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18.ティアとフラウ

ティアとフラウが話しているところから少し離れた場所で俺はアベルとしゃべっていた。念のためティアちゃんとフラウちゃんの話には聞き耳をたてさせてもらっている。



「お疲れ様です。俺たちは後方で支援をしていますが、なにかあったら言ってくださいね」

「ああ、アベルも気をつけてな、決して無茶をするなよ」

「はい!! グスタフさんのような立派な冒険者になれるように頑張ります!!」



 尊敬の目で見てくるアベルにちょっと照れ臭くなって思わず説教じみた言葉を言ってしまったが余計嬉しそうになっている。

 俺ってそんなにすごいことをしたのかなぁ……



「ティア……あなたも前線に行くのね……大丈夫なの? 二人の足をひっぱらないようにね」

「ええ、大丈夫ですよ、フラウ。私は可愛いですから魔族だって魅了して見せます」

「あなたねぇ……」



 ドヤ顔のティアにフラウが何とも言えない表情をしているのでフォローしようと思ったが意外な声があがった。



「心配は無いぞ。こやつの勇気と可愛さは本物じゃよ。なんせ魔族すらも魅了したんじゃからな」

「えへへ、だから心配はいらないんですよ、フラウ」

「そう……なの……? でも、何かあったら危ないからこれをあげるわ」



 魔王殺しの英雄であるエレナに認められているティアを見てフラウが驚いて目を見開いたあとに、気を取り直したように胸元からロザリオを差し出した。

 見たところ力は弱いがダメージ軽減の魔法がかけられているようだ。そういえば俺も昔セリスにもらったなぁ。



「これは……」

「その……私はアベルがあなたにデレデレしているのに嫉妬して追放に賛成していたところもあるの。それで、ずっと謝りたいなって思ってお詫びの品を渡したいなっておもって……受け取ってくれるかしら」

「いいえ、気にしないでください。あの時点の私が弱く自分の強みを理解できていなかったことは事実ですから。それに……みんなと別れたからこそ師匠に出会えたんです」



 ティアは笑顔で受け取ると、そのままロザリオを首にかけてこちらに向けてポーズを取る。


 可愛い……じゃなかった。


 元パーティーとの関係も良くなったようで何よりだ。



「ほう……守護のロザリオか。あの娘はよっぽどティアに申し訳ないとおもっていたんじゃな」

「え、あれってそんなにすごいものなの?」

「常識じゃろ。なんで知らんのじゃ……あれはプリーストがずっとつけているロザリオでな。己の加護を分け与えると誓った一人の人間にのみ渡すアイテムじゃよ。同性ならば親友に……異性ならば恋人か最も愛する人間に渡すプロポーズや告白のようなものじゃな。これのすごいところがの、プリーストのレベルが上げると加護のレベルもどんどん上がっていくんじゃ……」



 エレナが何かしゃべっているが耳に入らない。

 待って、待って……何それ知らない。俺、セリスからもらってるんだけど!! 何も考えずに笑顔で受け取っちゃってたんだけど……

 そういえばゲームではセリスルートに進むと、エンディングでカインに何かをわたしていたがそれがこれなのかもしれない。



「ちなみにさ……そのロザリオをどっかに置きっぱなしにしていたって渡したプリーストが知ったらどうなると思う」

「うん? 受け取った後にそんなことしたら切れるじゃろうな……お前の加護なんぞ俺の人生には不要だと言っているようなもんじゃぞ。絶対やめろよ」



 やっばい……追放されたと思った時に皆のことは思いだしたくないから部屋に置いてきちゃったんだけど……


 セリスの本心がどうかはわからないけど無茶苦茶失礼なことをしてしまった気がする。


 そんなことを考えているとひょっこりとティアが下から可愛らしく顔をのぞかせた。



「どうですか、師匠。今の私はとっても可愛いですか?」

「ああ、似合ってるよ」

「むーー、違います。可愛いって言ってください!! 他の人に言われてもどうでもいいんですけど、師匠に可愛いって言ってもらえると私はとっても自信がつくんですから。ほら、可愛いでしょう?」


 

 ほほを膨らませたティアが思いっきり胸をよせて見せるものだから、谷間にロザリオが挟まれて偉いことになる。



「ああ、可愛いよ……」

「どちらかというと可愛いというよりもエッチィ気がするのう。にしても、この巨乳好きめが!!」



 ジトーっとした目のエレナに足蹴にされつつも俺たちはアベルたちに別れを告げて森の奥へと向かう。



「それにしてもティアは強いね……あんな風にすぐに前向きになれるなんてさ」

「うふふ、そうですね。でも、それは絶望のふちにいた私を救ってくれた人がいたからですよ。だから、私のすごいのは全部師匠のおかげです」



 改めて褒めると予想外のカウンターを決められて驚く。だけど……その一言でこの一年の放浪生活が無駄ではなかったのだとおもえてうれしくなった。



「それは違うよ。それはティアがずっと頑張ってたからだよ。お俺だけのちからじゃないさ」

「うふふ、そういうことにしておきますね。でも、すごいとおもうなら頭を撫でてください」


 ねだるような目をする彼女に従って頭を撫でると幸せそうに微笑んでくれる。それが嬉しくてずっと撫でているとエレナの不満そうな声が聞こえてきた。



「もう、なにをしておるんじゃ。こっちから魔力を感じるぞ!! また、女の子に甘い言葉をかけてーー!!」

「ああ、今行くよ」

「はーい」


 新しい仲間に感謝しながら俺は再び魔族との戦いのために気を引き締めるのだった。

面白いなって思ったらブクマや評価をいただけると嬉しいです。

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― 新着の感想 ―
もらったロザリオを部屋に置きっぱなしにしたのすでにバレてるに一票(待て) 手がかり探す為に家探しは基本ですからねぇ(おいっ)
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