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活動開始

 恭也がエイカと別れてから三日後の朝、ヘクステラ王国内の街の内、首都ヘクスより南にある街全てを巡り、住民たちにゼキア連邦の国民たちを解放するように告げた恭也は城を伴いヘクスへと戻って来た。


 後はヘクスから順にもう一度ヘクステラ王国南部の街を巡り、ヘクステラ王国の国民が解放したゼキア連邦の国民をゼキア連邦に連れて行くだけだった。

 といっても恭也はヘクステラ王国の国民全てが恭也の指示に大人しく従うなどとは全く考えておらず、残念ながら恭也の予想は当たってしまった。


 ヘクスで活動していた奴隷商人にさらっていたゼキア連邦の国民たちを集めている場所に案内すると言われて着いて行った先で恭也は兵士たちによる攻撃を受けていた。

 恭也に金属製の武器が通用しないという情報はヘクスの人間には周知の事実の様で、恭也は大量の木の矢、あるいは投石の攻撃を受けた。


 まず間違いなく戦いになると恭也は考えていたので、もし自分が攻撃されたら自分への攻撃を全て消すようにとアロジュートに頼んでいた。

 そのためアロジュートは恭也への攻撃を見てすぐに実体化し、恭也の命令通り恭也と自分に飛んで来る矢や石を全て消した。

 ついでに待ち構えていた男たちが手にした武器全てを消した後、アロジュートは恭也に指示を求めた。


「こいつらどうするの?殺す気は無いんでしょ?」

「はい。城があった場所に刑務所を作るつもりなんで、この人たちはそこに入れようと思います。とりあえず天使を召還してこの人たちを連行してもらっていいですか?」

「分かったわ」


 自分たちの攻撃をまるで意に介さずこれからの予定を話す恭也とアロジュートを見て、男たちは慌てて逃げようとした。

 しかしそれを予想していた恭也は男たち全員の足首に鉄の輪を転移し、そのまま金属操作で彼らの動きを封じた。


 なおここに恭也を誘い込んだ奴隷商人は先程逃げ出そうとしたところに『情報伝播』による制裁を食らい、悲鳴をあげながら地面を転がっていた。

 そんな中動きを封じられた男たちのリーダーらしき男が口を開き、恭也に命乞いをしてきた。


「なあ、頼む!俺たちはその男に命令されただけなんだ!見逃してくれ!」


 そんな男の発言を聞き、一度奴隷商人に視線を向けた後で恭也は男たちの職業を尋ねた。

 男たちの服装や装備がこれまで見てきた各国の兵士たちのものとは微妙に違うように見えたからだ。


「俺たちはそこの男に雇われた傭兵だ!なあ、頼む!見逃してくれ!俺には妻も子供もいるんだ!」


 男のこの発言を聞き、恭也はネース王国でサキナトと戦った時のことを思い出して不快な気持ちになった。


「人をさらって売るような人ってみんな同じ事言うんですね。さらわれたゼキア連邦の人たちに家族がいないとでも思ってるんですか?」


 感情を押し殺した声で男にこう尋ねた恭也を見て、開き直ったのか男は声を荒げて恭也に反論した。


「み、みんなやってることじゃねぇか!そもそも蛇や鳥売って何が悪いって言うんだ!」


 この状況で今の恭也の表情を見てこの発言ができる男に恭也は少なからず驚き、恭也の後ろにいたアロジュートも呆れた様な表情をしていた。

 恭也は男の身勝手な発言に怒りを通り越して呆れ果ててしまい、これから忙しくなるのだからと考えて男との話を終わらせることにした。


「じゃあ、この話これで終わりですね。あなたの理屈でいくと、この世界の人間じゃない僕があなたたちどうしようと自由だってことになりますから」

「あ、いや……」


 異世界人に他種族なんてどう扱おうと構わないと言った意味に男はようやく気づいた様子だったが、すでに手遅れだった。

 もっともこの発言が無くてもゼキア連邦の国民の誘拐と売買に関わった人間相手に穏便に済ませる気は恭也には無かったが。


 とりあえず男に捕らわれているゼキア連邦の国民の所在や男たちの事務所の場所などを聞き出そうとして恭也はあることに気づいた。

 恭也はいつも通り『六大元素』と『精霊支配』で闇属性の魔法を使い男たちを尋問するつもりだったのだが、これからヘクステラ王国で行うことを考えたらウルに貸している『死体探査』が必要だ。


 ティノリス皇国での死体の捜索がそろそろ終わりそうだと数日前にホムラから聞いていたので、もう終わっているようならウルと合流しよう。

 そう考えた恭也は恭也たちから離れたところで透明になって待機していたホムラの眷属へと近づいた。


 先日竜型の上級悪魔がガジノに現れた件を受け、恭也は日に数回の連絡だけではいざという時の対応が遅れてしまうことに気づいた。

 そのため恭也は最近はホムラの眷属を街から街への移動の時以外は『格納庫』から出すことにしており、戦闘に巻き込まれてやられないように恭也たちから少し離れた場所で待機させていた。


 ウルに同行しているホムラの眷属に連絡を入れるとすぐにウルからの返事があり、死体の捜索は昨日の夜で終了したのでいつでも合流できるとのことだった。

 それを聞いた恭也は早速ウルを手元に呼び出し、ウルの長期に渡る死体捜索に対する感謝の気持ちを伝えた。


「ウル、長い間きつい仕事任せちゃってごめん。ホムラからはウルのおかげで予定の半分以下で終わったって聞いてるよ」

「まあな。俺にかかればこんなもんよ!集めた死体はホムラが人間たち使って二ヶ所に集めてるらしいから後はよろしくな」

「うん。今やってることが終わったら一度帰るつもりだからその時に蘇らせるよ。何日かはあっちに滞在するつもりだから二、三回は戦えると思う」

「そいつは楽しみだな。じゃあ、面倒な仕事はさっさと済ませようぜ」


 そう言うウルから恭也が『死体探査』を返してもらった時、ウルが恭也の後ろにいたアロジュートに気がついた。


「おっ、お前がアロジュートか?闇の魔神のウルだ。これからよろしくな」

「……どうも」


 ウルがアロジュートにあいさつをした瞬間、恭也と恭也の中にいる魔神たちは焦った。

 アロジュートがウルのあいさつを無視すると思ったからだ。

 そうなればウルの性格上揉めるのは必至で、恭也は急いで二人をとりなそうとした。


 しかし実際はアロジュートはそっけないながらもウルに一応あいさつを返し、二人が揉めることはなかった。

 このことに一瞬困惑した恭也だったが、その後すぐにウルへの興味をなくした様子のアロジュートを見て納得した。


おそらくアロジュートはウルにあいさつをされ、相手が魔神だということを忘れて反射的に返事をしてしまったのだろう。

 考えてみればアロジュートは誰かれ構わずぞんざいな態度をとっているわけではないのだからこの結果は当然だった。


 この様子なら恭也の胃痛さえ無視すればアロジュートと魔神たちの仲を取り持てるかも知れないと恭也は光明を見出した。

もっともアロジュートはもちろんウル以外の魔神たちも相手と仲良くなる気が無いのでいばらの道ではあったが。

 とりあえずこの件は一朝一夕で片付く問題ではないので、恭也は目先の問題を片付けることにした。


(とりあえず僕はこの街にいるゼキアの人たちを解放してくるけど、ランとライカには別の仕事をお願い)

(……別の仕事?)

(何すればいいっすか?)


 恭也と別行動を命じられてランから強い不満が伝わってきたが、今回の別行動は二、三時間程度だったので恭也はランの不満を無視して話を進めた。


(そんなに時間はかからないから安心して。ランには城があった場所に刑務所を作って欲しいんだよ)


 そう言って恭也はランとライカを召還し、ホムラに頼み用意させた刑務所建設の手引き書と『降樹の杖』をランに渡した。


「……何これ?」


 初めて見る『降樹の杖』を手に取り不思議そうにするランに恭也は『降樹の杖』の効果を説明し、それで木材用の木を数十本生やして欲しいと伝えた。


「……それが終わったらごしゅじんさまと一緒にいていい?」

「うん。僕たちの用事が終わったらこっちから合流するつもりだし、長くても半日もかからないと思うよ」

「……分かった。ごしゅじんさまと離れるのは嫌だけど我慢する」

「ありがとう」


 そう言って恭也がランの頭を撫でた後、ランは『アルスマグナ』製の板に乗りヘクステラ王国の王城があった場所へと向かった。

 ランの姿が見えなくなった後、恭也はライカに仕事の内容を伝えた。


「ここから西に行った所に僕が最初に活動してたダーファ大陸があるんだけど、そこに行ってライカの魔導具置いてきて欲しいんだ。場所はどこでもいいけどできるだけ内側がいいかな。これは多分そんなにかからないよね?」

「そうっすね。自分なら別の大陸に行くだけなら一瞬っすから、着いてからのこと考えても一分もかからないと思うっす」

「分かった。じゃあ、念のため別れて十分ぐらい経ってから呼び戻すから、できるだけ大陸の内側、できればクノンかセザキアって国のどっちかに置いてきて。僕の名前出して近くの人に聞いてもいいから」

「了解っす。じゃあ、早速行って来るっすよ!」


 そう言うとライカは恭也の返事も待たずに出発した。


「……そんなに急がなくても。ま、いっか。こっちも始めようか」


 そう言うと恭也は近くで怯えた様子で恭也を見ている男たちに近づき、ウルとライカ、アクアとの合体技を確認するのを忘れていたなと思いながら尋問を始めた。

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