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報告

いつも読んで下さりありがとうございます。

おかげさまでユニークアクセス数が千を超えたので、お礼になるか分かりませんが追加で投稿しました。今後も読んでもらえると嬉しいです。


 ランを仲間にした恭也は早速『格納庫』から連絡用に入れておいたホムラの眷属を取り出し、新しく土の魔神を仲間にしたことをホムラに伝えた。


「土の魔神を仲間にしたよ。後土の魔神が封印されてた国が異世界人を捕まえてたから、その人も助け出した。能力が戦い向きじゃなかったけどギルドとか病院関係で協力してくれるって。あ、能力は傷の回復とか蘇生ね」

「そちらに行ってすぐに異世界人と出会ったのは驚きでしたけれど、良好な関係を結べたのならよかったですわ。新しい魔神も部下にできてよかったですわね」


 新しい大陸に行ってからわずか数日で恭也が異世界人に会ったと聞きホムラは驚いたが、戦うこともなく友好関係を結べたと聞いて安心した。


「うん。それはよかったんだけど、こっちの大陸の人たちがいきなり戦争してるのには参ったよ。いきなり十万以上の魔力使う羽目になったからね」

「しかたありませんわ。大抵の人間は相手との優劣をはっきりさせてからでないと関係を結べませんもの。マスターのいた世界にも戦争はありましたのよね?」

「いや、まあ、あったけどさ」


 ホムラに痛いところを突かれ、恭也は話題を変えることにした。


「ミーシアさんとはどう?うまくやれてる?」

「はい。ティノリスやオルルカの時と違い、ミーシア様という有名な方が最初から協力的なのでかなり円滑にケーチの統治は進んでおりますわ。騎士団の編成や海岸の警備に関しても、最初は私も口を出しましたけれど今はミーシア様に一任していますもの。本当に助かっていますわ」


 その後も恭也はホムラからミーシアが挙げたケーチ防衛についての意見や恭也が帰って来てから能力でして欲しいことなどを聞かされた。


「順調みたいで安心したよ。とりあえずオルフートとトーカの間の問題が解決したら、上級悪魔が現れない限りは一回そっちに帰るつもりだから」

「はい。お待ちしていますわ。それと最後に一つ報告がありますの」

「ん?何?」


 どうやらこれまでの話題とは違う内容らしいホムラの報告を前に恭也は身構えた。


「ティノリスのフーリン様がソパスの視察をしたいと言っていますの」

「視察?どうしてまたわざわざ」

「今後ティノリスでギルドを普及する際の参考にしたいとのことで、マスターがいない状態を視察したいとのことでしたわ」

「僕がいない方がいいってこと?」

「ええ、忙しいマスターに時間を割いてもらうのは心苦しいと言っていましたわ」


 恭也としてもあまり公式の場には出たくないので、ティノリス皇国が国としてソパスを視察する場に同席しないで済むならそれに越したことはない。

 しかしティノリス皇国から女王が来るというのに、仮にも領主の恭也が顔を出さないのはまずいのではないだろうか。

 そう考えた恭也がホムラに自分の考えを伝えたところ、予想外の答えが返ってきた。


「ご安心下さいまし。こちらの代表としてはノムキナ様に出てもらいますわ」

「はっ?ノムキナさんに?」


 ホムラが当然の様に口にした案に恭也は驚いた。

 以前恭也が貴族の相手は大変だとこぼした時、ノムキナが不安そうな顔をしていたのを恭也は覚えていた。

 あの時のノムキナは自分が貴族と話す機会が訪れるなど考えてもみなかっただろう。


 そんな状況ですら貴族との会話を怖がったノムキナがよりにもよって女王との会話などできるはずがない。

 フーリンの来訪日時を聞いて自分が行くしかないと恭也は考えた。

 しかしホムラはその必要は無いと告げてきた。


「すでにノムキナ様にはギルドの仕事以外にもソパスの行政に関わる仕事をいくつか任せていますの」

「…何で?」


 次々に自分が知らなかった事実を告げられ、恭也の困惑は大きくなる一方だった。


「ノムキナ様から言い出したことですのよ?少しでもマスターの力になりたいとのことでしたわ」

「…ぶっちゃけた質問するよ?ノムキナさんに街の役所の仕事なんてできるの?」


 ノムキナは今十四歳だったはずだ。

 仮に恭也のいた世界の様に義務教育があったとしても中学すら卒業していない年齢で、そんな年の子に役所の仕事などできるわけがない。

 こうした恭也の考えはホムラも否定しなかった。


「マスターの心配は分かりますわ。今ノムキナ様に任せている仕事は正直なところ簡単なものばかりですし、重要度もそれ程のものではありませんもの」

「…僕の彼女だからって気を遣ってる?」


 もしそうならホムラに負担をかけたくないので、今度帰ったらノムキナと一度話し合う必要があった。


「そういった面があるのは否定しませんけれど、マスターはノムキナ様とどういうつもりでお付き合いされてますの?」

「どういうこと?」


 ホムラの唐突な質問に戸惑った恭也にホムラはさらに質問を重ねた。


わたくしは今、マスターはノムキナ様と結婚する意志はあるのかと聞いていますの」

「もちろんあるよ。後二年したら改めてプロポーズする気だし、ノムキナさんにもそう伝えてる」


 ホムラからの質問に戸惑いながらもノムキナとの今後について即答した恭也に対し、ホムラはその先について話した。


「もしノムキナ様がマスターと結婚されたら、ノムキナ様は多くの人間の目にさらされますわ。その時マスターがノムキナ様にお飾り以上の役割を求めないというのでしたら、もちろん私はマスターの決定に従いますわ。でもマスターの力になろうとしているノムキナ様の気持ちは、とても好ましいものだと思いますの」


 ホムラにこう言われ、恭也は即答できなかった。

 ノムキナの気持ちは素直に嬉しい。

 しかし基本的に負けない相手に暴れていればいいだけの恭也と違い、ギルドだけでなく役所での仕事もするとなると面倒な人間の相手もしなくてはいけないだろう。


 そこまで年下の女の子にさせるのは恭也には抵抗があった。

 だからといってノムキナの好意を無下にするのも悪いと思い、どうしたものかと考えていた恭也に今まで近くでランの相手をしていたウルが声をかけてきた。


「本人がやりたいって言ってるんだろ?じゃあ、やらせればいいじゃねぇか」

「でも不特定多数の人相手にする仕事って大変らしいし…」


 恭也は前にいた世界でコンビニのアルバイトをしていた同級生から質の悪い客にからまれたという話を何度か聞いた。

 ノムキナの場合は恭也に敵意を持った人間が近づいてくる可能性があるので、大変さは他の仕事に比べて跳ね上がるだろう。

 そう考えてノムキナを表に出す決心がつかなかった恭也を見て、ウルは呆れた表情で口を開いた。


「自分はどんどん危ないことするけど、恋人のお前は家で大人しくしてろってか?勝手過ぎね?」

「ウルさん!」


 自分たちの主に度が過ぎた発言をしたウルにホムラが声を荒げたが、恭也はそんなホムラをなだめて話を続けた。


「…今ソパスでノムキナさんが僕の彼女だってどれぐらい知られてる?」

「今のところはそれ程知られていませんわ。マスターがネースから連れてきた孤児といった認識ですわね」

「僕とノムキナさんとの関係が知られたら面倒なことになるよね?」

「現時点で私にすり寄ってくる商人などが一定数いますので、ノムキナ様の立場が知られたらそういった人間がノムキナ様に接触しようとすると思いますわ」


 やはりそういう人間はどこにでもいるかとため息をついた恭也だったが、先程のウルの発言を思い出してノムキナの善意に甘えることにした。


「よし、せっかくだからノムキナさんにもがんばってもらおうか。無理だけはさせないでね?」

「マスターが言っても説得力ありませんわよ?」

「…いや、今回は疲れたからって死んだりしてないし、全然大丈夫だよ」


 この大陸に来てから一度自殺したが、あれは二ヶ所で異変を察知したことが原因の緊急避難なのでしかたがなかった。

 とりあえずの確認を終えた恭也は、ホムラとの会話を終えることにした。


「将来的にはノムキナ様に領主補佐という役職を用意したいと考えていますけれど、よろしいですか?」

「うん。お願い。とりあえず帰ったら直接話してみるつもりだけど」

「はい。お願いしますわ。それでは失礼しますわね」


 こうして恭也とホムラの会話は終わり、恭也が用件を終えたとみるやランが恭也に抱き着いてきた。

 恭也たちの会話に参加するどころか話の内容を聞いていたかすら怪しいランは、幸せそうな顔で恭也に抱き着いていた。


 見た目が小柄なのは魔力を吸われて弱っているだろうと恭也が考えたからだろうが、ランはなぜか精神年齢まで低かった。

 基本的には素直なランだったが時間さえあれば恭也に抱き着こうとするため、恭也との融合を嫌がるのには恭也も困っていた。


 別に見た目五、六歳のランに抱き着かれても妙な気持ちにはならず、大して重くもないため恭也は基本的にはランの好きにさせていた。しかし各国の王などと会う時にランに抱き着かれたままではさすがに恰好がつかない。


 とりあえず時と場所に応じた振る舞い方を追い追いランに教えることにした恭也は、時間がある内にトーカ王国に一度顔を出すことにした。

 今回のオルフートとトーカ王国の戦争はトーカ王国から始めたものだ。


 そのためオルフートを納得させるために恭也はトーカ王国に賠償金を出させるつもりで、それ以外にもオルフートが条件を出してきたら人命に関わらない限りは後押しするつもりだった。

 侵略戦争をするような国を後回しにしてまた面倒なことをされても困る。


 そう考えた恭也は初めてエイカに会った場所に転移し、そのままトーカ王国の首都、エーオンを目指した。

 恭也がエーオンに着いた時はもう夕方だったので、恭也は王城に行き門の前に立っていた兵士に自分が異世界人だということと明日の午前九時にまた顔を出すとだけ伝えて宿へと向かった。


 街で適当に食事を済ませた恭也は宿の部屋でウルとランとの融合を解き、ホムラの眷属を『格納庫』から取り出すとベッドに座り込んだ。


「しかし上級悪魔がここまで現れないとは思わなかったね」

「ああ、この調子だとトーカとオルフートの連中と話つけるだけで今回終わっちまいそうだな」


 恭也がこの大陸に来た時にばらまいたホムラの眷属は、まだ全員オルフートにいるが上級悪魔の痕跡すら見つけられないらしい。

 あの異世界人と恭也が悪魔越しに話してからかなり経っている。

 それにも関わらずまだ一体も上級悪魔が現れないため、恭也はあの異世界人が嘘をついた可能性すら考え始めていた。


「これに関しては受け身に回るしかないので、考えてもしかたないと思いますわ」

「それはそうなんだけどさ。…とりあえずこのまま何も無かったら、オルフートとトーカの件が片付けてからタトコナとかいう国にいるっていう魔神の様子を見に行ってみようか」


 恭也やホムラの眷属がオルフートで集めた情報によると、タトコナ王国に封印されていた水の魔神の封印は現在解かれたままらしい。

 遠くから見た者の証言によれば水の魔神は異世界人らしき存在を氷漬けにし、その氷の近くで何をするでもなくたたずんでいるらしい。


 この情報が正しいなら氷漬けにされた異世界人と魔神の他に魔神の主がいるはずだった。

 この世界の人間に魔神を倒せるとは思えないので、この大陸に三人目の異世界人がいると考えた方が自然だった。

恭也が今いる大陸の形は日本の本州をイメージして下さい。

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