48.追手
冒険者ギルドで落ち合った俺たちはオセの追手から逃れるべく、即座に馬車にのり走り始める。
本当だったらエレナのことやアンリエッタのことを聞きたいがそんな余裕はない。
「申し訳ありません……本来だったら私たちがオセの目を逸らすはずだというのにお手をわずらわせてしまうことになるとは……」
悔しそうにしているのはステラだ。いつも気丈な彼女がこんな顔をしているのは胸が痛む。
ちなみにソロモンは馬車の中でセリスに治療を受けておりティアもサポートをしている。本来囮のはずの彼女たちと合流することになったのはエレナが行方不明になったことともう一つある。
「それでよぉ。お嬢やあんたを傷つけた魔族っていうのは何者なんだ?」
ぞくりと……自分に向けられたわけではないのに殺気を放つアモンに、歴戦を繰り広げているはずだというのに、思わず冷や汗が流れる。
そう、彼女たちと合流したのはエレナが行方不明になったとに二人では対応できない強敵に追われてしまっているからなのだ。
「やつはオセ四天王を名乗っていました。ですが、私たちがすでに倒したエリオスとは別格の強さを持っています。おそらくエレナさんがいても結果はわからなかったでしょう。しかも、あの魔族は……」
「うおおおおおおお!!」
ステラの言葉の途中で強力な魔力の反応を感じた俺は、馬車から乗り出して不安定な体勢のまま黒い光線を受け流す。
おそらく、ずっと追いかけているという魔族の仕業だろう。 さっそく襲ってきたらしい。
「セリスはソロモンとステラの治療を頼む!! ティアはサポートが終わったら当初の目的地に集合しよう」
「わかりました。ファントム様、これをお持ちください」
「師匠……私、ずっと待ってますからね!!」
セリスがロザリオを投げるとなにか魔法でもかかっているかのように、空中で動いて俺の首にかかる。
なにこれこわい。聖女の加護というよりも呪いのアイテムに近いんだけど……
「それで、アモンは……」
「俺も行くに決まってんだろうが!!」
怒りに満ちたアモンと俺が馬車に飛び降りてそのまま剣を構えて着地をねらった黒い光線を受け流す。
剣が震える感覚からその魔力はアモンのそれを上回っているのが分かる。
こいつ……バラスよりもはるかに強い。
やはりバラスは四天王最弱とやらだったのかもしれない。遠くにいるフードを被った魔族が再び死線を放つタイミングで魔眼の力を開放する。
「魔力を喰らいて……わが糧とする!!」
キャパを超えそうな魔力に驚きながらも喰らうと、全身に力がみなぎり、その力を利用してそのまま斬りかかる。
「魔力を喰らっただと……その力は……」
「はっはー、さすがだなぁ。ファントム!! このままぶっ殺すぞぉ!!」
サポートとばかりにアモンによって背後から撃たれた死線を魔眼で感知し、回避して相手が体制を崩したところを狙うはずだった。
「ふはははは、面白い。やはりオセの誘いになった甲斐があるというものだ。まさかこんなところで俺と同じ力を持つものと会うとはなぁ!!」
だが、目の前の魔族は狂ったように笑うとそのまま死線がフードの奥に秘められた瞳に吸収されていく。
「相変わらず脆弱な魔力だな、アモンよ」
「魔力を吸収しただと……こいつはまさか……うおおお!?」
俺と同じように魔力を喰らい身体能力があがった魔族が爪をふるうとすさまじい衝撃と共にふき飛ばされる。
「大丈夫かよ、ファントム!! こんなところであいつと会うとはなぁ!!」
「……この魔族のことを知っているか?」
嫌な予感がしつつもアモンに訊ねると、珍しく冷や汗を流しながら答える。
「ああ、そうだな。いまので確信したぜぇ。あいつはグラシャラボラス……魔王軍最強の一人だわ」
「だよねーー」
最悪の予想が当たってしまったことに俺は思わず頭を抱えたくなる。目の前のそれはゲームの裏ボスに当たる魔族だ。
『虐殺王グラシャラボラス』。かつて世界を滅ぼしかけて、人間の魔族や魔眼の敵対心を煽った存在。
そして、魔王を倒した後の隠しダンジョンの魔界であえる魔族である。追放さえなければ本来だったらパレードがおわったみんなと倒す予定だったんだけどな……こんなところであうとは……
ついにまともな敵との戦いに……
裏ボスってやっぱりやばいですよね。ドラクエとかむっちゃ苦戦した記憶がある……
お楽しみに
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