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47.VSドットーレ

 魔王という単語にアンリエッタの表情に警戒心が走る。確かに魔族がいることは知っていた。だが、魔王クラスの大物がいるとは思っていなかったのである。

 


「そんなに警戒をしないでください。私は魔王ですが、あなたがた人間と争うつもりはありません。ただ、共存したいのです」

「共存ね……あなたがた魔族にメリットはあるのかしら?」

「ええ、ありますとも。私はあなた方人間のつくり出す音楽や彫刻、そして、物語などに興味を持っているです。残念ながら、それらは魔族たちでは作り出せないものなので……」



 にこりとミステリアスに笑うその姿はアンリエッタが旅で出会ったどの魔族とも違った。

 殺気がない。敵意がない。もしかしたら、隠そうとしているのかもしれないがそれならばファントムやエレナが気づくだろう。



「その証拠にわしらはお前さんの仲間を傷つけはせんかったじゃろ。わかっているはずじゃ。交渉する気がないならばもっといい方法があったということくらいな」



 確かにファントムと戦った時も彼らは人を傷つけないようにしていた。そして、今回だって捕らわれる可能性があったにもかかわらず彼らはこちらを殺したりすることはなく足止めにとどめていたのだ。



「ならば正面から王城にくればよかったでしょう。魔族だけでは無理でも『大賢者エレナ』が声をかければカインやヨーゼフ様だって無下にはしないはずよ」

「それがな……王城に魔族がまぎれているみたいなんじゃよ……しかも、かなりの権力者にな」

「はい。その魔族の名前はオセといい姿を変える魔法を使う魔族なのです」

「……そうなのね」



 うすうす感じ取っていた予想が当たりアンリエッタが息を飲む。いや、だって、信じたくはなかったのだ。自分たちが守ったはずの王都に魔族が潜んでいたなんて……



「アンリエッタよ、何か違和感を覚えんかったかの。王城の連中と交流のあったお前さんならばわかるかもしれん」

「そんなの……」



 わからないと言いかけて、王城があまりにも魔族に対して警戒していたことに気づく。

 まるで次の襲撃があることをみこしたような……そして、それを先導したのは……



「一人心当たりがあるわ……」

「おお、本当かの!! さすがはアンリエッタじゃな」



 歓喜の表情で喜ぶエレナにかつての皆で旅をしたことが思い出さすこし胸が暖かくなる。

 だが……それと同時に迷いが生じる。


 もしも、彼女たちの言葉が嘘だったらどうするの? 私の領地やアンジェの領地まで取りつぶしになるのよ。



「いい加減にしなさい、私!!」

「うわ、なんじゃ!!」

「これは……書物にあったドM女騎士でしょうか!?」



 己に活をいれるために自分の頬を叩いたアンリエッタに二人が驚きの声をあげる。ソロモンが変なことを言っていたがきっと気のせいだろう。



「あなたたちのことを信じるわ。ただ、私も連れて行ってちょうだい。何が真実か自分で見極めたいの」

「ふふ、いいじゃろう。それにしても昔の目にもどったのう。さっきまでは屍のようじゃったぞ」



 アンリエッタの言葉にエレナが嬉しそうに軽口を叩くと、アンリエッタもまんざらではなさそうにほほ笑んだ時だった。

 何者かがすさまじい速さでやってくる。そして、そのままソロモンに殴りかかろうとして……



「させん、風の結界よ!! 我が仲間を守れ!!」

『ほう、エルフですか、よく練れらた素晴らしい魔法ですね。ですが……私に魔法は通じません』



 エレナがとっさに作った不可視の壁がソロモンとドットーレの間に風の盾をつくりだした。

 だが、その衝撃に耐えられずにめきめきとひびがはいっていく。



「影の腕よ。我が敵を捕らえよ!!」

『無駄です。私は対魔族用につくられていますから。あなたたちの魔法は効きません』

「そんな……魔王の力が……」



 ソロモンの影から放たれる真っ黒い手が襲い掛かるもドットーレの体が輝くと掻き消えた。

 ソロモンが呆然としたところに再びドットーレが襲い掛かる。



『アンリエッタ様!! サポートを!! この女は魔族です。我らが敵です!!」

「お主……まさか、わしらをはめたのか!! ソロモンよ、お前さんだけでも逃げてステラと合流するんじゃ!! 風よ、わが友をいざなえ!!」

「ステラさん……きゃぁぁぁぁ!?」


 エレナの放った風がソロモンを包むとそのまま遠くへと運ぶ。そして、魔法をはなち隙だらけのエレナをドットーレの拳が襲う。



「違う!! ドットーレ―。私の話を聞いて!! あなたは話せばちゃんとわかるゴーレムだって私は知っているわ。わたしたちははめられたのよ」



 すさまじい衝撃と金属音が鳴り響く。アンリエッタがエレナをかばいドットーレの一撃をうけとめたのだ。



『アンリエッタさん。申し訳ありませんが、マスターの命令が絶対なのです!!』




 上空に飛び上がったドットーレが空中で魔石が爆破させその勢いを利用して突っ込んでくる。



「一体何なのじゃ、こやつは!! なんじゃあぁぁぁ」

「くぅ、なんて威力なの!! きゃぁぁぁぁ」



 すさまじい破壊力にアンリエッタの剣にひびがはいり、そのまま地面がゆれると土砂崩れが発生して三人を飲み込んでいったのだった。



 ★★★


 王都の近くの街の冒険者ギルドである。ファントムたちをそこで待っていたのはぼろぼろのソロモンと珍しく憔悴しているステラだった。



「申し訳ありません……エレナさんはアンリエッタともう一人のゴーレムと戦い行方不明になりました……」


 申し訳なさそうに頭をさげるソロモンに俺は言葉をうしなうのだった。


アンリエッタとエレナはどうなったのか……


お楽しみに


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