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浄化の炎


 ☆


 バックヤードから売ることができない道具を段ボールに入れて、それを持って野良神社に到着。

 初回ということで、今回は富樫オーナーも一緒についてきてくれることになった。というか、オーナーに段ボール持たせちゃってるんだけど、良いの?


「なあシバ。まだ考えは変わらないんだな?」

「ははは、誘っていただけて光栄ですが、店主さんの店の福利厚生は凄く良いので、お断りします。というか、どこかで聞かれても知りませんよ?」

「それもそうだな。まあ、正直俺もあきらめている。ご近所さんって方が、こうして話せるからな」


 富樫オーナーはかなり年上なんだけど、なんか友達という感じで接してくれている。いや、一応僕は敬っているよ?


「野良神社には行ったことはあるな?」

「はい。マッチョの神主さんともお知り合いです」

「俺も鍛えているんだが、喧嘩で勝てるとは思えないな。腕相撲なら何とかなるかな」


「ではやってみますか?」


 いつの間にか背後を取られていた!?


「『寒がり店主のオカルトショップ』の柴崎さんと、富樫ビルオーナーの富樫さんですね。いつもの場所に穴があるので、そちらへ置いていただけたらと思います」

「まさか神主じきじきにお出迎えとは、何の風の吹き回しだ?」

「いえいえ、ただ強いて言えば、柴崎さんは今後ともお世話になると思いますし、丁重にと思いましてね」


 ガタイの良い大男が僕を見て不思議な笑みを浮かべているんだけど!


 ☆


 神社に入るときは疫病神さんから貰った『赤富士の巾着袋』で『邪神の刻印入りネックレス』を包んだ。こうすることで、悪魔的なオーラを神社に持ち込まないとかなんとか。

 巾着袋に入れた瞬間、本堂の扉が少し開いて、中から疫病神さんが手を振っていた。さすがに富樫オーナーもいるから振り返すことはできなかったけど、軽く頭を下げて笑ったら、疫病神さんもほほ笑んだ。


 本堂の裏手に行くと、小さな穴が掘られてあり、、周囲に四本の柱。そして白い紙で作られた飾りが所々につけられていた。


「段ボールから取り出さず、そのまま入れるんだ」

「え、良いんですか?」

「触って発動する悪魔道具もあるらしい。俺は最初にこの手伝いを依頼されたときから箱の中を見たことは無いな」

「わかりました」


 富樫オーナーから段ボールを受け取り、それを中央の穴に入れた。


「では始めます。富樫さんはすでに知っていると思いますが、柴崎さんは初めてですね。これから行う儀式は野良家に伝わる秘術です。外には言わないようお願いします」


 その瞬間、四本の柱が燃え始めた。しかも赤い炎ではなく、青色の炎である。

 炎色反応とは違う、正真正銘の『何か別の炎』に、僕は驚くしかなかった。


「あらゆる闇を燃やし尽くす炎。これは悪魔が少し触れるだけでも消滅すると言われています。準備に時間はかかりますが、その分効果は絶大です」


 悪魔を殺せる炎。もしかして、これに店主さんやクアン先生が触れたら、この世から消えてしまうのだろうか。

 そう思ったら、何故かゾッとしてしまった。


「なあシバ。俺はな、この炎を一度だけ盗んだことがあるんだ」

「え!?」


 盗んだって……どういうこと!?


「簡単な話だ。俺はあの悪魔店主を消そうと思った。だが、この炎は普通の木や紙には燃え移らねえ。燃えたところで普通の炎になる」

「あの時は驚きました。突然棒状のものを炎につけて、神社の入口に走りましたから、追いかけましたよ」


 片方は悪魔を消すため。もう片方はただの炎を持って街を駆け巡ることを防ぐため。どちらも必死だったのかな。


「……シバ、こいつ、びっくりするくらい足が速いんだ。賽銭箱の手前で追い付かれたんだ」


「思ったより目と鼻の先ですね!」


 すぐに捕まったのか。さすが疫病神の加護を受けた神主さん。その筋肉は伊達では無いのか。


「今でもできることなら店主さんを消したいですか?」

「いや、あきらめたよ。悪魔店主に白状したら、それくらいで消える低位な悪魔では無いって言われたよ」


 ……邪神の刻印入りネックレスを付けてないと頭が少し痛いって言うくらい、そこそこ些細なことでダメージを受ける悪魔さんだよ?

 言わないけどさ!


 ☆


 やがて青い炎は消え、神主さんに別れを告げて、こっそりこっちを見ていた疫病神さんに軽く手を振った。


「今日はありがとうございました。今度からは僕が一人で行けます」

「ああ。荷物が多い時は言え。お前のおやじくらいの年齢差はあるが、俺はお前を友だと思ってるよ」


 いやいや、ビルのオーナーをそんな気やすく呼べないよ。


「そういえばお前の親はどうしてるんだ?」


 ……親か。そう言えば、店主さんにも話したことがなかったっけ。


「ワタチも気になりますね」

「うわあ!」

「ぬおお!」


 富樫オーナーが僕の背中に隠れるのはどうかと思うよ!?


「心外ですね。せっかく上司であるワタチが迎えに来てあげたのに、まるで化け物を見る目で驚かれては傷つきますよ」

「日が暮れて突然話しかけられたら店主さんじゃなくても驚きますよ。わざわざお迎えありがとうございます」

「かまいませんよ。また従業員が悪徳業者に勧誘されていないか調査するついでです」

「はは、ご近所様の店員を引き抜く度胸はもうねえよ……はあ」


 だから富樫オーナーは僕の背中から離れてくれない?


「それよりも従業員の家族の把握はしておかなければいけません。帰りながらでも教えてくれませんか?」

「あー、なんというか、どこにいるかわからないんです」


 色々な文化を辿ると炎に関する神話は多いですね。科学的な話をすると夢はなくなりますが……


 炎の存在は人間の最初の発明ーって言われてたような言われていないような。最初に肉を焼いて食べた人間(アウストラロピテクス?)は炎を見てどう思ったのか気になりますね。

 味方にもなりますが、同時に敵にもなります。辺りを焼き尽くすのも炎なので、ある種の天使であり悪魔な存在ですね。

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