かくれんぼを考察する。
「あ…。ということは…。」
御子神は何かに気づいたのかー
吐息の様に艶かしい声を漏らした。
また、新堂は我に返る。
「【かくれんぼ】には4種類の考え方が出来ますよね?」
御子神はー
また同意を求めるように新堂を見つめ、声をかけた。
「隠れるのは子供なんですよ。探すのは親とされてる地域もある。それだと単純に子供を探す親。親に触れられて子供は親になる。何か微笑ましいですね…。」
御子神は右手の人差し指を立てながら、無邪気に笑う。
ズキッ。鈍い痛みが新堂を襲う。
「隠れるのは子供。探すのは鬼。隠れた子供を探して鬼が見つける。鬼は人を食らう。食われた子供が怨霊となって鬼になる。子供を食らった鬼は、子供に化けて罪の意識から逃げ隠れる。」
御子神は右手の人差し指と中指を立てた。
ズキッ。ドクドクと血流に合わせて痛む。
「隠れるのは子供。隠の文字は鬼の語源。ということは…。隠れている子供こそが鬼。見つけるのが親。死んでしまった我が子を探して、もう1度触れてみたい…。そう思う親。でも触れてしまえば終わり…。親は食われて鬼になる。子供の鬼は親に化け、やり直そうとして隠れている鬼を探す。」
御子神は右手の人差し指、中指、薬指を立てる。
ズキッ。頭痛は世界を歪ませる。
そしてー。
御子神はタメ息を吐いた。
右手の人差し指、中指、薬指、小指を立ててー
「隠れている子供は鬼。探している親も鬼。親の鬼は隠れている子供が弱るのを待って、子供の鬼は探し疲れる親を待って…。お互いがお互いを、どう食らおうかと思案している…。」
とー
其処まで言葉を置くと…。
「それだと救いがありませんね…。」
と続けた。
「言葉遊びとしては良く出来ているとは思うのですけれども…。」
御子神の言葉は新堂には届いてはいない。
ズキッ。
ズキ。ズキ。鈍い痛みが心音と重なり広がる。
新堂はー
瞳を閉じる。
「もういいかい?」
幻聴が、聞こえる。
「もういいかい?」
何度も何度も…。
「まあだだよ。」
新堂は言葉を飲み込む…。
ー私が見る夢はなんだっけ?
【かくれんぼ】の夢には違いないのだろうけど…。
ーどんな夢だっけ?
思い出そうとしている夢がー
少しずつ頭を垂れていくのを感じる。
頭痛は世界を歪める。脳裏に刻まれた言葉がー
思い出そうとしている夢に重なっていく。
「もういいかい?」
「もういいよ…。」
新堂は蚊の啼くような小さな声で呟いた。