10.大切な仲間が馬鹿にされるのは許せない
「はっ、トロルの巣を崩壊させた俺たちより薬草採取ばかりのグスタフの方が強いだって? 冗談にもほどがあるぜ」
「なにやってるのよ、ギャメル。こんな雑魚たち放っておきなさい。大体私たちには森の異変を探る探索任務があるでしょう? ギルドから指名依頼なのよ。これをこなせばAランクもみえてくるわ」
「あー、だめだって。ギャメルの奴は魔王殺しの英雄たちのファンなんだよ。だからエレナ様に良いところを見せたいのさ」
パーティーメンバーなのだろう。ユグドラシルの枝のリーダーであるギャメルの声を聞いた魔法使いらしきローブを身にまとった女性と重騎士らしき甲冑の青年がやってくるが、真剣に喧嘩を止める気はないようだ。
むしろ、青年の方はにやにやと笑っておりこの騒動を楽しんでいるようですらある。
これがこの街のBランクか……アイシャちゃん風に言うならランクは高くても品位はDランクだね……俺的には別にこのまま譲ってもいいんだけど……
「トロルの巣がなんですか!! 師匠は路頭に迷っていた私を導いてくれたんです!! 素敵さなら師匠はAランクですよ!!」
「は、お前は確かエロい格好して接客してた新人冒険者だろ? 元のパーティーに捨てられたところをケツを振りながら媚びを売って、拾ってもらったんだってなぁ。飼い主は強い方がいいだろ? グスタフの雑魚の代わりに俺が可愛がってやろうか?」
「なっ!!」
あんまりにも失礼な物言いにティアが言葉を失う。俺はそんな彼女とギャメルの間に入る。
彼の魂胆はわかった。挑発して俺を倒して自分の力をエレナにアピールしたいのだ。
「ティア……もういいから」
「はは、馬鹿な飼い主はちゃんと誰が強いかわかっているようだぜ……なっ!?」
あざ笑うような笑みを浮かべるギャメルの首筋に剣をつきつける。
先端がかすかに刺さり彼の首筋からつーっと血が流れていく。
「お前……もう、黙れよ」
普段だったら笑ってごまかしていただろう。だけど、ティアちゃんを侮辱されたら話は別だ。
一度裏切られた俺は彼女の期待を裏切りたくない。それに何よりも大切な仲間を馬鹿にされて黙っていられるほど人間はできていない。
「不意打ちしやがって!! 先に剣を抜いたのはそっちだからな!!」
冷や汗をかきながら後ろに下がったギャメルが剣を抜いてこちらに斬りかかってこようとするのを見た俺は殺気を解放して……
ギャメルが地面から生えてきた枝によってからみついて身動きが取れなくなる。
「やめんか!! 騒がしい。わしはグスタフに依頼したんじゃ!! おぬしらに用はない。さっさと去るが良い!!」
エレナの魔法だ。本来ならば制御が難しい植物魔法をピンポイントにギャメルだけを狙うことができるのは流石というべきか。
ギャメルの方に杖をつきつけながらエレナが怒鳴る。
「ですが……そいつらではあなたのことを守るには力不足です!! 俺たちが……」
「いいから去れといっておるじゃろ!! 魔物が来てもわしがいれば問題はないわ!! だいたい、わしは他人を侮辱し自分を上げようとするやつは好かんのじゃ!! むかつくやつを思い出してしまうんじゃ!!」
「くっ……くそ、グスタフのやつおぼえておけよーー!!」
エレナが再度声を荒げるとギャメルが捨て台詞を吐いてさっていく。てか、俺を恨むのおかしくない?
勝手にばかやってエレナの評価をさげただけじゃん……
「エレナさん冒険者の見苦しいところをお見せしました」
「別にかまわんが……おぬし本当にCランクか? さっきの小僧は全く反応できてなかったぞ」
「あはは。まあ、不意打ちでしたからね。エレナさんが止めてくれなかったらどうなったことか」
「でも、師匠かっこよかったですよ!!」
笑ってごまかす俺にティアが抱き着くが、エレナの瞳から疑いの色は一切きえなかった。
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