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19話 何ハラと呼べばいい

「主、これは私が引き起こした問題です」

「違うよ。サリュはやってないって言ったでしょ」

「いいえ、事実私はあの人を」

「はあ? まだ自分のせいとか言ってるわけ?」


 ぐっとサリュが言葉を飲んだ。

 言ってはいけない事を言ったと思っている。

 だってそう、それは金星観測タイムで語った事だ。

 自分のせいにするなと確かに言った。御先祖様の例え話までしたやつだ。


「起こるべくして起こる事もあるんだよ。それはただ起きただけ。誰のせいでもない」

「主……」


 眉根を寄せるサリュ。

 実際は違うけど、なんだか今すぐにも泣きそうな気がした。そう乗り越えられているものではないことを悟る。


「面白い事を言うね」


 一人の大聖女様が笑う。

 さすがエクラとも。

 私の何を知っているのと思ったけど、大聖女は脳内全部見えてるしね。

 ここで少し会話しただけで、もうお友達だというタイプなのかもしれないしね、大聖女様々ってば。


「精霊がそんなにも大事かね」

「はい」


 その言葉に二人ほど、満足そうに頷いた。


「エクラ・ヴェリテなら問題ないだろう」

「おや、随分私の評価高いですね」

「お前だからこそ出来る事がある。お前にしか出来ないという意味でもあるが」

「もっと簡単な言葉の応酬でお願いします」


 難しい言葉使いやめてほしい。

 わかりやすく、万人に伝わるやり方で頼みたい。

 もっと言うなら、ほのめかす系はやめて。


「ただでさえ碧眼を有したが為に、聖女の中では異端だったのに、奇妙な縁を持ったね」

「え、急なディスりですか?」

「しかしエクラ・ヴェリテが碧眼で生まれるのは必然であったろう」

「確かに」

「はい?」


 外見に関してディスられるのが決定項だったってこと? 最悪じゃんか。

 たしかに聖女の中に碧眼はいない。私だけだ。

 その瞳が異端だというのは、周囲の聖女のひそひそでよく知っていた。

 見習い時に師匠にその理由をきいてみたことはあるけど、その内分かると話を逸らされた事がいい証明だ。


「主の瞳の色が罪だと言うのですか」


 サリュが大聖女に対して食って掛かるような言葉の使い方をしてきた。

 どういうこと。大聖女にたてつくって。そういうキャラじゃないでしょ。


「はは、罪ときたか!」


 一人の大聖女様のツボに入ったらしい。

 盛大に笑われた。

 サリュは無表情に近い中に僅かに眉を顰めている。


「まあ捉えようによっては、罪の証なのかもしれないねえ」

「中二っぽい発言面白いから良しですけど、私を犯罪者にするのやめてもらえます?」


 私の発言にもう一人の大聖女がくつくつ笑った。

 さっきから面白い事を言ってるつもりじゃないのに。

 笑いの場にするなら、もっとネタになること言ってよ。乗るから。


「お前は本当に学がないな」

「全部見えてる大聖女様達みたく、なんでも察せるわけじゃないんですよ?」

「まあこの話はおいおいというやつだな」

「え?」

「またここに来ることになる。その時に話す事になるさ」


 あ、予言入った。

 でもサリュの件がある以上、定期報告になるのは目に見えている。

 他聖女へのパフォーマンスで、きちんとやってますっていうのを報告し、それなりの小言をもらってる体にするなら、この一回で終えるのは効果が得られないだろうから。


「ああ、ハラスメントはないと言ったが、ちょっとした試練はありそうだね」

「ちょ、これ以上の予言やめてもらえます?」


 大聖女の予言は大体当たり、というか確定事項だ。勘弁してほしい。

 これだから見える人達の力ときたら。


「死にはしないよ」

「ちょ、言い方」


 全く、大聖女には困らされたものよ。

 死にはしなくても大変な目には誰だって遭いたくないぞ。ドMじゃない限りは。


「大聖女……プリマヴェーラ」


 ふと脈絡なく、サリュがぽつりと呟いた。

 視線は一人の大聖女をとらえ、少しぼんやりした様子でかの人の名を呼んだ。

 てか、知っていたんだ、大聖女の名前。

 熟練聖女クラスにならないと知る事はないはずの大聖女の名前。

 あ、師匠のとこにいたからかな?

 そんなサリュに呼ばれた大聖女は応えた。


「どうした、水の精霊」


 楽しそうに笑う。

 サリュは自分の口から紡がれた大聖女の名にはたと気づいて口元を覆った。


「いえ、失礼、しました」

「ふむ、面白くなってきたね……いい事を教えてやろう」

「え?」

「お前は飛べるよ。いつでもね」

「……」


 大聖女様ったら、そういう電波発言はサリュにはだめ。ドン引きしちゃうから!

 事実サリュの顔色が悪いぞ、これはあれだ引いている。

 やばいやつだ。


「あ、そしたら、そろそろ失礼しようかなー? そうしましょう、そうします!」

「お前は少し緊張感を持った方が良い」

「ご意見慎んで承ります! ありがとうございましたー!」


 なんか聞いたことあるような台詞だったけど適当に流した。

 サリュの手を取り引けば、彼は抵抗なく素直についてきて、ほっとしつつも、なんだかもやっと感を抱えて大聖女達の元を後にする。

 何のために呼ばれたのか。

 あ、やっぱりこれがハラスメントなんじゃないの?

 意味わからない事ばかり投げかけられて疲れさせるだけのハラスメント。

 何ハラと呼べばいいの。

たくさんの小説の中からお読み頂きありがとうございます。


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