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マンドラゴラ


 ☆


 店主さんに依頼され、今日はクアン先生のところへ配達。できる仕事が増えてくることはとても良いことであり、配達も普段見ない景色が見れるから楽しく思える。


 あー、店主さんのお昼ご飯が食べれないのは残念。千円払ってラーメン頼むより、五百円天引きの店主さんが作るご飯の方が美味しいって、一種のバグだよ。稀に千円のラーメン以上の豪華なラーメンも出るしね。


「おや、その顔はお昼に悪魔店主のご飯が食べられず、ちょっと残念といったところかい?」

「クアン先生こんにちは。よくわかりましたね」

「悪魔店主のご飯は美味しいからな」

「へー。クアン先生って店主さんのご飯を食べたことあるんですか?」


 長い付き合いっぽいし、店主さんは料理するの好きそうだから、ごちそうされたこととかはあるか。


「住んでいる部屋が隣だしな」

「まさかのご近所さんだったんですか!?」


 そう言えば以前クアン先生に会った帰りのバスに乗ったら店主さんも乗ってたし、少し話したらすぐに降りたから、近いのかなーとは思ってたけど、お隣だったとは思わなかった。


「って、隣なら直接届けても良かったのでは?」

「悪魔店主にも事情があるのだろう。例えば『さすがに人間が近くにいたら不都合な道具の作成』とかな」


 ……おおう。ちょっと背筋が凍った。


 ☆


 応接室に移動してクアン先生に小包を渡すと、その場で箱を開けた。中身の確認と、問題が無ければ受け取りのサインをもらうのだけど……まあこれも仕事だ。『家が近所だからサインはお隣に渡して』なんていうのは甘えだと思った。


「ふむ、間違いない。本物の『マンドラゴラ』だな」


 マンドラゴラって……あの『マンドラゴラ』!?


「お、興味があるのかい?」

「ゲームのアイテムでしか名前は知りませんが、実在するんですか?」


 そう聞くと、クアン先生は箱から中身を取り出し見せてくれた。そこには少し大きめの植木鉢に、小さな木のようなものが生えていた。


「この地球においてこれは『生物兵器』とも言えるな。引き抜いたら爆音で耳が壊れ、精神も破壊さる非常に危険なものだ」

「引き抜かないでくださいね!」

「クーも死にたくないからな。この生えている葉が欲しくて頼んだのだよ」


 そう言ってクアン先生ははさみを取り出して、マンドラゴラのてっぺんの葉っぱを切った。それを小さなケースに入れた。他にも何箇所か切り取り、別のケースに入れた。


 というか、店主さんはどこからか取り寄せたっぽいけど、マンドラゴラって取り寄せられるもんなの?

 完全にファンタジーの植物だと思うんだけど、ネットでポチって届くお手軽植物なの?


 いやまあ仕入れルートに関してはきっと将来教えてくれるだろう。いや、教えてもらわない方が良いかもしれない。


「クアン先生はこの葉っぱを何に使うんですか?」

「興味を持つことは良いことだ柴崎青年。マンドラゴラの葉は万能薬になるという言い伝えがあるが、それは本当かどうか立証するために研究をするのだよ」

「なぜですか?」

「根拠が無いからだ。先ほど『生物兵器』という単語を偶然にも使ったが、今生きているこの時間にも新型のウイルスは誕生している。万が一新型ウイルスが散布された際にマンドラゴラの葉が役に立つのか気になったのだよ」

「そりゃ、万能薬って言われてますから、効くのでは?」


 そう答えるとクアン先生は目を輝かせた。


「一般的な回答ありがとうだ。だが、もしもこの今切り取った葉が未来に誕生するウイルスに効果があった場合、作用によってはこのマンドラゴラは未来の病原菌に対抗する術を得ていたことになる」


 ……おおう、なんか話しがよくわからないけど、過去に作った薬が未来でも使えるのは過去の薬の成分が凄いってことかな?


「マンドラゴラだけの効果だけではない……という可能性は?」


 ふと生意気にもクアン先生の話に突っ込んでみた。するとクアン先生はパッと真顔になり、僕の目をじっと見た。


「ふむ、今の話をよく聞きたい。どういう質問だ?」

「いえ、新型のウイルスに人間が感染しているということは、一度はその人間が体内で対抗しようと戦っている状態ですよね。そこにマンドラゴラの薬が一瞬だけ最強のバフをかけてウイルスを倒す……とか?」


 大学の先生にバフとか言って大丈夫なのかな。

 でも、クアン先生は僕の話を遮ることなく最後まで聞いてくれた。そして軽く息を吐いてニッと笑った。


「最強のバフか。単純だが面白い発想だ。そして重要な点として体内で戦っている最中に投与されるという部分。これは専門家なら息を吸うように気が付く部分だが、クーは抜けていた。良い意見をありがとうだ柴崎青年!」


 そう言ってクアン先生はガッシリと握手をしてきた。


 ☆


「おかえりなさいです。おや、お昼は学食のカレーでも食べました?」

「え!? あ、口についてましたか」


 店に戻ろうと思ったら、クアン先生が学食を奢ってくれた。店主さんのご飯の方が美味しいのは当然だが、学食のカレーも美味しかった。

 何よりクアン先生はとても話やすく、僕の話にも全て答えてくれた。


「クアン先生に奢ってもらいました。あと、色々と褒めてくれました」

「それは良かったですね。クアン様は色々と物知りですから、話していて楽しい方です」

「物知り……いや、それだけではない気がします」


 なんというか、クアン先生は知っていることをひけらかす感じでは無かった。僕の話を全て聞いたうえで答えたし、相手を尊重する姿勢を持っている気がする。


「クアン様は会話中に様々なパターンを考えてから最適なルートを導きます。仮に間違った知識を相手が話した場合、クアン様は真っ先に否定ということはしません」

「え、間違っているのに?」

「はい。あの人の知識量は想像以上です。あらゆる文献から探って『そういう提唱が過去に誰が言ったが、これは数年後の誰が訂正した』と言います。つまり、相手を納得させつつ相手を立てる話をします」


 言われてみれば、クアン先生は僕の話を完全に否定しなかった。だから楽しく会話できていたのか。いや、僕が勝手に楽しんだだけで、クアン先生は楽しくなかったのでは?


「あまり気にしないでくださいね」

「え?」

「クアン様は会話と知識を好む悪魔です。おそらく柴崎様との会話も全力で楽しんでいましたよ」


 それは良かった。

 いや、そういえば良くない案件が一つあった。


「店主さん、そう言えば一つ文句がありました」

「え、何ですか!?」


「クアン先生とお隣さんってことは、毎晩クアン先生にご飯を作ってるんですか!? ずるい!」


 ……。


 わー。店主さんがまた冷たい目で見てくるー。


「こほん。クアン様は研究続きで帰ってくる日の方が少ないです。月に数回ご飯を作りますが、今月だけで言えば柴崎様の方がワタチのご飯を食べていますよ」


 なんと。僕はクアン先生よりもご飯を食べていたのか!


 ファンタジーのアイテムの中で植物は色々ありますが、ここで話してしまうとネタが無くなるので、お話に出た「マンドラゴラ」について、お話をして見ましょう。

 有名な話だと、土から出したマンドラゴラは大きな悲鳴を出すことで有名ですね。その音は耳を壊したり、精神を壊すというものですね。

 一説によるとモデルになった植物もあるらしく、それは無理に引き抜こうとすると根がブチブチとちぎれて、それが悲鳴に聞こえるとか。

 道具意外にもこういう「材料」のような物も今後出していけたらと思いますー

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