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ダンタリアンの手袋


 ☆


 すごい今更だけど、このお店の名前は『寒がり店主のオカルトショップ』である。が、店主さんは寒がりなのかどうか少し気になった。

 梅雨入り前でまだ長袖が必要なくらいの気温だけど、店主さんは特別厚着をしているわけでは無い。では、なぜ『寒がり』なのだろう。


「ということで、店主さんは寒がりなんですか?」

「何が『ということで』か意味不明ですが、どちらかと言えば寒がりです」


 つまり、それほど店の名前は重要ではないと?


「では一つ質問です。『ミスター』が付くお店はありますが、そこの店員さんは全員男性でしょうか。それと、名前もその後につくものでしょうか?」

「それを言われると言い返せないです。つまりこのお店の名前と店主さんはそれほど関係が無いと?」

「無関係ではありません。かなり昔にワタチは寒い所に住んでいて、そこでお店を開く際に常に震えているとお客様から言われたから、店の名前をこのようにしただけです」


 寒い所というと北海道とかかな。ともあれ、店主さんは寒がりらしい。なんか全くすっきりしない解決である。


「ということで、新しく『ダンタリアンの手袋』を作成しました!」

「何が『ということで』……なるほど、店主さんの気持ちが今分かりました」


 突然僕の心の会話から現実に切り替えた場合、相手はキョトンとする。店主さんはそれを教えてくれたんだ。うん、大げさかもしれないね。


「それで、その手袋は何ですか?」

「ゴエティアの悪魔系譜の悪魔は契約に手間がかかるので、ちょっと苦戦しましたが、今回は成功しました。いわゆる取引先との交渉に成功と言うやつです」

「悪魔と取引って、それって大丈夫なんですか?」

「こちらも悪魔なので問題ありません。最終的には実力行使ですが、今回は物分かりが良くて助かりました」


 つまり、店主さんがバトル漫画のような戦いを繰り広げて取引を成立することもあるのかな?

 それはそれで見てみたいような気がする。


 ☆


 店主さんが僕に見せてきたのは、毛糸の手袋だった。先ほどの寒がりの話から続いて出てきたから、自分用の手編み手袋かなとも思った。


「相手の考えが読み取れる面白い手袋です」

「凄い危険な手袋ですね!」


 サラッと危ないことを言ったよ。相手の考えを読めるって、とんでもないことでは?


「正確には『人間の』です。ワタチに使うことはできませんが、ワタチが柴崎様に使うことはできます。試しに使ってみましょう」


 そう言って店主さんは手袋をはめて、僕の頭に手を置いた。

 なんか撫でられている感じがするし、店主さんが背伸びしてる。どうしよう、ちょっと屈んだ方が良いかな。でも、しばらく背伸び姿の店主さんを見ていたいような気がする。


「……背が小さくてすみませんね。それと意地悪しないで、さっきから考えている屈むということをしてください」

「本当に読まれてる!?」


 いや、偶然か?


「偶然だと思うなら、今日食べたいお昼を思い浮かべてください」


 お昼かー。店主さんの作るご飯って本当に美味しいからリクエストが困るんだよね。オムライスも美味しいしラーメンも美味しいし、前に作ってくれた幕の内弁当もすごくおいしかったし、ハンバーガーも本格的だったからチェーン店のハンバーガー店に行けなくなったんだよね。


「オムライスとラーメンと幕の内弁当とハンバーガーですね。今日はとても大変そうです」

「本当に読めてる! そしてそんなたくさん食べきれません!」


 持ち帰って良いのなら是非作って欲しい。


「とまあ、このような感じで相手の心が読めます。欠点として、相手の頭に触れる必要があります。ダンタリアンとの交渉でそこだけが唯一譲ってくれなかったところでした」


 悪魔との交渉って、どこでどのように行うのか、少し気になっちゃった。ダンタリアンって名前の悪魔は聞いたことが無いけど、ゴエティアという単語はなんとなく聞き覚えがあるし、図書館で調べたら出て来るかな?


「でも悪魔道具なんですよね。頭に手を乗せる以外の欠点はあるんですか?」

「これから探す必要もありますが、強いて言えば使用者は相手よりも知能の低い人でなければいけないってことくらいですね」


 つまり僕は店主さんより馬鹿なのか……。


「今、ちゃっかりワタチを馬鹿にしました?」

「不可抗力です。というか、いつまで僕の頭に手を置いてるんですか!?」


 うかつでした。


「それで、なんで知能の低い相手じゃなければいけないんですか?」

「思考を読んでいる時は直接脳に内容が伝わる感じなのですが、頭の回転が速い人や優れている人の場合は考える速度が速いです。その思考に追いつけずパンクするって感じですね」


 思ったより危険だった。つまり頭の良い人の考えを読もうとしたら、情報量の多さに追いつけなくなるのか!


「そうなるとあまり使い道は少ないのでは?」

「そうでもありません。実はすでに注文も入っていたんです。ということで、明日これを届けるついでに、もう一つこちらを渡すので、その効果を検証してきてください」


 相手の考えを読む方法は特別な超能力がなくてもできますよね。例えば相手の表情。それと手や目の動きなど。

 とは言え、この動画のように言語化されているわけではないので、推測以上の結果は得られませんね。


 作中ではあまり触れませんでしたが、悪魔にとってリターンは重要です。この手袋に付与された悪魔にとってのリターンは、人間の頭に触れるということ。

 ただそれだけ?と思うかもしれませんが、そもそも悪魔の考えなんて人間に理解できないものです。もちろん私も理解できません。なので「人間の頭を触りたくて仕方がない」という変な性癖を持つ悪魔が頭良いかなーと軽く思いました。

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