない?


「なんというか……本当に魔王殺しの英雄なのでしょうか? そのあまりに弱すぎるような……」

「はっ、期待外れもいいところだぜぇ。魔眼を使わないファントム以下じゃねえか。もしかしてカインとやらはお前らにおんぶにだっこっだのかぁ!?」

「いや、そんなはずはないんだけど……」



 ティアとアモンも困惑しているが誰よりも俺が驚いていた。カインの強さは本物なのだ。なのになんだろうこれは……

 ゲームで例えるならば最強キャラをつかっているはずなのに操作方法をしらないような……



「僕を傷つけたな。魔族ごときがぁぁぁ!!」

「ぬお!?」



 壁から起き上がったカインが剣を振ると真っ赤な斬撃が一直線に飛んでくきて、柱を一刀両断する。

 


「なんて威力だ。あの剣か!! 当たったらやばいね……」

「だったら、私がまた魅了を……」

「二度もお前なんかに魅了されるか!! 僕はアンリエッタたん一筋何だよぉぉぉぉ!!」



 ティアが再度谷間をみせようとするもカインは激昂と己の顔を殴ると、血走った目で俺をにらみつける。

 痛みで魅了を解いたのか。でも、ティアの顔は直視できないようだ。



「その剣はすげえかもしれねえけどよぉ。当たらなければこんなのこわくねえだろ!! ファントム、ティアをつれて、先を急げ!! こいつなら俺一人で十分だぜぇ!! お前の魔眼でも魔族はわかるんだろ? だったら俺はいらねえはずだ!!」



 確かにカインになった転生者はともかくあの魔剣は強力だ。うかつに近づけなくなったぶん倒すのには時間がかかってしまいそうだ。



「だが……」

「いいからいけよ!! こいつがここにいるってことはオセのやつは俺らの作戦に気づいているかもしれねえ。心配すんな、こいつはダチなんだろ? 生け捕りにしておいてやるよ」



 声を荒げるアモンの声に従って俺は先に進む。あいつだってソロモンの借りをかえしたいはずなのに俺にオセをまかせてくれたのだ。

 だったら迷っている時間はない。



「わかった。いくぞ、ティア」

「はい!!」



 そうして、アモンの勝利を信じて俺たちは先に進む。

 



 戦いの音が響く中、隠し通路を抜けるとそこは城の書庫の奥底へとつながっていた。本棚がずれていきあたりには大量の本棚が大量に視界にはいる。



「ここは……?」

「城の書庫だよ。普段はあまり人がこないからどこかで着替えを探してヨーゼフを探そう」



 彼に魔眼は使ったことはないけれど、近距離で見つめれば魔族かどうかはわかる。そして、捕らえたら、ソロモンの元へと突き出せばいい。

 


「ティア……わかっているかもしれないけど、オセは国の要人に変装している可能性が高い。失敗したら国を敵に回すかもしれない。だから……」

「その時は色々な国に行きましょ。旅行好きなんですよね。それに師匠と一緒ならばどんなどころでもどんな状況でも楽しいですから」

「……ありがとう。じゃあ、いくよ!!」



 俺とティアはお互い笑いあって書庫の扉を開くのだった。


 ★★★



「はっはっは、お前ごときが僕を倒すだって……? この魔剣を手にした僕にお前ごときが勝てるとでもおもってんのか?」

「うるせえよ……その魔剣はなぁ……魔王スルト様の剣なんだよ。俺たちの魔族の力の象徴の一つなんだ。強者が持つのは別に構わねぇ。だけどなぁ、てめえのような雑魚が使っていいものじゃねえんだよ!!」



 にやにやと笑うカインの前でアモンが激昂する。力を重視するアモンのような魔族にとって最強格の魔族であるスルトは尊敬の象徴だった。

 だからこそ目の前のザコがわがもの顔で使っているのは許せなかったのだ。



「だいたいてめえごときに使いこなせんのかよ。その剣は己の魂を消費して力を解放するんだぜぇ。てめえのようなヘタレに使えるはずが……」

「誰がヘタレだって? はは、この剣はすごいよ。手に持つだけで魔力がたぎってくる!!」



 楽しそうに笑うカインが先ほどまでとは比べ物にならない速さで剣をふるうとアモンの右腕が斬られて血しぶきをまき散らしながら地面に落ちた。



「ちっ……雑魚だが元のステータスが高えからすげえバフがかかってんのな」

「ザコザコうるさいなぁ!! 君は僕に一方的にやられているだけじゃないか!! ファントムたちに助けを呼んだらどうだぁ?」

「何か勘違いしているんじゃねえか? 俺があいつらを先にいかせたのは時間をかせぐためじゃねえ。魔族の誇りを好き勝手にいじったてめえを好きにボコすのを止めさせないためなんだよぉぉぉ!!」



 激高すると同時にアモンの斬られた腕が瞬時に再生して、カインになぐりかかるのだった。




童貞にティアの相手はきつすぎる…


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