鬼
私は帰宅をするとー
母親へと電話をしていた。
昼間に見た幻が何だったのかは解らない。
私が見た幻はー
ドラマ、映画、アニメ、漫画、小説。
そういった世界で起こる他人事の様な世界だ。
安定した世界で、あの様な事等、起こり得る筈は無い。
幼少の頃。
私達は【かくれんぼ】や【鬼ごっこ】をしていた。
子供は本能の儘ままに行動するのだと聞いたことがある。
もしかしたらー
人や鬼は容易に入れ替わってしまうのだとー。
子供ながらに理解していたのだろうか…。
考えれば考える程に頭は混乱した。
だからなのか…。
母親の声が無性に聞きたいと思った。
だから私は母親に電話をしたのだ。
「あれ?秋穂?どうしたの?」
スマホから聞こえる優しい声。
「具合でも悪いの?」
「何でもないよ。ただ声が聞きたくなっただけ。」
「それならいいんだけど…。」
ーあ。そうだ。
そう言葉を発しー
ガサゴソと何かを探しているらしかった。
クチュクチュと耳に五月蝿いノイズが混じる。
クチャクチャ。
グチュグチュ。
「美味しいお肉を見つけたのよ。また一緒に食べましょうね。」
母親はー
そう云うとー
ゲラゲラと嗤った。
あぁ…。
スマホの向こう側に居る人はー
本当に私の母親なのだろうか?
そんな言葉が脳裏を過りー
私は少しだけ吐いてしまった。