鬼とは?
「あ…。知ってますか?鬼って女性なのですよ…。」
御子神は唐突に言葉を発した。
「えっ?」
新堂はまた予想していなかった言葉を聞いた。
「女性?」
新堂が思い描く鬼は屈強な体躯の男性だったのだ。
御子神は淡々と言葉を並べる。
「鬼の形態の歴史を辿るとですね。初期の鬼は女性の姿をしているのですよ。『源氏物語』にも鬼が出てきますよね。鬼と云っても怨霊なのですけれど、その姿はやっぱり女性の姿なのです。私には、よく解らないのですけれど…。恋慕の情が女性を鬼に変えてしまうのでしょうか…。憎しみや嫉妬の念が満ちて女性が鬼に変化するのはよく聞きますよね。想像しやすいのは、丑の刻参りをする白装束を纏った女性。そして「般若の面」って感じでしょうか?」
また御子神は同意を求めるかの様な眼差しでー
新堂を見つめている。
新堂の脳裏にはー
盤若の面が浮かんでいる。
ズキッ。
新堂の頭に鈍い痛みがはしる。
血流に合わせてドクドクと痛みが広がる。
「もういいかい?」
幻聴の様なモノが頭に響く。
「まぁだだよ…。」
新堂は言葉を飲み込んだ。
御子神はベッドに寝転がる。
天井を見上げて言葉を奏でる。
「鬼と呼ばれるモノが人の内に在るのなら…。本来の鬼は人の姿をしていて見分けがつかないのでしょうか?あ…。そうでした。忘れてました。鬼は人に化ける事も出来るのでした。そうだとしたのなら…。見分けはつきませんよね?」