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46.アンリエッタとエレナ

「今の爆音は……!?」



 馬に乗り部下と共に王城から急いで新たな魔王が潜んでいる地域へとたどり着いたアンリエッタを待っていたのは戦闘音だった。

魔法の爆発らしき音が響いてきたので警戒を高める。



『何者かが戦闘をおこなっているようですね……かなりの使い手だと思われます。目標の可能性もありますね』



 流石はゴーレムというべきか、併走しているドットーレの言葉にアンリエッタの顔に緊張が走る。

 ファントムに再び会えるかもしれないのだ。


 自分は一度彼を殺しかけている上に魔族との共存を否定した。もしかしたら実際に会っても話してもくれないかもしれない。問答無用で攻撃されるかもしれない。だけど……それでも彼に会いたいのだ。顔を見て彼の真意を見極めたいのである。



『どうやら緊張してらっしゃるようですね、一発芸でもお見せしましょうか?』

「え、別にそんなのはいらないけど……でも、あなたはカインと接するときとはずいぶんと違うわね」



 よほど険しい顔をしていたからかリラックスさせようとドットーレが軽口を叩いて驚く。

 彼女はマスターであるカインの言葉をほとんど無視していたためもっと感情のないゴーレムだと思っていたのだ。



『あなたはあのような雑魚とは違います。ちゃんと努力をし、己の強さを常に磨いている気高き人だと私はおもいました。ロキ様とともに世界を救った聖騎士アテナ様を思い出されるのですよ』

「私があの伝説の英雄と……」

『はい、くっ殺せという言葉がよく似合う素敵な方でした』

「……それは褒めているのかしら?」



 なぜかどや顔のドットーレにアンリエッタは苦笑する。英雄アテナはパーティーメンバーの盾であり、リーダーである勇者の支えにもなった少女である。

 魔王をたおし、帰還した勇者が王女と結婚したあとは騎士団長として国を守り続けたときく。己の恋心を隠しながら……


 私とは全然似ても似つかないわね……


 自分は中途半端だ。彼よりも領地を選んだくせに彼への想いを捨てきれないでいる。 そして、いまだに彼と会いたいと強く願っているのだから……



「追いついたわね」



 わが軍の兵士に追われている馬車をみつけて違和感を覚える。魔法や矢をうたれているが、あの馬車の反撃は致命傷をさけるかのようにしているのだ。

 馬を走らせ馬車を一瞬のぞくとそこに耳の長い少女がいたように見えた。



「エレナ……あなたもファントムについたのね……」



 胸がずきりと痛む。祝勝パーティーを辞退し出て行った彼女はどうやら彼と合流できたらしい。

 うらやましいと思ってしまう。自分にそんな権利はないのに……


 そんな気持ちをごまかすように馬に備え付けている革袋から紙とペンをとって、手紙を書いて矢につける。



『何をやっているのですか?』

「……降伏勧告よ。私という魔王殺しの英雄がいるんですもの。戦う気力がそがれるかもしれないでしょう?」

『相手は魔王をかくまった極悪人ですよ。無意味では?』



 むろんアンリエッタの言葉は嘘だが、ドットーレにそれを言うわけにはいかない。



『高威力の魔力を探知!! 気を付けてください」

「みんなその場で止まって!! 私が守るわ!!」



 ドットーレの言葉と同時にアンリエッタは強力な結界をはり馬車から放たれた魔法を防ぎきる。

 他の兵士たちも衝撃に備えて足をとめており、煙が晴れるころには誰もいなかった。そのことに安堵しつつ、周囲を捜索するフリをするのだった。



★★


「ちゃんときてくれたのね……久しぶり、エレナ」

「少し迷ったがのう……お主の事はそれなりに信用しておるからの」

「そう……言った通り一人だから安心してくれていいわ」



 待ち合わせの場所であるダンジョンのふもとで姿を現したエレナ……そして、魔族らしき角を持つ少女を見てほっと一息つく。


 ちゃんと来てくれた……でも、ファントムはいないのね……


 だけど、エレナの緊張した様子と彼がいないという事実がエレナたちと自分の距離が広がってしまったことを感じさせて胸が痛む。



「それにしてもここは懐かしいのう」

「ええ、ファントムに教えてもらったときは驚いたわね。あんなに早く強くなれる場所があったなんて……」



 懐かしい場所のせいか少し雰囲気が軽くなる。

 ここは一緒に旅をしたパーティーしか知らないはずの極秘ダンジョンである。ダンジョンに入ると地下道が続いており、そこには大量の金属製のスライムがいて、倒すと不思議なくらい強くなれるのだ。



「安心して、私はこの場では戦うつもりはないわ。あなたたちと話し合いたかったのよ。魔族と人間が共にいる理由を教えてもらえるかしら?」

「それならば私から説明した方がいいでしょう。私はソロモン。あなたがかつて倒した魔王の娘であり、新たな魔王です」

「な、魔王ですって……」



 ソロモンの言葉にアンリエッタは戦慄するのだった。


アンリエッタは二手に分かれているということを知らないので、ファントムがいないのは自分を嫌っているからだと思っています。

これからどうなるのか……お楽しみに


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