第11話『魔天邂逅』
◆ ◆ ◆
「いました。やつです」
一時間ほど川の上流に向かって歩くと、大きな湖に行き着いた。
どうやら、この湖が『ヴァンの食らいつく川』の水源のようだ。
広さは学校の運動場ほど。水面は黒くよどみ、生物の棲んでいる様子は全くない。
湖岸の物陰に身を潜めながら、ホルガーが指し示した方向を観察する。
五十メートルほど先。神殿のような石造りの建物の中に、巨大なオオカミのような生き物が座り込んでいた。
毛皮を下から押し上げる重厚な筋肉。
ベルトのようなもので全身に纏った武具や防具の数々。
ランドルフだ。
こちらに背を向け、一心不乱になにかを食べているように見える。
「よし、じゃあ皆。これ食べて。食べ終わったらバフもよろしく」
俺はメニュー画面から、持ってきた料理を取り出すと、全員に配り、自分でも口にする。
『猪肉の燻製』『鹿肉の塩漬け』『賢者の蜜酒』『若返りの林檎』
一通り食べ終えると、メキメキと体の奥から力が湧いてくるのを感じた。
さらに『戦神の咆哮』で筋力と持久を底上げし、俺は『小妖精の帳』と『暗殺者の極意』を発動。気配を消してランドルフの背後に忍び寄った。
ミーナたちも、少し離れたところで『小妖精の帳』を使い、ついてきている。
デカい。あぐらをかいて地面に腰を下ろしているのに、それでも頭の位置が俺より二メートル以上高い。
真っ黒なゴワゴワした獣毛に、ところどころ稲妻のように白い毛並みが走っている。
俺はごくりと生唾を飲み込んだ。
攻撃を入れれば、もう後戻りできない。やつが死ぬか、俺たちが死ぬか。どちらかの結末が待ち受けている。
ちらっとミーナを振り返ると、彼女はコクリとうなずいた。
……やるしかないか。
俺は『瀟洒な双剣』を振りかぶり、渾身の『闇討ち《バックスタブ》』を決めようとして――。
「……あ?」
いきなりランドルフが鼻をひくつかせ始めたかと思うと、唐突にこちらを振り返ってきた。
「っ……!!」
金色の瞳孔が、しっかりと俺を捉えている。
「誰だてめえは?」
血まみれの口吻から、獣の唸り声を思わせる低い声が漏れ出る。
う、嘘だろ!? なんで気づかれたんだ? 匂いか? 『小妖精の帳』使用中なら、どんなに足音を立てても気づけないはずなのに!
だが、こうなっては仕方がない。『闇討ち《バックスタブ》』は中止だ。
俺はランドルフの質問には答えず、無言で『獣縛りの鉄鎖』を取り出し、使用した。
ネックレスのような細い鎖が、蛇を思わせる速さで伸び、ランドルフの全身を縛りつける。
「うおっ!?」
ランドルフが慌てて抵抗するが、鎖の効果は絶対だ。十五秒間、やつは決して身動きできない。
一瞬でランドルフを拘束した鎖が、床の石材に突き刺さって自らを固定すると同時に、俺は叫んだ。
「いくぞ!」
戦いが始まった。
俺は即座に『瓢風・六連星』を発動。やつの顔面に六連撃を叩き込む。
その間にミーナとホルガーが後ろに回り込み、脇腹を突き刺す『闇討ち《バックスタブ》』を放った。
「「『流血刃』!」」
クルトとミーナが武技で武器を強化し、左右からランドルフを滅多斬りにする。
『流血刃』の効果が付与された武器で与えた傷は治癒せず、傷口から血が流れ続ける。
ゲーム的には『出血状態』というスリップダメージを継続して与える状態異常として処理されるものだ。
「グオオオオ!」
俺たちに斬り刻まれながらもがいていたランドルフが、あっという間に鎖を引き千切って立ち上がった。
クソ、もう十五秒経ったのか。
やつのHPは一割ほどしか削れていない。
今みたいに好き放題殴れるタイミングは、あとはもうブレイク時だけ。
かなり長引きそうだ。
「なんだなんだ急に! びっくりするじゃねえかオイ! 戦うときははまず自分から名乗る! 常識だろうが!」
「貴様に名乗る名などない!」
ミーナがランドルフの軽口に言い返す。
ランドルフから一定の距離を取りつつ、隙あらば斬りかかれる間合いだ。
ランドルフはゴキゴキと首を鳴らし、尖った牙をむき出しにする。
「そう言うなよ。名前を知ってるやつの肉は旨味が違えんだ。特に女はいい。柔らかくて、うっすらと脂肪が乗ってて、最高だ。なあ、教えてくれよ女。お前の名を」
見れば、やつが食べ散らかした骨の中には、人間の頭蓋骨が大量に含まれていた。
業魔という生き物の生態は知っていたが、それでも嫌悪感は抑えられなかった。
ミーナが胸糞悪そうに吐き捨てる。
「貴様の食事に風味を添えてやる義理はない」
「……あ? 待てよ。お前、どっかで見たことあるぞ。さて、どこだったか……」
ミーナを見てなにかを思い出しかけているのか、ランドルフが考え込む仕草を見せる。
俺は好機と見て、一瞬で踏み込むと、片手剣・双剣専用武技『蜂針』を放った。
能動的に攻め込む技としては最速の刺突。ダメージこそ微小だが、ほぼノーリスクで撃てる武技だ。
だが。
キイン!
鋭い音とともに、俺の突きはやつの爪に弾かれた。
こちらを見もせず、人差し指一本でだ。
……マジかよ。業魔がパリィしてきやがった!
俺はその瞬間、ぞわっと血の気が引く感触がした。
こいつ、やっぱり強い。
「おお、そうだ! お前、ホッドミーミルのあたりで戦ったときの指揮官だろ? えらい勇ましい女がいると思ったんだ! ははは! やっと思い出した! 名前は……確かミーナだったな? そうだろう?」
「黙れ、馴れ馴れしく呼ぶな!」
ミーナが怒鳴る。
あのとき死んだ騎士の中に、彼女をそう呼ぶ者がいたのだろう。
こちらから攻撃するのは自殺行為だ。『蜂針』にすら反応された以上、パリィでカウンターをとる以外攻め筋はない。
俺は『挑発』を発動し、口を開いた。
「どうした? 時間稼ぎでもしたいのか? ぐだぐだと無駄口ばっかり叩いて。お仲間が助けに来るのでも待っているとか? 確かに五対一じゃちょっと不安だよな?」
ランドルフが俺の『挑発』に乗った。
「あ? バカかてめえ。五人で足りると思ってんのか? 俺は『六大魔天』が一人『病魔天』にして『咒爪のランドルフ』! てめえら全員、一時間後には俺の腹の中よ。ちっと肉をほぐして、歯ごたえよくしてやらあ――!」
手刀のごとく真っ直ぐに突き出された左の爪を、右の剣でパリィ。
ほとんど反射で『燕返し』を叩き込むと同時、今度は右手の引き裂きが来た。
速い。
「ぐっ……!」
パリィ失敗。なんとかガードはできたが、凄まじい膂力によって数メートル吹っ飛ばされる。
コンマ一秒しかない『燕返し』の後隙に差し込まれるとは。とんでもない技の回転速度だ。
「フミオ!」
「大丈夫! ちょっと焦っただけだ!」
左の手刀からの右の切り裂き。知っていたはずの連携なのに、つい手刀をパリィしてしまった。
あの技は予備動作を見切って位置取りで回避し、切り裂きにパリィするのが正解だ。
でも、確か手刀単発のモーションもこいつにはあったはず。見極めは難しい。やはり手刀はガード安定で立ち回るべきだろう。
「うらあっ!」
「っ!」
間髪入れずにランドルフの蹴りが来る。モーションの小さい直蹴り。それでも直撃すれば、腹をぶち抜かれそうな威力だ。
だが、これはなんとかパリィ。単発攻撃なのですかさず『燕返し』
ガチンッ!
今度は噛みつきだ。岩をも砕く強靭な顎が、俺の目の前で閉じられる。上体をスウェイして回避した。
弱点の喉笛を、双剣を交差させ、ハサミのようにして斬りつける。
クリティカルヒット。鮮血が噴き出した。
「げえっ! いってえな、てめえ!」
人体であれば急所を裂かれたはずなのに、ランドルフは悪態をつくだけで済ませた。
クソ、化け物め。
俺はバックステップでランドルフから離れ、呼吸を整える。
しかし、一呼吸置く間もなく、ランドルフが追撃してきた。
ジャブのような二連の爪撃を連続でパリィ。
右手ですくい上げる斬り上げは屈んで避ける。
間髪入れずに襲い来る鷲掴み攻撃をパリィし、『燕返し』で一閃。
今のところは全てパターン通り。この調子ならさばき切れる。
「ハハッハハハハ! 面白え! 俺の爪を弾くたぁ、いい目してやがる! いや、目のよさだけじゃねえ。全部読まれてるみてえだ! なら――こいつはどうだ!?」
超高速の爪連打。降り注ぐナイフのような殺意の嵐をいなし続ける。とても反撃に転じる余裕などない。
俺のスタミナが切れるのを待つつもりか。
俺一人ならこれで詰んでいた。
だが、俺は一人じゃない。
「交代だ、フミオ!」
ミーナの剣が弧を描く。ランドルフの右脇が斬り裂かれ、だらんと右腕が垂れ下がった。
「おっと、そういやお前もいたなミーナ。忘れてたぜ!」
「二度と思い出せなくしてやる!」
ミーナの『挑発』でランドルフがターゲットを変更する。
作戦にはなかったが、臨機応変な対応には感謝だ。
ミーナがやつを引き付けてくれている間に、俺は手早くバフをかけ直し、休息をとってスタミナを回復した。
タンクはローテーションで受け持つ必要がありそうだ。単独で務めるには無理がある。
「オラオラオラァッ!」
「ぬううう――!」
ランドルフの猛攻を、剣一本でさばくミーナ。さすがのポテンシャルだ。
「違えなあミーナ! この間とは大違いだ! 剣のキレが別モンだ! あの小僧もだ! お前ら二人は別格! この俺が直々に調理するにふさわしい肉だ! だがな――」
そこでランドルフは言葉を切り、ぐりんと身体をひねり、背後を向いた。
ちょうど『闇討ち《バックスタブ》』を入れようとしていたクルトが凍りつく。
「てめえらは邪魔だ!」
ひねる勢いのまま、強烈な回し蹴りがクルトの脇腹に突き刺さる。
地面に叩きつけられたクルトが、ゴロゴロと転がって壁にぶつかって止まった。
うつ伏せに倒れたクルトは身じろぎ一つしない。
腹の傷からはじわりと血がにじみ出ている。
さらに、見えている至るところの皮膚に、獣の噛み跡の紋様が浮かび始めた。
『呪毒状態』だ。早く回復薬を飲ませなければ、命を落としてしまう。
「クルト――!」
エーリカの悲痛な叫び声。
俺は息を呑んだ。
バカな。ミーナの『挑発』が効いていたはずなのに、別の相手に攻撃するなんて。
「ハハハハハ! 完全に油断してただろ! 前にも戦ったんだよ、そういう妙な技使うやつとなあ! 別のやつを殴りてえのになぜかそいつにだけ意識が吸い寄せられて、気持ち悪いったらなかったぜ」
得意げに語るランドルフ。
武技に抵抗されるのは、完全に想定外だ。
俺たちの戦法は根底から覆されてしまったと言ってもいい。
「やめろ! お前の相手は私だ!」
「そいつを決めるのは俺だ!」
ミーナの『挑発』を無視し、ランドルフが一直線にエーリカを狙う。
「よくも、よくもクルトを……!」
「おーおー可愛いねえ、青いねえ! 嫌いじゃねえ! 若い肉は舌触りがいい! ゴミみてえなガキでも肉だけは美味えからなあ!」
「うわああああ――!」
「やめろ、エーリカ!」
ミーナの制止も聞かず、エーリカが激高して大上段に構えた剣を乱暴に振り下ろす。
だが、あっさりとランドルフにパリィされた。
「てめえは踊り食いだ。俺が食うまで死ぬんじゃねえぞ!」
ランドルフの拳が、エーリカのみぞおちをえぐった。
野球のライナーのような勢いで吹き飛ばされるエーリカ。
その身体が柱に激突する前に、ホルガーが割り込んで受け止めた。
「女子供にも容赦なしか、人狼!」
「ジジイはいらねえなあ。肉は臭えし筋張って不味い!」
「そう言うな! 一口味わってみるがいい、我が剣の切れ味、まだまだ捨てたものではない!」
ミーナを床に横たえ、ランドルフに斬りかかるホルガー。
しかし、難なくランドルフは剣の軌道に爪を合わせる。
あわやエーリカの二の舞いかと思ったそのとき、ホルガーの剣筋が変化した。
パキン!
逆にランドルフの爪をパリィし、ホルガーは『燕返し』でランドルフの右手首を切り落とした。
長年の経験と鍛錬が為せる技。
痛手を負わされたはずのランドルフだったが、焦る様子もなく哄笑した。
すでに右手首は再生している。
「なんだ、案外楽しめそうじゃねえかジジイ!」
「団長殿! フミオ殿! ここは私にお任せし、撤退を!」
「そうはいくか!」
「大局を見据えてください! もはや此奴をこの場で討伐するのは不可能! お二人が生き延びるだけでも万々歳とお考えを!」
「くっ……!」
苦渋の決断を迫られ、ミーナが歯噛みする。
当初の作戦は瓦解し、クルトとエーリカは戦闘不能。
ホルガーの言う通り、一度退却して体勢を立て直すのが、常道なのだろう。
だが、それはホルガーたちを見捨てるということにほかならない。
「おいおいそりゃあねえだろ! 仲間置いて逃げるなんてよ! 心が痛むだろう! 良心が傷つくだろう!? そうだよなあ、そうだよなあ! ここで皆まとめて俺に食われるのが絆ってもんだよなあ!」
裂けんばかりに口角を吊り上げ、あざ笑うランドルフの身体が大きく膨張する。
「『千疋狼』!」
ランドルフの身体から漆黒の闇が溢れ出したかと思うと、ぬるりと立ち上がって二足歩行のオオカミの姿をとる。
その数、十数体。
やつは力を分割し、自らの分身を作り出したのだ。
本来なら、体力が半分以下にならないと使わないはずの魔法。
しかも、一体しか出してこないはずの分身をだ。
今のランドルフの体力は――まだ八割強。
だが、俺は諦めなかった。
いろいろと想定外のことはあったが、依然『聖銀のタリスマン』の特効は有効だ。攻撃が当たりさえすれば、まだなんとかなる。
「くっ……分身を出すとは聞いていたが、これほどの数とは……!」
「いや、いいんだミーナ! 大量に出してくれたなら、むしろ試せるバグがある《・・・・・・・・・・・》! こっちだ、ウスノロ!」
『挑発』を発動すると、分身たちが一斉に俺に襲いかかってきた。
到底捌ききれない数だが、俺はミーナに目配せを送る。
「ミーナ! ホルガーさん! 『挑発』だ!」
「……! わかった! お前たちの相手は私だ!」
「いや、私が相手をしよう!」
ミーナとホルガーが『挑発』を使用した途端、分身たちは奇妙な体勢でビキッと硬直した。
狙い通りだ。『挑発』は複数人で同時に使うと敵の挙動がバグる。さらに、敵は多ければ多いほどバグりやすい。
「なんだあ!? 一体どうなってやがる!」
分身に俺たちの相手を任せ、高みの見物を決め込んでいたランドルフが喚く。
その隙を見逃さなかった。
武技発動。
風のような速さで分身たちの間を駆け抜け、すれ違いざまに斬撃を食らわせる。
一秒とかからずに十三体を斬り捨て、停止してから数瞬後に、風鳴りのような音が鳴った。
『凄風・雪風巻』
背後をとっている敵が複数体いるときに使用できる大技だ。
スタミナ消費は激しいが、こういう強めの雑魚を一気に処理する場合に重宝する。
本来は『小妖精の帳』と組み合わせて気配を消してから武技だが、今回はミーナとホルガーがターゲットをとってくれていたのでその必要がなかった。
「ぐううっ……! 面白くねえ、また妙な技を使いやがって!」
分身を倒され、ダメージがフィードバックされたのか、ランドルフが苦しげにうめく。
体力もかなり削れ、半分以下にまで減っていた。
スタミナも残りわずか。
ここでブレイクをとって畳み掛ければ――。
「勝てる! 勝てるぞ!」
「ふざけるなああああ! この俺がてめえらなんぞに負けるはずがあるかああああ!」
「いいや、貴様の負けだランドルフ! 貴様が我が父を食らったその日から、貴様の敗北は決まっていた!」
俺に飛びかかってきたランドルフの爪撃をミーナがパリィ。
俺は『小妖精の帳』を張って背後に回り、『闇討ち《バックスタブ》』で脊椎を突き刺す。
ブレイク。
ガラスの破砕音。がっくりと膝を折ったランドルフの前で、ミーナが大きく剣を振りかぶった。
「今こそ父の無念、民草の無念、晴らしてみせる!」
「ちくしょおおお――!」
ブレイク時限定武技『霹靂・鬼矢柄』
三秒ほどの――『アスガルド』のゲームスピードからすれば気が遠くなるほど長い――溜め時間と引き換えに、筋力100%アップのバフをかけ、全力の斬撃を見舞う必殺の技。
振り下ろされた刃先はランドルフの太い首を一太刀で斬り落とし、大地に巨大なクレーターを築く。
ゴトン、と転がったランドルフの頭部を見ながら、しばらくミーナが肩を上下させる。
「……本当に、やったのか。やつを」
「え、ええ……首を落とせば、大抵の業魔は死に至るかと……」
「そうか……復讐とはもっと爽快なものと想像していたが、しかし……」
激闘の末の幕切れだ。すぐには実感が湧かないものだろう。
俺は緊張を解くため、努めて笑顔を作ろうとしたが、頬が引きつって上手く動かない。
「……?」
何かを見落としている気がする。
やつの言動の違和感。ランドルフが『挑発』を知っていた理由。やつは以前に『挑発』の使い手と戦ったことがあった。可能性があるとしたら誰だ?
不気味なほどの速度で思考が回る。まだ気を抜くなと本能が叫ぶ。
戦いはまだ終わっていない、と。
この世界で起きた出来事。王都決戦。その結末。あの戦いで斃れたのは誰だった?『不死身の騎士』はなぜ死んだ《・・・・・・・・・・・・》?
ランドルフの能力はなんだったか。『呪毒状態』を付与する爪。分身。あと一つ。
――盗み。
その瞬間、俺は全身が総毛立った。たどり着いた結論の恐ろしさに血が凍りついた。
そんなはずは――いや、でもほかにありえない。だが、もしそうだとしたら――。
「フ、ハ、フハハハハハハ!」
首だけになったランドルフが、雷鳴のような爆笑を轟かせる。
ぎょっとしたミーナだったが、すぐに武技を発動する。
『瓢風・六連星』
ランドルフの頭は粉微塵に砕け散り、原型すら留めなくなった。
「チッ、まだ息があったのか……」
「違う、ミーナ! 息があるんじゃない! 今、息を吹き返したんだ《・・・・・・・・・》!」
「なにを言っている。やつは完全に……」
「ほう? お前やっぱり勘がいいな。面白えじゃねえか」
ボロッとランドルフの肉体が崩れたかと思うと、神殿の中央に魔法陣のようなものが展開した。
一瞬、世界が静寂に包まれる。
直後、陣の中心に、元通りになったランドルフが再構成される。