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45.エレナたちの戦い

「馬鹿な……このオセ四天王が一人エリオス様が……こんなにあっさりと……」



 馬車に乗っていたところを魔族に襲撃されたエレナたちだったが、前衛をステラがつとめ、エレナとソロモンの魔法で撃退するという戦闘スタイルであっさりと倒していた。

 


「ソロモンはわかっておったがおまえさんも思った以上にやるのう」

「私の任務はファントム様やアンジェ様の護衛も兼ねていますからね。このくらいはメイドのたしなみです」



 エレナが感嘆の声をあげるもステラはすました顔で当たり前のことのように言うがもちろん、当たり前ではない。

 彼女自体は元々はただのファントムたちの乳母の娘であり、メイドだった。だが、かわいい弟同然のファントムが魔眼というスキルに目覚めてしまい彼の人生が障害が多くなるであろうと考え戦闘スキルを学んだのだ。

 地獄のような鍛錬に耐える精神力と幸いにも才能があったのとゲーム知識をもつファントムのアドバイスによって彼女は前衛の回避型タンクとしては比類なき力を得たのである。



「現魔王である私に逆らうとは……実に愚かな……どんな処罰が待っているかわかっているでしょうね?」

「わかってますよ、ソロモン様。私とて魔族のはしくれです……ですが、あなたと共に歩いては私の願いはかなえられなかったのです。最後に一つだけお願いがいいでしょうか?」

「願い……ですか……?」



 自らの城でアモンとともに世話をしてくれた部下の裏切りに少し寂しそうな顔をしたソロモンに全身を負傷したエリオスがかすれた声で懇願する。



「なんでしょうか? いっておきますが人間に害をなることは……」

「ごみを見るような目でもっと私をののしってください!!」

「は?」

「ああ、そうです!! 無垢なるあなたにごみのような目で見つめられてののしられたかった!! そのために私はオセなんぞの部下に……にぎゃーーー!!」



 恍惚の笑みを浮かべながら叫び声をあげていたエリオスを氷のつぶてが襲い掛かり、物理的に口をふさぐ。



「教育上悪いやつじゃな……というか魔族は変態しかいないのかの……」

「まあ、人の性癖は多種多様ですからね……アンジェ様も最近は男同士の本に興味を持ってしまい困っています」


 エレナが愚痴るとステラも同意する。とんだところで性癖を暴露されるアンジェであった。



「アンジェちゃんにファントムXカインのどっちが受けと聞かれたのは何か関係があるのでしょうか?」

「知らん……わしはなんにも知らんぞ……でも、ファントムは受けっぽいのう」

「そんなことよりもソロモン様、この男はどうするのでしょうか?」



 無垢な瞳で問いかけるソロモンから視線を逸らすエレナ。そして無表情にたんたんと話しをごまかすステラ。


 


「彼がなにをいっていたかはわかりませんでしたが、この男は私が責任をもって魔界に戻します。わが影よ、咎人を喰らわん」



 ソロモンの詠唱と共に彼女の影が広がったかと思うと大きな口となり喰らった。話によると彼女の影の中は別の空間になっており、アイテムを保管したり、他人を閉じ込めておけるらしい。



「それにしても、結構な頻度で襲撃がくるのう……囮作戦は成功というところじゃろ」

「やはりこちらが探知できるようにオセも私の魔王の魔力がわかるようですね……アモンたちも無事だとよいのですが……」



 実のところ今回のような襲撃ははじめてではない。兵士たちによる待ち伏せなどは何回もあり、けがをさせないように魔法で撃退しているのだ。

 少しずつ疲労がたまっていくのを感じる。だが、そんなときに助かるのが……



「魔法を使うと精神がお疲れになると聞いております。紅茶とお茶菓子を置いておいたのでお楽しみください。今日のおやつはリンゴのタルトですよ」

「おお、楽しみじゃの!!」

「ステラは優秀ですね。やはり人間の可能性は無限です」



 歓喜の声をあげながら馬車になり少し経つと何者かが近づいてくる音が聞こえて、矢が飛んでくる。



「くっ、さっきの魔族との戦いで音を出しすぎたようじゃな」

「もぐもぐ(こうも襲撃が続くと厄介ですね……人間をむやみに傷つけるわけにはいきませんし……)

「一気に駆けますよ!! さすがに王城に近づくにつれて敵の強さも厄介になってきますね」



 ステラが馬車を走らせ振りほどこうとするにも兵士たちもまた食らいついてくる。エレナがソロモンが魔法を放ち兵士たちを足止めするも、次から次からくる敵に疲労が増していき、何本かの矢は馬車内に突き刺さる。

 むろん、殺していいのならばエレナの魔法で瞬殺である。だが、オセに利用されている人間を殺すわけにはいかないという縛りが彼女たちを追い詰めていた。

 冷や汗を流した中、一本の矢に手紙があるのに気づいたエレナは紙を広げる



「くっ……お馬さんにはもうしわけないですが、最悪馬車を捨てますか……私の影にひそめばしばらくはごまかせるはず……」

「いや、このまま走るんじゃ。わしが魔法を放つ。ステラよ、躊躇はいらん、全力で加速せよ!!」

「はい、わかりました」



 手紙を読んでいたエレナが馬車内で杖を構えると圧倒的な魔力が凝縮されていく。それを見て何かを察したかのようにわずかに笑みを浮かべるステラ。



「エレナさん!? そんな魔法を使えばか弱き人間は息絶えてしまいますよ」

「大丈夫じゃ。やつらには強力な盾があるようじゃからな。わが敵を焼き払え、メギドフレイム」


 状況がわかっていないソロモンを無視して、エレナが神の炎を解き放つ。その炎は後続の兵士たちを一瞬にして焼き払うかのように見えたが、そのタイミングで一人の白銀の鎧をまとった女騎士が前へとでる。



「みんなその場で止まって!! 私が守るわ!!」



アンリエッタを中心にまばゆい光と共に結界が張られて魔法が無効化される。



「あの輝きは『最硬のアンリエッタ』の破邪です!! どうやら相手も本気のようですね!! ですが、やつらの足は止まったようです。このまま逃げ切れば……どうしたのですか? エレナさん」

「うーむ……これを罠とみるか……本心とみるか悩ましいのう」



 険しい顔をしたエレナの手元の手紙にはこう書かれていたのだ。『私が時間を稼ぐから逃げて。そのかわりあなたたちと話したいの。この場所にきてくれるかしら』と……



 没案で実はステラは影の一人でファントムを監視していたってのも考えたんですが、冷静に考えたら原作のファントムってそんなに重要キャラじゃないなとおもいただのメイドにしました。

 無表情なメイドが実は主人のために血のにじむような努力をしているのが大好きなんだ!!


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― 新着の感想 ―
魔族って物凄く恐ろしい。 アモンはあれでマトモだったのか。
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