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死の超克者の世界征服(おかげさまでPVが15万を超えました。ありがとうございます)  作者: 紫木翼
奴隷解放編

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新たな仲間

「あん?死んだか?」


 目の前で戦っていた相手が姿を消したにも関わらず、自分が封印されないという初めての事態に魔神は辺りを見渡した。


 魔神が今まで戦った数は三十回にも満たないが、敵を皆殺しにした際には魔神が何もしなくても勝手に封印が行われた。

 それにも関わらず、今回は封印が行われない。


 今回の敵が何度殺しても復活してきたことから魔神は相手の死が偽装である可能性を潰すために周囲の空間を羽で隙間無く切り刻んだ。

 しかし羽に手応えは無く、自分は封印されないままだ。


「どこ行きやがったぁ!」


 久々の戦い、しかも自分の攻撃を何度食らっても挑んでくる初めての相手との戦いに喜びを感じていた魔神はそこに水を差されて激高した。


 しかし何度羽を振るっても手ごたえが無いことから魔神は忌々し気に動きを止めると、そのまま動かなくなった。

 魔神が自分の周囲を羽で切り刻んでいた頃、恭也は魔神への対策を考えていた。


 今回は死んだ際に『即時復活』を使わなかったので考える時間は十分にあり、恭也は『魔法看破』で見た魔神の能力を思い出していた。

 魔神の体は硬度自体はそれ程高くない。


『硬質化』を使った状態の恭也の拳でダメージを与えられた程だ。

 しかし異世界人の恭也と同等の魔力量で、魔力がある限り損傷を治せるというのが厄介だった。

 あえて有利な点を挙げるなら魔神の魔力が回復していない点だったが、それでも魔神は現時点で魔力を二割も使っていなかった。


 一方の恭也は魔力の四割以上を消費し、その上復活可能な回数も三分の一程消費していた。

 とても消耗戦を挑める状況ではなかった。

 また高速で動き敵を斬り裂く羽も厄介で、物質・魔法を問わずあらゆるものを取り込み消滅させる盾としても機能するらしい。


 ただし魔力の込もっていない物なら数秒で消えるが、あらかじめ魔法が込められている魔導具なら消えずに闇属性の魔導具に変わるだけらしい。

 また保有する魔力が膨大な異世界人は取り込めず、体の一部でも長時間取り込んでいると羽の方が飛散するらしい。


 閉じ込めるというよりは盾としての運用が羽の本来の使用法なのだろう。

 すぐに『空間転移』を使って接近戦に持ち込んだ恭也は特に気にならなかったが、闇の魔神と遠距離での魔法の撃ち合いをするとこの羽の防御を突破するのは不可能に近い。


 そしてもう一つ恭也としては羽よりも厄介な『キュメール』は、精霊への支配力で上をいかれている以上今の恭也ではよける以外の対策が無かった。

 魔神の接近戦での身のこなしに関しては、恭也より少しましといった程度でそれ自体は大して脅威とは感じなかった。


 ただし羽による移動で接近戦と遠距離戦どちらを行うかの選択肢が魔神に握られているのが痛かった。

 ここが外の世界なら一度ぐらいなら取り押さえて『埋葬』で動きを封じるということもできたのだが、この上下左右どちらも得体の知れないものでできている空間ではそれもできなかった。


 そもそもこの空間自体が闇以外の精霊がほとんどいない闇の魔神にとても有利な空間だ。

 この空間で魔神を倒せば仲間にできるという触れ込みで挑戦者を誘い込むのは詐欺だと恭也は思った。


 正直言うと恭也は魔神に挑んだことを後悔しており、『即時復活』を使わなければ死んだという扱いにならないかと期待したのだがあいにくそうはならなかった。

 ほとんど戦意を失っていた恭也だったが、市場での出来事を思い出して自分を奮い立たせた。


 その後恭也はかろうじてうまくいくかも知れない作戦を思いついた。

 考案者の恭也自体がされたら嫌だと思うような作戦だったのだが、別にスポーツをしているわけでないのだと自分に言い聞かせて恭也は時間が経つのを待った。


 そして一時間後、恭也が復活して再び魔神の前に立つと、魔神は怒りを感じさせる声で恭也に話しかけてきた。


「よぉ、やっぱ死んでなかったか!待たせやがって!」

「ごめん、ごめん。一人で作戦会議してたんだ」

「はっ、作戦会議か。そりゃ楽しみだ!」


 短く会話を交わすと、今まで同様『キュメール』を恭也に叩きつけて殺そうと魔神が動き出した。

 そんな魔神の前に恭也は中級悪魔二体を召還した。


「へぇ、そんなこともできるのか。でもそんな雑魚召還したところで意味ねぇぞ!」


 発言通り魔神は一瞬驚いた様子を見せたものの、すぐに『キュメール』を中級悪魔たち目掛けて撃ち出してきた。

 魔神は中級悪魔一体が正面、もう一体が上空に飛んでも気にも留めず、正面から魔神に突っ込んだ中級悪魔が『キュメール』をまともに食らった。


 その結果中級悪魔の腹部に穴が空いたが、魔神よりはるかに格下とはいえ中級悪魔も魔神と同じく生物ではない。

 その程度では中級悪魔は死なず、魔神に殴りかかった。

 結局その中級悪魔は上空に飛んだ中級悪魔もろとも魔神の羽で斬り裂かれたが、その間に恭也は羽による攻撃に巻き込まれないように体をすくめながら魔神へと近づいていた。


 そして恭也が『格納庫』から魔導具の剣を取り出したのとほぼ同時に恭也を魔神の羽が襲った。

 その羽にカウンター気味に剣を振るった恭也だったが、剣はあっさり羽に飲み込まれた。


(よしっ)


 攻撃が不発に終わったにも関わらず、恭也の顔に落胆の色は見られなかった。

 その後羽の攻撃をまともに受けた恭也だったが、今まで同様『物理攻撃無効』で防ぎ新たに取り出した槍を魔神の喉に突き立てた。


 それを受けた魔神が一度距離を取ろうとした後退したタイミングで恭也は『隔離空間』を発動した。

 魔神の後退だけを防ぐためだけに創られた結界は魔神の羽にたやすく斬り裂かれたが、肝心の魔神の後ろの結界は羽の真後ろにあるため、大振りの攻撃しかできない羽では破壊が難しかった。


 結界を『キュメール』で消しても結界はすぐに修復する。

 それを理解した魔神は標的を恭也に切り替えた。

 しかし『キュメール』を連発してくる魔神に対し、恭也は次々と中級悪魔を召還して対抗した。


「ああ、うぜぇ!」


 効果範囲はそれ程でもない『キュメール』は落ち着いて対処さえすればそれ程脅威ではなく、恭也は魔神と自分の間に何度も中級悪魔を召還して魔神の攻撃をしのいだ。


 はたから見れば狭い場所で三人で押し合いをしている状態でこれを強いられている魔神はひたすら鬱憤が溜まっている状態だった。

 その後も互いの魔力を消耗する戦いが続いたが、魔神は大雑把ながらも火力の高い攻撃で戦いを有利に進めていた。


 確かに無尽蔵に中級悪魔を召還されて目の前の相手を倒せず、自在に作られる結界で機動力も封じられている。

 しかし自分よりも目の前の相手の方が魔力の消費が激しいことを魔神は備え持った感覚で理解していた。


 かつてない程技を連発して魔神も魔力を消耗しているが、それでもこのままいけば自分の勝利は間違いない。

 このまま削り合いをしていれば勝てる。

 そう判断した魔神だったが、我慢比べを強いられていた魔神の精神状態は限界だった。


「雑魚の召還ぐらい俺にもできるぜ!」


 そう言うと魔神は中級悪魔と同じ体格の眷属を召還した。

 魔神が召還したこれは『魔法看破』によると魔神が命じた相手目掛けて襲い掛かる、動く『キュメール』と呼べる存在らしい。

 それら二体が弧を描き、左右から恭也に襲い掛かった。


 魔神の眷属は自身の存在を削りながら『隔離空間』の結界を消滅させると、再生途中の結界を無理矢理通り恭也に襲い掛かってきた。

 悪魔への指示と『隔離空間』の再生に意識を割いていた恭也は,二体の攻撃をまともに食らい消滅した。


 そして一時間後、再び恭也は蘇った。


「うぜぇ!蘇るならさっさとしろよ!」


 封印時は意識が無い魔神は何もしない時間という初めての経験にいら立ちを覚えていた。

 もっとも大抵の相手が何も無い空間に一時間放置されたらいら立つだろうが…。

 接近してくる魔神を前にし、恭也再びは壁として中級悪魔を二体召還した。

 次の瞬間には二体共倒されていたが、それでも恭也が魔神に接近する時間は稼ぐことができた。


 一時間前に魔神の羽に飲み込まれた魔導具を取り出すと、恭也はそれで魔神に斬りかかった。

 魔神の羽に飲み込まれていたこの魔導具には『キュメール』と同じ性質の闇の魔力が備わっていた。


 闇の魔神は魔導具にまとわりついていた闇の精霊を取り払ったが、恭也の発動していた『精霊支配』によりわずかながら闇の精霊が残っていた剣が魔神の羽を斬り落とした。

 恭也の今の魔法の属性は光なので、魔神の羽から取り出した剣を魔導具として使うことはできなかった。


 あくまで剣が纏っていた魔神の魔力の残滓が魔神にダメージを与えた。

 しかし魔神は羽が斬り落とされたことに全く動揺せず、恭也に『キュメール』数発を撃ち込んだ。

 それをよけも防ぎもせずに恭也は死に、ここでようやく魔神は恭也の狙いに気がついた。


「おい、待て。これまさかずっとやるのか?」


 その後も恭也は殺される度に一時間かけての復活を繰り返し、魔神の魔力を徐々に削っていった。

 この死んでいる一時間の間にも恭也の魔力は回復するので、消耗戦が始まった時点で魔神に勝ち目は無かった。


 恭也がこの戦法を始めて三十回目の死を迎えた時には恭也と魔神の魔力の残存量の差はかなり小さくなっていた。

 しかも復活可能回数は二十四時間で回復するため、最初の内に消費した分は回復している状態だった。


「ふざけんなぁ!さっさと出てこいぃ!」


 恭也の策に怒り狂って羽と『キュメール』で周囲を攻撃する魔神だったが、全ての攻撃は何も無い空間を虚しく通り過ぎるだけだった。


 こうして恭也はじわじわと魔神の魔力を削っていき、最終的に恭也と魔神は無言でにらみ合う形となった。

 その後恭也が口を開いた。


「ごめんね。僕が派手な技とか持ってれば、もっとかっこよく戦えたんだけど…」

「いや、つい怒っちまったが久しぶりに楽しませもらったし、まあ悪くはなかった」


 我ながら陰湿と表現するしかない戦法に罪悪感を覚えた恭也は思わず謝ってしまったが、謝罪を受けた魔神は穏やかな表情をしていた。


 つい先程まで恭也の変則的なヒット&アウェイにいら立っていた魔神が急に穏やかになったことに恭也は疑問を覚え、そしてその答えはすぐに分かることとなった。


「本当に楽しかったぜ。お前の部下になって暴れるのも楽しそうだ。俺の切り札を無事防いで見せろ!」


 そう言うと魔神は体全体から魔力を立ち昇らせた。


 すぐに『魔法看破』を使った恭也は魔神の発動しようとしている技の正体を知り、慌てて『格納庫』から短刀を取り出した。


「『ミスリア』!」


 魔神が使ったこの技は『キュメール』と似た性質を持った気体を半径五百メートルにまき散らす技だ。

 ただ『キュメール』とこの技には違う点が一つだけある。


 この技は受けた相手の精神にまで影響を与え、例え復活能力を持っていても最低二年は復活できない。

 復活しようという意思そのものが消えてしまうためだ。


 この能力を受けて復活するには人間離れした自我の強さが必要で、それもあくまで可能性の話で、事実上は不可能といってよい。

 魔神の魔力の半分を消費する、まさに切り札だった。


 この技の唯一の弱点は気体の侵食速度で、走って逃げられる程度の速度しかない。

 しかし五百メートルを全力疾走する必要があるため、あまり現実的ではなかった。

 そんな技を逃げ場の無い空間で使われた恭也はそのあまりの理不尽さに怒りすら覚えたが、今はそれを表情に出している余裕は無かった。


 この技の危険度を『魔法看破』で見破っていた恭也は『格納庫』から取り出した短刀で自害し、体を消滅させた。

 その直後空間全てを死の気体が覆い、それと同時に魔神は消滅した。

 この瞬間恭也の勝利が確定し、恭也はこの世界で初めて魔神を従えた存在となった。

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