鬼について
それから、御子神は体育座りをしながら天井を見上げてー
「鬼は異界の存在との考えもあるのです。」
と言葉を発した。
「異界?それはどういう意味?」
新堂は御子神が語る話に興味があった。それは新堂の過去に関係している。新堂の父親は仕事の関係で国外にいる事が多かった。
新堂が小学校に入る少し前の事。新堂は父親に会うために、国外へ向かっていた。その時の事だ。乗っていた飛行機が不運にも墜落した。乗っていた乗客120人中78人は帰らぬ人となった。
だが新堂は母親と共に奇跡的に無傷で生還したのだった。
しかし新堂自身も新堂の母親もー
当時の記憶は全くと云っていいほどに無い。
恐ろしい経験を無意識に忘れようとして無くなったの…。
だから…。深く考えないで良いのよー
と母親は新堂に幾度となく言い聞かせていた。
きっとそれ以降だとは思うのだが…。
新堂は同じ夢をよく見る。
見慣れない風景の中…。
新堂は何かに見つからない様に隠れている…。
そんな夢だった。
そうだ。
新堂は夢で【かくれんぼ】をしているのだ。
「そうですねぇ。」
御子神の声で新堂は我に返った。
「要は安定した此方の世界に侵食する異界の存在。鬼のイメージが数多にあるのは、その時代や社会によって異界のイメージが変化するからでしょうね…。でもです。でもですよ…。」
御子神は人差し指を左右に振るとー
「どの時代にも鬼に共通しているモノがあるのです。それはですね…。」
と続けた。
そしてー
両の手の人差し指を頭に添えてー
ー鬼は人に危害を加えて、人を食らうのですよ…。
と言った。