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13話 西ノ宮莉奈編 ④ 決戦

 01



 時刻は夜の十時、戦いを行う場所として指定されていたのは体育館だった。あれだけ校内にいた学生たちは既に帰宅しており、辺りは静寂を保っていた。

 体育館を戦う場所として相手から指定されたおかげで、狭い場所よりかはいくらか逃げられる空間が存在していることに俺は感謝するしかない、飛び道具を使われない限り動き回って相手の体力を削ることに専念する。俺が出来る唯一の対抗手段だ、今の俺にはアキには勝てない。

 部活動の時間が終わると、施錠される体育館の鍵は誰かの手によって開けられていることに気づく。やはり、これは夢なんかじゃないと改めて実感する。俺が怖気付いてどうする、冬雪に勝利を渡せなきゃ俺がいる意味なんてない。人から頼られなくなったら柊木桜の価値は無くなるのだから。



 「……冬雪は何で姉と戦うことを決めたんだ?」



 体育館の中に入った俺は先程からずっと黙っている冬雪に話をかけた。緊張をほぐす意味もあったが、単純にどうして跡継ぎ争いにやる気が無かったのに戦う決意をしたのか気になるからだ。



 「まだ戦うべきかは迷ってるんです、本当はお姉ちゃんと戦いたくない。でもお姉ちゃんは自分の夢のために当主になろうとしている以上、私はそれに答えなきゃいけない義務があるんです」



 冬雪の眼差しはとても強く、彼女が姉に対して嫌な感情を持っていないことがこの一言でわかった。だが、冬雪は自分の意志を持っていない。莉奈が意志を持って戦っている以上、冬雪もそれに答えなきゃいけない。でも彼女は姉妹だからという理由で戦いに望もうとしている。俺は莉奈とデートをして、アイツが誰よりも姉妹のことを考えているのがわかっている、だからこそ冬雪にこの戦いを通して莉奈の気持ちを知ってほしい。



 重く閉ざされた扉を開けると、広く大きなバスケットコートの中心に莉奈とアキがいることに気づく。アキもまた燕尾服を着ていることで、あれがボディガードの正装だということを知る。



 「ようやく来たのね、二人とも」



 莉奈は赤い大きな椅子に座りながら、壇上の上で俺たちを見下ろしていた。隣に青い椅子が置いてあり、あれは貴族が戦っている闘士を観戦するための椅子だと理解した。正しく貴族の遊びだな、この戦いは。



 「……冬雪、俺はどんなことがあってもお前に勝ちを持ってくる。だからお前は自分自身の答えに気づいてくれ」



 「え?」



 何を言われたのかわかっていない冬雪にさっさと行けと合図を出し、俺はアキと顔を合わせる。



 「真正面から見るとお前本当に女だな、メイド服着ていると」



 これから暴力と暴力のぶつけ合いをするのに、アキはヘラヘラと俺の容姿をからかう。



 「そんな煽りで俺は怒らない」





 「はっ、そうかい。怒ったところで表情は変わらないか」



 減らず口はそこまでにしろと言うまえに、アキは既に戦闘態勢に入っていた。爽快に足音を鳴らし、至近距離にまで近づいてきたアキの猛攻を俺は躱すしかなかった。俺が守りから攻撃に移るなら、アキは攻撃から更に攻撃を重ねてくる。バーサーカー(狂戦士)のアキにとって守りという言葉は辞書には存在していない。……そう思ってしまうのはアキとの付き合いが薄い奴らだけだ。動き回れば回るほど、体力は削られるが自分がスタミナが無いことを知っているアキは最後に重い一発を出してくる。

 ---------拳を握り出す最後の瞬間を狙う。



 「どうした! 女装したせいで弱くなったんじゃないか!!」



 防戦一方の俺を前にして、アキは余裕の表情を浮かべ軽口を叩く。



 「ちょっと服が動きづらいかも、な!」



 隙をついて、カウンターを出すが長身を生かした蹴りによってそれは無意味と化す。ある意味、想定内に進んでいる。アキの体力の限界を迎えている素振りに気づいた俺は守りを解き、わざと体を前面的に押し出す。足に力を込め、俺の顔面に向けて拳を振りかざす瞬間、俺はしゃがみ込みアキの動揺を誘う。咄嗟のことで、驚いたアキは体をよろめきそうになっていた。



 「もらった!」





  02





 「えっ……」



 俺は自分自身何が起きているかわからなかった。アキは昔から戦闘態勢スタイルは変わらないと思い、隙をついて、腹部に蹴りを入れようとしたがアイツは俺の予想を大きく上回った。地面に手を置き、体の体勢を戻す勢いに生じて俺の顔に蹴りを叩きこんだ。

 地面に積まれていたダンボールに吹き飛ばされ、自分がいかに馬鹿だったことを思い知らされる。



 「柊木くん!!」



 もう秋月さんと訂正を入れられないほど、冬雪は俺の今の姿を見て焦っていた。腰を強く打っただけど、少し目眩がする。早く決着をつけないと勝ち目がない、俺はアキと長年つるんでるなら弱点も知った気になっていたことを反省する。アキは俺が知らないところで、努力をしていたんだ。



 「……お前やっぱり、俺を見下してたな」





 「……は?」





 「人の顔にモザイクがかかる? "じゃあなんで俺は平気なんだ"、結局お前は他人に構ってもらいたいだけの構ってちゃんだよな」



 アキには全てお見通しだった。欠陥だらけの俺は世界からひとりぼっちになることを拒み、人よりも優れている人たちと友達になりたいと願ってしまったんだ。この事実を知られたら、誰もが俺を批難すると考え、ずっと隠してきたのに。アイツは最初からわかった上で俺と関わっていたんだ。



 「……」



 何も言い返すことができない、ずっと親友だった関係はこれで終わりだ。



 「 "今のお前"のままなら俺は縁を切る。……桜、お前の本音を聞かせてくれないか」




 ---------俺はどうしようもなく馬鹿な人間だ、下手なことは考えるべきではない。冬雪に自分の答えを見つけろと言っておいて、自分自身が柊木桜という人間をわかってなくてどうするんだ。

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