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33.ファントムの帰還

さすがに自分とこの領主の館にいくのに素顔のままというのはやばいと思ったので、顔全体に包帯を巻くことにする。


 気分は志々雄真実である。 フタエノキワミ、アッー!!


 隣に法衣のセリスがいるのも説得力が増すだろうと思うのだが……



「あの……くっつきすぎじゃない?」

「ダメですよ。ファントムお兄様。けが人の面倒を見るのはプリーストの仕事ですから、近くにいないと……」



 セリスがまるで俺を逃がすまいとでもいうかのごとく、腕をがっつりと挟んでいるのだ。

 それはいいのだが、ティアよりも豊かな胸ががっつりと当たって色々とやばい。



「プリーストってそこまでするっけ?」

「くんくん……知らない女の香りがしますね……これがティアという女でしょうか?」

「おーい、セリス!! 話聞いてる?」



 こちらの言葉に反応せずになぜかハイライトの消えた目でぶつぶつと呟いていてちょっと怖い。

 いつでも笑顔の優しい女の子だったんだけどな……まあ、俺が追放されたと勘違いして姿をくらましたことが原因だと思うから強く注意できない。

 それにだ……

 


「そのさ……ロザリオの件はごめん……誤解だっていうのにおいてきちゃったよね」

「いえ、いいんです。カインやヨーゼフの陰謀に気づけなかった私にも非がありますから……それにこれからは私がずっと一緒にいますから大丈夫ですよ。ロザリオのかわりにあなたを生涯守り続けます」



 ギューッと強く腕をおしつけてくるセリスの瞳にはわずかな怯えがあった。そういえば……昔出会った時から寂しそうな瞳をする子だったと思いだす。

 そして、再会した時は本当に嬉しそうに懐いてくれてお兄様と慕ってくれたのだ。

 


「ん……ファントムのお兄様のてのひらは大きくて人を安心させますね。私よりもプリーストに向いているかもしれませんよ」



 懐かしさと嬉しさのあまり頭を撫でるとセリスが幸せそうにほほ笑んでもっと撫でてほしいとばかりに上目遣いをしてくるのはずるいと思う。



「そんなことないよ。あ、でも、エレナも嬉しそうな顔をして……」

「ファントム兄さま。私はあなたの事を話しているんです。他の女は関係ないかと」

「え、ああ、ごめん?」

「こういうことは本当に信頼している女の子にしかしてはだめですよ。私とか……」



 ほほ笑んでいるはずなのに、目が笑っていない。本能的に恐怖を感じた俺は早足で、領主の館に向かう。

 そして、衛兵に声をかける。



「すまない……アンジェとステラ姉さんにグスタフが会いに来たってつたえてもらえるかな?」

「は!! すでに客人たちはさきについていますよ。グスタフ様!! 今はアンジェ様とエレナ様、そして、ソロモン様でこれからのことを話し合っています」



 衛兵がうっすらと涙をためながら俺たちを出迎えてくれる。どうやら話はもう通っているようだ。

 ティアたちが乗っていた馬車が庭にあるのを確認し安堵の吐息をもらして、案内された部屋にはいると、地図を眺めながら三人の少女が話し合っていた。



「無事でよかった……心配したんじゃぞ、ぶべら!!」

「久しぶりですね、エレナさん。とりあえずファントム兄さまは怪我をしているので、触れないようにお願いしますね」



 感極まったとばかりに抱き着いて来ようとしたエレナをセリスが結界ではじく。悲鳴をあげているけど大丈夫なんだろうか?



 興味深そうにそのやり取りを見つめているソロモンに手をふって、俺は実の妹であり今は領主であるアンジェに声をかける。

 一年前に比べ凛々しくなっているのは気のせいではないだろう。彼女も領主として色々と経験したのだ。いや、させてしまったのだ、俺が……



「色々と面倒をかけてごめん……だけど、力を貸してほしんだ」

「……」



 一年ぶりに合う妹はこちらの問いには答えずに険しい顔で俺をみつめている。


 だけど、余計なことばかり巻き込んでと怒っているかと思った彼女が最初に発したのは意外な言葉だった。


ファントム君の傷は治っているんですが、心配してくっつくのは聖女としての仕事だから仕方ないですよね?

本当の妹にて現領主のアンジェとの再会はどうなるのか……おたのしみに


面白いなって思ったらブクマや評価をくださると嬉しいです。

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気分は志々雄真実って…国盗りする? 二重の極みは安慈和尚だってツッコミは野暮だからやめとくとして。
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