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37.カインと聖剣?

「まさか、こんなところに立派な遺跡があるとはね……」

「たまたま見つけた古文書に書いてありましてな。部下に探索させたのですが返り討ちにあってしまい途方にくれていたのです」



 僕はヨーゼフの案内で古い遺跡を訪れていた。ゲームでやったときは影も形もなかったが、続編で追加された遺跡なのだろう。

 魔物も見たことのないものがたくさんいたしね……だけど、僕の敵じゃないな。



 この体で前世の記憶を取り戻した僕ははっきりいって無茶苦茶強い。本来のカインが努力していたのだろう。ステータスはマックスでスキルの育て方も攻略サイトにあった理想値である。


 ふふふ、最強の身体にぼくのゲーム知識が合わさるんだ。誰にも負けないさ。


 あとは聖剣を得て本来僕を殺すはずの魔族を倒せばよいし、強さを見せつければ、アンリエッタたんだって僕に惚れるはずだ。



「この奥にあるんだね。ではいくよ」



 地図を持ったヨーゼフが頷くのもまたずに僕が扉を開けるとぎぎーーっという金属の音ともに開かれる。



「これは……」

「おお……なんという魔力だ」



 目の前には美しい人を模した石像と、台座があり、剣が一本突き刺さっているのが見える。離れていてもわかる圧倒的なまでの魔力に僕は胸が高鳴るのを感じた。

 まるで、アーサー王のようだね。そして、これが僕を最強にする聖剣なのだ。



「なるほど……これがかつての魔王スルトの……」

「はは!! この剣さえあれば魔族なんて敵じゃないぜ」



 ヨーゼフが何やらぶつぶつと言っているのが気にしないで僕が剣に手をかけようとしたときだった。

 石像の瞳が光った気がする。



「カイン様お気を付けください!!」

「何? うわぁぁぁぁぁ?」

『ロキ様の命令で、この剣は私のマスターにふさわしいもの以外に渡すわけにはいかないのです』



 いきなり動き出した石像の拳をなんとか剣で受け流す。ずしりと重い感覚に冷や汗をかきながらも魔法で牽制して距離をとる。

 しかし、上級スキルである無詠唱で放った火魔法も目の前の石像の前にははじかれてしまう。いや、正確に言うと表面の石が砕け散り、その奥に隠されていた美しい水晶のような金属でできた体躯がはじいたのである。

 こいつの体は魔法をはじくのか?



「お前は一体何者だ!! 僕は英雄だぞ!! その剣にふさわしいのは僕以外いないだろう!!」

『自己紹介が遅れました。私は『ドットーレ』。賢者ロキ様が作ったマジック―ドールでございます。主なお仕事はロキ様のサポートとご奉仕、そして戦闘ですね』

「おお、賢者ロキとな!! 数百年前に現われし魔王スルトを倒した賢者の一人の名をここで聞くとは!!」



 なんかテンションがあがっているヨーゼフに、そんな設定しらねぇぇよぉぉぉと内心叫びながら僕は焦っていた。

 目の前のドットーレとやらは見た目こそ美しい女の像だが、恐ろしく早い。身体能力だけならば自分をはるかに上回っているのがわかるからだ。

 しかも、前世で聞いていた名前は『殺戮人形ドットーレ』である。殺意しかない。



『ロキ様からの命令で、この剣はふさわしいものにのみ渡すように言われています。あなたがたの器をみせてもらいましょうか」

「はっ!! メイド風情が僕を試すだと!! 生意気な!!」

『メイド……? 私は家事は一切できませんが?』

「ん? 奉仕っていってなかったか?」



 僕の言葉にドットーレはきょとんとしていたが、馬鹿にする様に嗤った。



『奉仕といえば性的なことにきまっているじゃないですか、あなたさては童貞ですね?』

「な、ど、どうていちゃうわ!!」



 いや、童貞だけど……前世はともかくいまの僕は王子だ。本気を出せばいつでも捨てることができる。そう、アンリエッタたんとの初体験のために守っているのである。



『まあ童貞でもあなたに英雄の器があればいいでしょう。いきますよ!!」

「な、はや!?」



 先ほどよりも早い一撃に剣で受け止めた両手がしびれる。



『おやおや、身体能力は高いのにまるで使いこなせていない。さきほども、動きおそくさせる氷魔法を使えばもっと優位に戦えたでしょうに……これはあれですね、ゴブリンに魔法書、童貞に避妊具ですね』

「ごはぁ」



 腹を殴られ激痛を感じ血反吐を吐いている僕を煽るようにドットーレが笑う。ふざけるな、僕は……英雄で……主人公なんだぞ……

 そして、気が遠くなるのを感じた。







「うう……ドットーレはどうした?」



 どれくらい気絶していたのだろう。体を起こした僕は二つの違和感を覚える。一つ頭がぼんやりするのと、右手にはなぜかレヴァーテインが握られているのだ。



「おお、目覚めましたかな。流石はカイン様です。あのあとあなたを認めたこの人形はレヴァーテインを献上してきたのです」

『あなたを魔剣の持ち主と認めます。マスターの命令は絶対ですからね』



 ヨーゼフの隣でこちらを無表情に見つめているドットーレを見て、戦意がないのを悟る。



「は、はは……ようやくわかったか。僕は英雄なんだよ。ファントムとはちがってなぁ!!」



 違和感はある。だけど、自分はかりにも主人公だったのだ。おそらく血筋か何かに反応して僕を主と認めたのだろう。

 


「これで魔族だろうが何だろうが僕の恋路をじゃまするやつは倒して見せる」



 手の中の聖剣がなぜかどくんどくんと不吉に呼応しているのを感じながら城へと戻るのだった。



 あれ、ドットーレさんはカイン君のことをマスターと呼んでいない……

 強力な力を手にするんです。少しくらい頭が痛くなってもしかたないですよね。

 

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