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思わぬ遭遇

(結局どうすんだ?わざわざ死体配って回るのか?)

(それだとただの嫌がらせだよ。さすがに四ヶ所で別々に蘇らせるのは魔力がもったいないから、ゼキアのどっか真ん中ぐらいで蘇らせて後は各自で帰ってもらおうかな)

(ったく、雑魚同士で縄張りだ何だと面倒なこと言いやがって)

(まあまあ、戦争してる人間よりよっぽどましだよ)

(……あっちこっち行かされて、ごしゅじんさまかわいそう)


 ゼキア連邦の内情を知り、思い思いの感想を口にしながら恭也たちは今夜の野宿先を決めた。

『格納庫』から家とホムラの眷属を取り出した恭也は、家の中に入るとウルとランとの融合を解いた。

 さっそく抱き着いてきたランの相手をしつつ、恭也はウルとホムラと明日以降の予定を話し始めた。


「このまま上級悪魔が現れなければ助けた人たち蘇らせた後タトコナとかいう国に行って、氷漬けになってる異世界人見てみようと思うんだけどそれでいい?」

「あれ?そいつらにちょっかい出すのディアンとかいう奴の上級悪魔全部倒した後じゃなかったのか?」


 恭也の突然の方針転換に不思議そうな顔をしたウルに恭也は説明を続けた。


「近づくのは落ち着いてからにするつもりだよ?でも僕の目で直接見れば何か分かるかも知れないし、見るだけ見とこうかなと思って」

「でもそろそろオルフートにも行かないといけませんわよね?」

「ああ、そっか。まあ、見るだけだから異世界人この目で見て、そのままオルフートに転移しようか」

「特に異論はありませんけれど、二時間程前にラインド大陸に着きましたわ。こちらはしばらく放っておきますの?」

「……そっちはしばらく放置かな。そっちはどんな感じ?悪魔が暴れてるとかなら予定変更するけど」

「残念ですけれどすでに破壊されてから何年も経っているような建物の残骸などがあるだけですわ」

「あんな人が僕より何年も早く来てるんだからしょうがないか」


 恭也の怒りを感じ、ウルたちの誰もが言葉を発せずにいる中恭也はホムラに指示を出した。


「もう手遅れだっていうならそれはしかたないけど、多分あの人の本拠地みたいな場所があると思うからそれを探してみて」

「かしこまりましたわ」


 ウォース大陸に来る前に決めていた予定と大きく変わったことは無かったため、今夜の話し合いはすぐに終わった。

 その後恭也は食事を取り、ウルとラン相手に時間を潰してから就寝した。


 翌日の朝、起床した恭也は家を『格納庫』にしまい、その後二時間程南下した。

 昨日オーガに聞いた話によれば、ゼキア連邦の西側にはエルフとアルラウネが十年以上かけて作った森林地帯が広がっているらしい。


 そして東側のヘクステラ王国との国境にはラミアとハーピィの居住区があるらしいので、その三ヶ所の中間地点で恭也は助け出した人々の蘇生を行うつもりだった。

 森林地帯の近くを通り過ぎた恭也は、何やら採取している様子のエルフとアルラウネたちを遠目に目撃した。


エルフはクノン王国で何度か見たことがあったが、恭也がアルラウネを見るのは今回が初めてだった。

 恭也が見る限りではアルラウネは女しかおらず、全身緑色の彼女たちは周囲のエルフたちと比べると小柄だった。


 あれでは成人男性に襲われたらあっさりさらわれてしまうだろう。

 巨体のオーガはともかく何故彼女たちをヘクステラ王国で見かけなかったのだろうか。

 気になった恭也だったがゼキア連邦の住民たちに正式にあいさつをするのはタトコナ王国に行き氷漬けになっている天使を見てからにするつもりだったので、恭也はエルフとアルラウネの集団には近づかなかった。


 恭也がゼキア連邦への説明を後回しにした理由は、ゼキア連邦の場合は六つの種族の代表全てにあいさつしなくてはならないため時間がかかるからだ。

 また恭也が蘇生した各種族の住民たちがそれぞれの居住地に帰ってからあいさつに行った方が話が円滑に進むだろうという打算もあった。


 そうしたわけで何もせずに森林地帯を離れた恭也は、適当に開けている場所でヘクステラ王国で助け出した人々の蘇生を行った。

 いつもの手順で数十人を蘇らせた恭也の前で蘇った彼らは、一様に何が起こったかは分からない様子で周囲を見回していた。


 そんな彼らに恭也は自分が異世界人であること、ヘクステラ王国で死んだ彼らを恭也が蘇らせたこと、そしてここがゼキア連邦であることを告げた。

 最初は恭也が言っていることが信じられない様子の彼らだったが、全員が自分が一度死んだことは覚えていたのでやがて納得した。

 その後それぞれの種族が住む場所へ帰って行く彼らを見送った後、恭也は予定通りタトコナ王国を目指して南下した。


(ったく、失礼な連中だぜ。恭也に礼も言わずに逃げやがって)

(まあ、しょうがないよ。僕ってこの世界の人間と見た目大して違わないからね。ヘクステラの人にさらわれてひどい目に遭ったんだから、人間憎むのはしかたないと思うし)

(もしかして今回街もらわないつもりか?)


 ウルの言う通り、恭也はゼキア連邦の住民たちから特に何ももらうつもりは無かったが、ウルのこの発言には思わず苦笑した。


(そもそも街ってそう簡単にもらえるものじゃないからね?もらって助かった部分もあるのは認めるけど、こっちから下さいなんて図々しくて言えないよ)

(魔力三万使って見返り無しかよ)

(見返りっていうのは物だけじゃないし)


 この恭也の発言は別に助けた人たちの笑顔が報酬などと言っているわけではない。

 もちろん無理強いする気は無いが空を飛べるハーピィやあれだけの巨体を持つオーガなどの協力を得られればできることの幅も広がるだろう。


 今回の件はやりたいからやっただけの人助けが先行投資にもなったと考えると、恭也としてはむしろ得した気分だった。

 助け出した人々の蘇生を行った後は特に何事も無く恭也は飛行を続け、もう少しでタトコナ王国との国境というところでランが恭也に話しかけてきた。


(……ごしゅじんさま、土の下に何かいる)

(土の下?)


 ランの発言を受けて恭也が『魔法看破』を発動すると、恭也の視界の先には土の下をゆっくりと進む保有魔力八万程の何かがいた。

 しかもそれに付き従う形で光魔法で透明になったディアンの作った目玉の悪魔もおり、恭也は思わず笑みを浮かべた。


 完全に偶然の遭遇だがディアンの悪魔が行動を起こす前に戦うことができたからだ。

 しかも保有魔力八万ということはまだ地面の下の上級悪魔は成長しきってはおらず、比較的楽に勝てるはずだ。

 そう考えた恭也はそのまま目玉の悪魔に近づいた。


「ばれてないと思ってるのかも知れませんけど無駄ですよ。姿現さないなら前みたいに羽で斬って終わりにしますけど」


 恭也にこう言われて観念したディアンは目玉の悪魔の魔法を解き、恭也に話しかけてきた。


「どうやってるのか知らねぇけど、お前の能力ずるくね?蘇生に転移に索敵までできるんだろ?一体どういう能力だよ?」

「さあ?そこまで教える義理は無いです。それに僕の能力はそこまででもないですよ?今回あなたたちに気づいたのも魔神のおかげですし」


 そう言って恭也はランの魔法を使い、地中に潜んでいた上級悪魔を地上へと引きずり出した。

 恭也によって引きずり出された上級悪魔は身長三メートル程の大きさで、全身が黒く猿の様な見た目をしていた。

 目の前の上級悪魔の体の大きさを見て、この上級悪魔が成長途中であることを確信した恭也が戦いを始めようとしたところディアンがそれを止めようとした。


「ちょっと待ってくれよ。こいつまだ完成してないんだ!せめて後三日は待ってから戦ってくれ!」


 あまりに身勝手な頼みをしてきたディアンだったが、当然恭也はこれを聞き入れなかった。


「そんなに悪魔守りたかったら魔神のどっちか護衛に連れて来ればよかったじゃないですか?まあ、おかげで僕は楽できましたけど。自分のうかつさを恨んで下さい」


 これに関しては恭也も言っていて身に覚えがあったが、とりあえずは棚に上げて話を進めた。


「今やってるのはあなたにとって遊びなんですよね?だったらこういった想定外のことも楽しんだらどうですか?」

「はあ、しかたねぇか。それにしても魔神を部下にできるお前がうらやましいぜ」

「ん?どういうことですか?」


 ディアンの発言の意味が分からなかった恭也は、思わずディアンに質問してしまった。

 そんな恭也の質問にディアンは隠すことなく答えた。


「魔神ってあれだろ?あの丸い球に触ると戦えるっていう。俺二回試したんだけどどっちも駄目でな。他の奴使っても俺だけ魔神のいる場所に行けなくてしかたないから放っといてる」


 予想もしていなかった内容のディアンの発言にしばらく放心状態になった恭也だったが、やがて気を取り直してディアンに話しかけた。


「じゃあ、僕があなたのいる大陸に行って光と風の魔神仲間にしても問題無いわけですね?」

「ああ、構わないぜ。どうせ俺使えないし」

「……まさか石が壊れてたりするんじゃないですよね?」


 恭也がこれまで何の問題も無く魔神を三人仲間にできた以上、魔神の封印を異世界人が解けないということはないだろう。

 そう考えるとラインド大陸にある魔神が封印されている石に異常があると考えるのが自然だ。

 そのためこの質問を恭也はしたのだがそれは杞憂だった。


「ああ、その心配は無いぜ。というより魔神と戦えなくてむかついたから丸い球を壊そうとしたんだが、傷一つつかなかったからな。あれ壊せるような奴いないと思うぜ。理由は想像ついてるから心配しなくていいぞ。お前なら問題無く戦えるだろ」

「理由って何ですか?」

「さあ?そこまで教える義理はねぇよ。さ、そろそろ始めようぜ。完全に成長してないとはいえ、こいつは俺の自信作だ。精々楽しんでくれ」


 そう言ってディアンは目玉の悪魔を恭也と猿型の悪魔から離し、それを合図に戦いが始まろうとしたのだがここでウルが恭也に話しかけてきた。


(この辺り街もねぇし俺にやらせてくれよ)

(分かった。でも気をつけてね)


 変な言い方になるが、ウルの言う通り今の状況はウルが上級悪魔と一対一で戦うには絶好の機会だった。

 こんな機会は今後なかなか無いだろうと考えた恭也は、『魔法看破』で猿型の悪魔の情報をウルと共有してからウルに十万の魔力を渡す形でウルとの融合を解いた。


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