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「マリー、私決めたわ。」
専属侍女のマリーに、私ことミラージュ=ディオサは決意のこもった緑の瞳でこう言い放った。
「私、ディオサの理想の王子様になりますわ!」
その時のミラージュはここ最近のどこか沈んだ雰囲気もなく、美しい顔にはそれはそれは晴れやかな笑みが浮かんでいたとマリーはそう振り返る。
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「ミラージュ様、おっしゃっている意味がよくわからないのですが。この不肖マリーにもわかるようにご説明いただけませんでしょうか?」
いつもクールだが姫には甘いマリーが珍しく困惑の表情を浮かべている。
「いいこと、マリー。私ももう17じゃない?それなのに一向に縁談がまとまらないの!もう笑っちゃうくらいよ??いくら小国とはいえ他国との付き合いもあるし、有力な貴族家で未婚の方も婚約者もいない方もいるというのに。」
ミラージュは緩めにハーフアップにした銀色の髪を少し指に絡ませた。
「それにお姉様も16で嫁いでいかれたわ。私ももうそろそろかしら?そろそろお父様からお声がかかるかしら?と毎日ソワソワしていたの。なのに一向に何も起きなかったわ。本当になーーんにも!そしてついに先日聞いてしまったのよ。」
「何をですか?」
「私の嫁ぎ先、どこにもないんですって!!」
「は?私の世界一の姫様がですか?この世で1番尊くて優しくて美しい姫様がですよ。何かの間違いでは?はっ!素晴らしすぎて釣り合う相手がいないということでしょうか!?それなら分からなくも。。」
マリーがどこか違う世界に入ったようにブツブツと呟いている。
パンパン!
「マリーかえっていらっしゃい。」
彼女のミラージュへの賛辞はいつものことと慣れっこの本人が冷静に対処する。
「マリーいいこと、よくお聞きなさい。お父様がおっしゃっていたの。
『ミラージュの結婚だが、もう打つ手がない。心当たりは全てあたった。器量もよいのにあの身長さえなければ。。』ですって」
ミラージュは力なく笑ってそういった。
「私、自慢じゃないけれど容姿はそれなりじゃない?それに淑女教育も、果ては政治、経済、言語できることは全て学んで努力に努力を重ねたつもりなの。それが『背が高い』それだけで全て意味をなさなくなるなんてなんだか悲しくなってね。もういっそのこと修道院にでも入ろうかしら、と思ったの。」
長いまつげを落として悲しげな顔をした。
「でもね、よくよく考えたら身長一つで断りを入れてくるなんてなんて器の小さい人たちなのかしら、って。こんな器の小さい人たちのせいで私のすべてが否定されるなんてあっていいのかしら!?いやない!!って結論に至ったわけよ。」
「それはそうです。お嬢様はそのスラッとした身長も相まって最高の美人です。嫁にとれるなんて泣いて喜ぶべきです。」
「ありがとう。そこでね、あ、私、男なら問題ないんじゃない?そうだ、男になろう、と思ったわけよ。」
ニッコリと美しい笑みを浮かべてミラージュはマリーを見つめた。