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50.いざ王城へ

 目を覚ますとアモンに背負われているのがわかる。再生しかけている翼がぶつかってちょっと痛いのは愛嬌か。



「うう……俺は生きているんだね」

「おー、目が覚めたか。お前が死んだらティアが悲しむからな、よかったぜ」

「グラシャラボラスはどうなったんだ?」

「あー、あいつはお前の一撃で倒れたぜぇ。ただ、油断するんじゃねえ。あいつは今は回復に全魔力を注いでやがる。一日たったら復活するぜぇ」

「え、心臓を貫いたと思うんだけど……」



 剣の感触からして仕留めたと思ったのだが……アモンは肩をすくめる。その表情にはあきれと少しうらやましさすらもあるようだ。



「それがあいつのすげえとこなんだよ。しかも、とどめを刺そうにも、無意識で反撃してくるぜぇ。とりあえずオセを殺せば魔力の供給もなくなるからな。そうすりゃ魔界に帰るだろうよ」

「さすがにインチキすぎるだろ……」



 そういえば裏ボスって何回も倒しても復活するけどそういうことだったんだろうか?

 


「でも……何とか勝ったんだね」

「ああ、ファントムはすげーよ。魔界でもやっていけるぜぇ」



 体全体がまだ痛むが、何とか生きている。セリスがくれたロザリオだけのおかげではないだろう。すでにその力は失われかけており、ひびが入っているのがわかる。

 だれかがあのあとに治癒してくれたのだ。



「なあ、最後に誰かいなかったか? その……白銀の騎士とかさ」

「ああん? 知らねえなぁ。エレナとその仲間が助けに来てくれたくらいだぜぇ、ファントムの傷はそいつが癒してくれたんだ」

「そうか……」



 明らかに動揺したように声を震わせるアモンにくすりと笑う。最後のあの結界はアンリエッタだったのだろう。

 なぜエレナと行動しているのか……? もやもやは残るが今は彼女と話している場合ではない。アンリエッタ一人ではソロモンと会わせるのは心配だがエレナがそばにいれば大丈夫だろう。

 俺は俺のやることをやらねば……今こそ奇襲をかけて、王城にいる魔族を倒すのだ。



「ああ、そういえばお前をいやした奴から伝言があるぜ。カインの剣とヨーゼフに気をつけろってよ」

「ああ……ありがとう。あの二人か……」

「もしかしてオセが化けている奴がわかったのか?」

「ああ、おそらくだけどね……」



 冷静に考えれば俺の追放を言い出したのはヨーゼフとカインだ。アンリエッタは……今ではよくわからないがエレナと一緒にいるということは敵ではないのだろう。色々聞きたいことがないわけではないが、それは全てが終わってからである。


 そして、カインはいきなり性格が変わったと思う。となるとどこかでオセに成り代わった可能性もあるのだろうか?



「お、待ち合わせ場所についたぜ」

「ありがとう。ここからはもう大丈夫だ」



 アモンの背中から降りた俺たちがいるのは城壁のはずれの川だ。ここは実は王城のへの秘密の通路につながっているのである。

 なぜ知っているかというとゲームでは魔王軍が空から奇襲してきたときに逃亡するイベントがあったのだ。

 まあ、この世界では先に俺が先導してそのイベント自体をつぶさせてもらったから誰も知らないはずである。俺と同じような転生者でもいない限りは……



「師匠……?」

「ああ、ティア。随分と待たせたね……ってうおおおお!?」

「よかった……とっても心配したんですよ」



  いきなり抱き着いてくるものだから少しふらつきながらも受け止める。



「ちょっと大げさじゃないか?」

「何を言っているんですか、そんなにボロボロになって……どうせ絶対私たちを守る……とかいって無茶をしたんでしょう? わかってるんですからね」

「あはははは」



 一歩間違ったら死んでいたなどとはとてもではないが言えない雰囲気である。疑わしそうにじとーっとみつめられているので頭を撫でてごまかす。


 あまり心配はかけたくないからね。


 そんな俺をぎゅーっと抱きしめ返してきてティアが正面から見つめてくる。どれだけ心配してくれたのかがわかり胸が熱くなる。

 だが、もう一人がこちらをじっと見ているのに気づいた。



「お? キスはしねえのか。俺に遠慮しなくていいんだぜぇ」 

「……あなたは私を好きなんじゃないですか?」

「不思議だよなぁ……ティアとファントムがイチャイチャしているとなんというか……つらさの後にすげーーー快楽が来るんだわ」



 ティアと離れるとにやにやとしているアモンの言葉に彼女がごみを見るような目でみつめている。

 そして、気を取り直して俺たちは下水道へと足を踏み入れる。中はまっくらだが、ダンジョンに比べればまだましである。

 緊張しながらも十分ほどあるくと、ようやく明かりが見えてきた。



 確かにここには宝箱があったはず……



 そんなことを思っていると宝箱に座ってにやにやと笑っている男がいるのに気づく。



「やたらとアンリエッタがへこんでいるからお前が関係しているかと思ったけど、予想通りだったようだね。ファントム」

「お前は……カイン……? なんでここが?」



 俺の言葉にカインは見下すような目で嗤う。そんな彼を見つめるがその魔力は人間のものだ。こいつは魔族ではない。

 ならばなぜいきなり性格が変わった? まさか……



「まだわかっていないのか? 僕も転生者なんだよ!! そして、本来ならばお前が横取りした名誉も!! ハーレムも!! 手に入れるはずだったんだ!!」

「な? 転生者だって? だいたい俺は何も奪ってなんかいないだろ!?」

「何を言っているんだよ。アンリエッタたんの気持ちも!! セリスの尊敬も!! エレナの信頼も全部お前が奪ったんだろ!! だから、ここですべてを正常にもどしてやるよ!! 真の主人公であるこの僕が!!」



 激高したカインが剣をぬくとその刀身を見つめるだけで目に激痛が走る。すさまじい魔力に先ほど酷使した魔眼が耐えきれないのだ。



「師匠、このきもい笑みを浮かべているのは何者なんですか?」

「こいつの持っている剣は魔王の魂喰らいの魔剣だぁ。人間がつかえるもんじゃねーぞ」

「こいつはカイン……魔王殺しの英雄だよ……気をつけろ。ティア、アモン!! 強敵だ!!」



 殺意をあらわにするカイン……いや、転生者に対して俺が二人に注意をすると、なぜか転生者はさらにいかりを見せる。

 なんとか説得はできないものだろうか


「ティア? アモン? はは、おまえはぁぁ!! アンリエッタたちだけじゃなくて、こいつらも奪おうとしていたのかよ!!」

「なんのことだよ!?」



 もう話すことはないとばかりにカインはさらに怒り狂うのだった。いや、まじでなんでこんなに怒ってるの?



ついにカイン君(偽)との戦いです


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