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62話 シュリの選択、皆の最善

「ちょっとしたバカンスもらう感じだよ、ね?」

「うん、そうだね」

「まー、そっちは新婚になるわけだし、二人の時間あって丁度よくない?」

「あ、確かに」

「え?!」


 あからさまに動揺するサリュを無視して、シュリとの感傷的な別れを堪能する。


「新婚旅行明けは、お姑さんと同居ということね」

「そゆこと」

「ま、待ちなさい、それは」

「黙ってて、お姑さん」

「はは、サリュがお姑さんかよ。うける」


 立場変わってるしとシュリが笑う。


「言うなら、そっちがいちゃついてくれれば、俺達より帰りやすくなるよ?」

「はい?!」

「なにそれ詳しく」


 私の精霊でもあるサリュが、私とのつながりをより深くしたら、繋ぎの媒体として強さがあがると。

 それはもう存分にいちゃつけということだね。


「なるほど。よしサリュ、ひとまずキスしよう」

「馬鹿な事を言わんで下さい!」

「それ以上も可ー」

「シュリエ!」

「なに、サリュ。二人に帰ってきてほしくないわけ?」

「そ、そういうわけでは、」


 手っ取り早く、帰りの安全な道を作れるなら、やる以外の選択肢ないと思うけど。


「ふーん」

「まあサリュ、独占欲強そうだしねー」

「ならば、一日最低一回はキスしてやる」

「そういう事を軽々しく言うものではないと言っているのです!」


 顔赤くして言うものじゃないよ。

 サリュってば乙女だよねえ。


「ま、ようは俺とトレゾールに気兼ねなく、新婚生活送ってねってこと」

「オッケー」

「あ、貴方達は……」


 呆れている。

 もう充分真面目したからいいじゃん。


「あ、私も少しは何かしてみようかな」

「何かとは?」

「んー、対話?」

「誰と」


 サリュの言葉にシュリが笑う。

 残ってる人達のこと考えてよ。


「残った聖女と精霊と魔がいるでしょ」


 まあ、魔は王族達さえいなければ、そのうち消えていくだろう。

 あれは復讐の対象がいないと成立しない存在だから。


「せめて念仏でも唱える?」

「また訳の分からない事を」


 知ってる癖に。

 鍵のとこの血筋が入ってるなら、あちらの世界の言葉だって少なからず分かるはず。

 敢えてなかったことにしているのか、覚える気がないのか。


「今度お手本を見せてあげるよ」

「はあ」

「後は残る聖女と精霊かな」


 全部が全部この結果を認めているわけじゃないし、大陸のほとんどもってかれるから、こちらの受けるダメージ分はこちらで解消していかないとね。

 それが新婚旅行というのも色気ないけど。


「本当、変わらないよねー。まあ逆に安心したけど」


 私とサリュをさして笑う。

 そういえば、私もサリュも、お互いの想いを伝えた割には、えらくいつも通りだ。

 特に隣の通常運行塩対応は通常運行すぎ。

 少しだけ柔らかくなったかな程度で。


「俺もあっちで王族達がどうするか、見届けてから戻ってくるよ」

「わかった、約束」

「ん」


 そして次に別れを告げるのは、他の精霊達だ。

 シュリとトレゾールのことが最初だったから、他の子の選択には、そこまで驚かなくてすんだけど。


「俺達もそれぞれ要所にいかせてもらうわ」


 外周の聖女の中で繋ぎになる者の代わりに、あいた拠点を借りるらしい。

 さっきシュリの言ってたギフトとしての力を外側から使うということだ。

 外からも次元繋ぎの作用を施し、あっちとこっちの繋がりの媒体にもなる。

 幅広く内周を囲む形で存在することで、次元の切れ目自体に作用させ、より帰りやすくなると。

 ちょっと皆、頭良すぎ。優秀すぎじゃない?


「まあ、これが俺達の出来る最善だな。魔の対応も出来る」

「残った大陸も荒らされずにすむしね」

「このままだと、力の行き先がない魔の暴走を招くからな。それこそ残る聖女が全滅しかねんさ」


 残る聖女と精霊だけでも対応は出来るだろう。

 けど、その中でも、きちんと皆話し合って、この形を持ってきたのがよくわかる。


「皆やるの」


 頷く面々。

 やりたいことを決めた皆の瞳は揺らぎなくしっかりしていた。

 ここまでくるとシュリ同様、快く見送るしかない。

 と、その中でオールが私とサリュを交互に見ながら、最後私を見てきいてきた。


「金の剣は」

「粉々にした」


 オールが珍しく少し目を開く。

 どうやらやりすぎたらしい。

 折るぐらいで留めておくものだったかな?


「そうか。あの剣に全てがあったんだが……」

「ん?」


 オールが金の剣の記憶を見た時、師匠とパラの考えを知ったらしい。

 本来師匠は次元繋ぎの役目を担うつもりでいたということをオールは語った。


「そう」


 師匠が自ら死を選んだこととは別問題。

 それでも師匠が私達のことを案じてくれているのだけはよくわかった。


「師匠ってば、身内に甘いなあ」


 それでも、世話役をサリュにするところは、聖女らしいというべきなのか。

 いや、聖女の中で浮いてた私を、見習いとして引き取ったのは、師匠の意志だと思う。

 決してサリュがいたからとか、ギフトと鍵の覚醒とか師匠は分かっていたけど、考慮していない。

 そういうことをオールが語らなかったということは、それが真実だ。


「ありがとね、オール」

「話さなくても、よかった気もするが」

「いいんだよ、充分助かった」


 ふと皆の行くという言葉の中で気づく。


「ちょ、まち」

「どうしたんです」

「フォンちゃんも一人で行くわけ?!」


 そりゃちっちゃい系は割と多いけど、自立はできる。

 けど、フォンちゃんはさすがに厳しくない?

 幼女よ?


「なんだ、気づいたか」

「ルル……お母さんは許しませんよ」

「いつから母親になったんだよ。しゃーねーな、フォンセ」

「ん」

「見せてやれ」


 フォンちゃんが、もう一度返事をすると、マジックショーの如くフォンちゃんが大きくなった。

 あ、成長した。

 年齢的にフルールぐらいにはなったぞ。


「な、なんてことだ」

「エクラ?」


 膝から崩れ落ちる私を見て、サリュが残念そうに名前を呼ぶ。


「フォンちゃんは! 幼女だから! いいんだよ!」

「貴方少しは真面目にしたらどうです」

「幼女がいいんだよおおおお!!」

「だとよ」


 ルルがそう言うと、フォンちゃんはすぐに幼女に戻った。

 思わず抱きしめた。やはり幼女でないと。


「分かっただろ? 俺達精霊は見た目年齢に左右されねえんだよ。他の奴らだって出来るぞ?」

「ということは、全員幼女化も」

「論点はそこではありません」


 落ち着きなさいとサリュに窘められた。

 お姑さんはお姑さんだった。

 少しくらい想いの通じ合った恋人とか夫婦な雰囲気がほしい。

たくさんの小説の中からお読み頂きありがとうございます。

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