表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

36/41

35話 地獄

  01



 弟から渡されたスペアキーで実家に戻ると、リビングには数ヶ月前と変わらない母さんがいた。相変わらず無表情でテレビを見ていたが、俺が帰ってきたことがわかると目を真っ赤にして涙を流していた。







 「……おかえり、桜」







 十年ぶりに母さんに抱擁された俺はつられて涙を流してしまった。……ああ、俺はなんて親不孝者なんだろう。







 「今まで連絡してこなくてごめんなさい……」







 「いいの、桜が幸せなら私は別にいいのよ。ちゃんとわかってもらえたら」





 玄関の外で冬雪が待っていることを告げると、驚きつつも彼女が出来たことを祝福してくれた。俺は涙を拭き、真っ青に晴れた青空を見てため息が零れた。

 ずっと下を向いて歩いてきた俺にとって青空は新鮮だった。冬雪のおかげで人に想いを告げることの大切さを知った俺の視界は晴れていた。曇りなどなく快晴だ。







 「初めまして、西ノ宮冬雪と申します。お、お母様」





 母さんを前にして緊張しながらも自己紹介をする冬雪は見てるだけで可愛かった。それは母さんも同じだったのか、冬雪を実の娘のように可愛がってくれた。





 「え、もうすぐ帰っちゃうの? 泊まっていけばいいのに」







 「これ以上甘えてしまうのは……」







 俺が久しぶりに帰ってきたのが嬉しいのか、母さんは腕にふるいをかけて豪勢な料理を作ってくれた。自分で作る料理も美味しいがやっぱり家庭の味が一番だ。





 「母さんは結構しぶといから音を上げるまでずっと言うぞ。だから観念するんだな、冬雪」







 「わかりました……お言葉に甘えてお泊まりします」







 後から帰ってきたナツキは冬雪が家に泊まることを知ると変によそよそしくなった。母さんは俺が女装してメイド兼ボディーガードをしていることを知っても特に何も言わなかった、言及されることを怖がってた俺はバカみたいだ。







  02





 俺は母さんたちにデザートを買いにいくと言い、家を出た。近くに人がいないことを確認しつつ、ずっと俺たちをストーキングしていた奴を人が隠れられるサイズの草むらから引きずり出した。







 「あらら、見つかっちゃったか」





 「……東雲!?」







 ストーキングしていた相手は冬雪たち姉妹を監視していた東雲だった。







 「何のようだよ、今俺は忙しいんだ」







 「学校の外だから性別隠してないんだね。別に良いけどさ、これ見てもらっていい?」







 東雲が俺の性別に気づいていたことに驚きつつも、彼女から手渡された手紙を見る。差し出し人は西ノ宮……才蔵!? 西ノ宮才蔵は冬雪たちの実の祖父、だとすると手紙の内容は一体なんだろうか。イヤな予感がしつつも、読んでみると想像以上のことが書かれていて思わず頭を抱える。





 「今度は現当主のメイド……東雲さんと戦わなきゃいけないんだな」







 「あまり驚いてないんだね。ちょっと残念、もう少し狼狽えて欲しかったけど」





 まるで俺と戦うことを喜んでいると言わんばかりに東雲は表情を緩ませていた。





 「もっと関わりがあったら狼狽えていたかもな。……あまり気分は良くないから早く帰ってくれ」





 姉妹同士で荒らう継承戦がようやく終わり、冬雪に笑顔が戻ったのにまた西ノ宮家は娘を曇らせる気かと思うと腸が煮えくり返る。

 東雲は半笑いで俺との別れを告げ、帰っていった。明日……冬雪に伝えるしかない、今は辞めとこう。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ