表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
35/79

音楽室のピアノ


 ☆


 このお店で働き始めて、初めて夜間作業というものを本日行うことになった。

 夜間作業を行う日の翌日はお店はお休みで、定休日も含めて夜間作業が終わったら二連休である。

 そして何より夜間作業は手当が出る。どうしよう、物欲が無い僕でもさすがに通帳の預金額の桁が増えたら、大きな買い物をしようかなって思っちゃうよ?


「ところで今日は何を運ぶんですか?」

「それなりに大きな物です。すでに現場にはトラックが到着しているようなので、ワタチたちも向かいましょう」


 ☆


 市内でもそこそこ大きい小学校に到着。夜の学校ってそれとなく雰囲気があって、怖いよね。


「あ、一応言っておくと、ここにはワタチが売った人体模型があります。すっごい動くので驚かないでください」

「絶対驚く自信があります!」


 なんだよすっごい動くって。

 そんなの絶対驚くじゃん。


 以前話を聞いてみたら、防犯対策とか夜に忍び込む子供に対しては効果抜群らしい。夜に忍び込む大人も半年に一度くらいいるらしく、その多くは特殊な性癖を持つ人とのこと。


「富樫様の話ではすでに音楽室に運んだとのことですね。仕事が早くて助かります」


 富樫様。通称富樫オーナーは寒がり店主のオカルトショップのお隣の立派なビルのオーナ。もしかしてこういう運送業もやっているのかな。

 小学校の中に入ると、やはり廊下は怖い。なんというか、すごく長く感じる。


「怖いなら手をつなぎますか?」

「良いんですか! 是非!」

「え、ちょっと予想外でした」


 だって怖いもん。つないで良いって言われたらつなぐよ!


 というか、店主さんの手、冷た!


「店主さん、まるで氷みたいに冷たい手ですね」

「そりゃ寒がりですから」


 ……え、店の名前のルーツって、そこ?


「まあ、『寒がり店主』のルーツはワタチです。色々と理由はありますが、まあそれはそのうち話しますよ」


 そう言って音楽室へ進む。すると、中央には立派なグランドピアノが置いてあり、ピアノの鍵盤の上には請求書が置かれてあった。


「ということで今回の商品は『呪いのピアノ』です」

『ジャーーーーン!』

「ぬああああああ!?」


 人体模型よりも目には優しいけど、突然ピアノが鳴り響いて驚いた。


「まあ呪いと言っても、実際は悪魔が憑依しているだけです。しかも下位の悪魔なので、音を出すのが精一杯ですね」

『ジャジャジャーン』

「いやいや、それでも結構怖いです!」


 大音量で鳴り響くし、鍵盤がウヨウヨと動いているし、そういうアトラクションって思わない限りは怖いよ!


「あ、人体模型が反応して、後ろでダンスし始めましたね」

『カタカタカタカタ』

「ぬあああああ!?」


 なんで突然セッションし始めるの!?


「喜ばせたら帰りませんからね。そりゃ彼らも全力で脅かしにきますよ。あ、ワタチが普通に接しているから凶器を持ち始めましたね」

「にゃああああ!?」

「ちょ!? ワタチに抱き着かないでください。彼らはワタチと契約しているので言うことは聞きますから!」


 やっぱり悪魔は怖い!


 ☆


 納品した『呪いのピアノ』の品質チェックはつつがなく終わった。と言うか、僕が驚いたから問題ないだろうという雑なチェックだった。

 動く人体模型も店主さんの言う通り、理科室に帰れと言ったら帰った。でも終始僕を見ながら帰ったから怖かった。

 そして一度店に向かい、僕は店番をしているガウスに抱き着いた。


「ガウス―!」

『ガウガウー!』


 血を与えていないから所々中身が見えているけど、見慣れるとこれも可愛く思える。そして今一番の癒しはガウスだった。


「あー、ガウス―。すっごい癒されるー」

『ガウガウ!』


 すごい。やっぱりペットによる癒しの効果ってあるのかな。ガウスに抱き着くと、さっきまでの恐怖心が一気に抜けていく。


「あー、それは『畏怖の番犬』であるガウスが柴崎様の恐怖を食べているからですね。全くガウスは恐怖を喰らいつくして廃人にする悪魔なのに、柴崎様の血を飲んでから変わっちゃいましたね」

「ガウスー! お前、僕をマジで癒していたのか!」

『ガウ!』


 なんて可愛い犬なんだ。僕はガウスのためなら高級ペットフードをためらわず買うぞ!


「何度も言いますがガウスは悪魔です。可愛がるのも良いですが、油断はしないでくださいね。命令を間違えればガウスは兵器にもなりますし、簡単に裏切りますからね」

「それを言ったら店主さんも悪魔ですよー。僕は店主さんにも警戒しないといけないんですか?」

 

 特に何も考えず、半分冗談で聞いたつもりだった。


「はい。柴崎様はワタチにも油断はしないでください。この先、貴方の固定概念とワタチの率直な考えがぶつかりあうこともあるでしょう。もし、本当に間違っているならワタチを全力で説得してください」


 学校の七不思議の音楽室。ピアノはメジャーですが、他にも打楽器や管楽器が鳴り始めたり、もっと凄いと音楽室に貼ってあるであろう音楽家の写真が動く系ですね。

 とは言え、最近では新紙幣のホログラムで動く偉人がありますし、電子ピアノで鍵盤が勝手に動くものがあるため、怖いと思える要素は削減されてる感じですね。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点]  >「ガウスー! お前、僕をマジで癒していたのか!」 『ガウ!』  ❆(;❅▽❅)❆9Σ なんという、黄金パターン!! (T_T )「パターン?」 [一言]  ❆(❅▽❅)❆ 人体模型の…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ