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24話「不穏」

  01



 色々とあった夏休みは終わりを告げ、二学期が始まりを告げた。冬雪やアキ、莉奈と共に休みを満喫したせいか身体中が日焼けしていた。……万が一日焼けしている場所を見られたらお終いだ。





 「おーい、冬雪」





 俺は一学期と同じように自分の身支度を終えて、冬雪の部屋で朝ごはんを準備しようとしたのだが……





 「ちょ、ちょっと待ってくださいね!」





 インターホン越しでもわかるぐらい、何故か冬雪は俺が来たことで慌てていた。いつもなら自分の身支度は既に終えて、玄関の扉を開けるのに今日に限っては想定していた時間を軽く超えていた。夏休み明けだから寝ぼけているのか?



 「お、お待たせしました! ハァハァ……」



 いつもの冬雪なら自分の身支度を終えた後に俺に髪の手入れをさせるのに、今日は自分で準備したのがわかるぐらい髪にツヤが出ていた。

 だが、肝心なところでおっちょこちょいが出てしまうのが冬雪の良いところだ。しかし、それは場合にもよる。今日の冬雪さんは余程焦ったのか、肩から下着が見えていた。





 「……冬雪、下着見えてるから」





 「すいません! 今治しますね!」





 顔を真っ赤にしながら、冬雪は服の位置を戻した。どうもあれ以来、冬雪と会話するのが恥ずかしくなってくる。それは冬雪も同じなのか、妙に態度がよそよそしい。

 朝ごはんの準備をして、いっしょに食べるときでも目線を合わしてくれない。前なら興味があることを一生懸命話してくれたのにな、少しだけ寂しい気がする。







 久しぶりの学校は全く変わってなく、いつも通り女の子だらけだった。



 「おはよう、秋月さん。西ノ宮さん」





 クラスに到着すると、顔が全く見えない生徒が俺や冬雪に挨拶をしてきた。珍しいな、冬雪にまで挨拶するなんて。





 気がつくと委員長の後ろにモブ生徒が複数人集まってきていた。気のせいか、彼女たちの顔が妙にニヤついているような気がする。







 「突然なんだけど……秋月さん、私にパンツ見せてくれない?」





 「「は?」」



  隣で黙っていた冬雪もこれにはびっくりしたのか、俺と同じ感想を持っていた。彼女たちは一体なにを言っているんだ?





 「実はね学園内で秋月美颯さんが男なんじゃないかって噂が出てるの。……私たちはねそれは嘘だと思ってるから秋月さんには証明してほしい、だからね? パンツ見せてよ」





 一歩、二歩と少しづつ俺に近寄る姿はまるでゾンビだ。もしかして隠れて男言葉を使ってたのがバレたのか……もう少し慎重にしていればと自己嫌悪に陥ろうとした時だった。





 「……言いがかりは辞めて、秋月さんが男な訳ないじゃない」





 冬雪は俺のスカートに手をかけた生徒の手を払いのけ、強い言葉で彼女たちを威圧した。





 「男じゃないなら証明できるでしょう? 文化祭実行委員長さまは何か隠したいことがあるんですか?」





 「文化祭実行委員長……なにを言って」





 「シラを切るつもり? さっき掲示板に貼ってあったけど? 権力があるからって調子に乗るな!」





 冬雪の顔に動揺が見えたの同時に冬雪を見る彼女たちのモザイクは次第に黒くなっていた。まるであの時のパーティの時と同じだ、悪意で満ち溢れている。

 モザイクがかかったブタ共は冬雪が困っている姿を見て笑っていた。俺は強く拳を握りしめる、我慢だ我慢。





 「学校を私物化して楽しい? 使用人の秋月さんを知らないだろうけどコイツは最低なクズよ」



 俺は最低限の加減をして委員長かもわからない人間以下のブタにビンタをする。







 「……これ以上私の主人を愚弄してみろ、次は殺してやる」





 「ひっ……!」





 俺は冬雪の手を取り、教室を出た。アイツらと冬雪の間に何があったかはわからない、わからないけど俺は冬雪が愚弄されると自分の心が傷つくことを知ってしまった。ブタ共は俺のパンツ目当てに追いかけてくるが、何とか交わしながら空き教室へと逃げ込んだ。







  02





 「……何があったのか聞かないんですか?」



 冬雪は俺とは視線合わせずに口を開いた。少し声が震えている。





 「自分から何があったのか言いたくなったら言えばいい。強要はしない」



 

 朝のホームルームが始まるまで暫くこの教室にいた方がいいかもしれない。それにしても女の子相手に強い言葉を選び過ぎたかもしれない……いくらブタとはいえ相手は女の子だ。次は言葉を選ぶべきだ。

 教室に置かれた机に座りながら、俺は少し考え事をしているとふと背中が暖かくなったような気がした。





 「冬雪……」





 冬雪は俺から顔を隠すようにして背中に抱きついてきた。





 「私が文化祭実行委員長になったのは……多分理事長のせいだと思います」





 「理事長?」







 「理事長……西ノ宮優は私の父なんです。父はカリスマ性も実力もない私に権力を使って立場が強い役職にさせて、私を辱めているんです。継承権トップには必要なことだと言い訳しながら」





 学園長の上にまさか西ノ宮商事グループの社長が理事長をやっているなんて。いくら何でも私物化しすぎだ。ましてや冬雪に責任が重大な役職を背負わせて辱めているなんて!





 「……莉奈は何も言わないのか?」







 「お姉ちゃんは父に文句を言ってくれてるみたいですが相手にしてもらえてないみたいです……私どうしたらいいんですかね」





 流石に今回ばかりはやり過ぎだ。文化祭実行委員長という役職は自分の判断次第で、学校の文化祭を大きく変えることができる。それを自分を追い詰めやすい冬雪に任せるのはおかしい。

 冬雪は声を抑えて泣いていた。辛いはずだ、やりたくもない役職を決められてクラスメイトからは女王気取りだと言われる。あまりにも神様は冬雪を虐めすぎだ。



 「俺が話をつけに行く。……これ以上お前に辛い思いはさせない」



  冬雪には幸せそうに笑ってもらわないと困る。アイツの辛そうな顔を見るだけで俺は胸が苦しい、どうにかしてこの問題を解決しなければ……!


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