表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/244

異世界転移

初めましての方もそうでない方もこの作品を読んで下さりありがとうございます。

初めて投稿した作品なので拙いところもあるかも知れませんが楽しんでもらえれば

嬉しいです。


 高校二年生のあたえ恭也は気がつくと見知らぬ空間にいた。

 ついさっきまで通い慣れた通学路にいたはずなのに、気がついたらこの状況だ。

 わけも分からず辺りを見渡す恭也だったが、周囲には建物も光も何も無い。


 しばらくあても無く歩き回った後で恭也は途方に暮れ、そのまま五分程経った頃、恭也の前に一人の青年が姿を現した。

 恭也の前に姿を現した青年は特にこれといった特徴の無い見た目をしており、戸惑う恭也に青年は丁寧にあいさつをしてきた。


「初めまして、能恭也様。私は神々の代行者。短い間ではありますがよろしくお願いします」


 突然現れて訳の分からない発言をする青年を前に恭也は一瞬呆けてしまったが、この青年しか情報源が無いのも事実だった。気を取り直して恭也は青年に質問した。


「ここはどこなんですか?僕は家に帰ってる途中だったはずですけど」


 この状況なら誰もがするであろう質問をした恭也だったが、青年の答えはまたも理解不能なものだった。


「ここは世界と世界の狭間。本来なら世界の管理者たる神々しか入ることはおろか、認識すらできない場所でございます」

「…なるほど、僕をここに連れてきた理由は何ですか?」


 青年の発言を完全にスルーした恭也は、強引に話を進めることにした。

 これで次の青年の発言が理解不能なものだったら、青年との会話は諦めよう。

 そう考えていた恭也だったが、青年の次の発言で恭也は考えを改めた。


「私との会話を諦めるのは自由ですが、私と恭也様が会うのはこれが最初で最後です。説明はきちんと聞いておいた方がよいと思いますよ?」


 自分の考えを言い当てられた恭也はまだ半信半疑ながらも青年の説明を聞く気になり、そんな恭也を見て青年は説明を続けた。


「恭也様をここに呼んだ理由はとある世界に転移してもらうためでございます」


「とある世界、パラレルワールドってやつですか?」


「厳密に言えば違いますが、その理解でも問題ございません」


 人間がいない世界や第二次世界大戦が起きなかった世界といった自分たちの知っているものとは少し違う世界。

 隣り合ってはいるが決して交じり合うことはない世界。

 恭也が持っているイメージと言えばこんなものなのだが、そこに青年の補足が入った。


「恭也様に行っていただく世界は科学技術が発達していない代わりに魔法や悪魔が存在している世界でございます」

「へえ、悪魔が。でもどうしてわざわざ他の世界の人間を送り込んだりするんですか?先に言っておきますけど、僕けんかもろくにしたことないんで魔王とか倒せって言われても困りますよ?」


 異世界よりは聞き慣れた悪魔という単語が出てきたが、聞き慣れているからと言って対処できるわけではない。

 青年の説明を聞けば聞く程、恭也のテンションは下がっていった。


「大丈夫でございます。悪魔と言っても現地の人間たちで十分対抗できる強さしかありませんし、世界情勢も恭也様の元いた世界と同じ程度には安定しておりますので」

「じゃあ、僕を送り込む必要は無いんじゃないですか?」


 異世界になど行かされるのは何とか阻止したい恭也は、この会話の流れなら何とか異世界行きを断れるのではと思い始めていた。

 しかしさすがにそううまくはいかなかった。


「神の皆様は戯れに世界を作られて、その世界で起こることを見て楽しんでいるのですが、ごくまれにその世界の発展が停滞してしまうことがあるのです。せっかく神々が用意したその世界特有の要素を現地の人間がうまく使えていない場合にそうなることが多いのですが、そういった際には刺激として他の世界の人間を送り込むのがここ数百年の通例となっております」

「僕刺激になれるような大層な人間じゃありませんよ。今からでももっと頭いい人とか腕っ節が強い人とかにした方がいいですって」


 何とか自分の異世界行きを阻止しようと試みる恭也に、青年がとどめを刺した。


「誤解なさっているようですが、私が今行っているのは説得ではなく説明です。恭也様を別の世界に送り込むことは決定しております」


 突き放すように言う青年にげんなりした表情を見せた恭也に、青年は安心させるように説明を続けた。


「もちろん、何もせずに送り込むなどといった非道なことはいたしません。一つ能力を差し上げます」

「ああ、コピー能力とか時間停止とかですか?」


 本人の意思関係無く異世界に送り込んでる時点で十分非道だという言葉をぐっと飲みこみ、恭也は漫画でよく聞く強い能力を思いつくまま口にした。

 文句を言わなかったのは、恭也が怒りを覚えつつも諦め半分でこの状況を受け入れていたからだ。


 こうなったら異世界に送られること自体は受け入れ、もらえる能力とむこうの世界の魔法で元いた世界に帰る方法を考えるしかないだろう。

 そう考えていた恭也に青年が説明を続けた。


「どういった能力になるかは送り込まれる世界と本人の欲望で決まります。今から恭也様が行かれる世界の場合ですと、以前の方が何でも消し去る能力。その前の方は異性を自由に操れる能力でしたね」


 ずいぶん能力の強さに開きがあるようだったが、それよりも気になることがあった恭也はそれを青年に尋ねた。


「その能力を現地の誰かに与えても刺激にはなるんじゃないんですか?」


 どうせ無駄だろうとは思いつつも恭也は代案を提示してみたのだが、恭也の案は予想通り否定された。


「各世界の人や物に直接干渉するのは神々の間で禁止となっております。そのためわざわざ恭也様をここに呼んでから別の世界に送り込んでいるわけです」


 一度この世界に恭也を呼ぶことで何がどうセーフになるのか恭也には分からなかったが、この状況は不幸な事故に遭ったと思うしかないだろう。

 別に死ぬわけではないのだからまだましだ。

 ここで恭也はもう一つ気になったことを尋ねた。


「送り込むのって僕が初めてじゃないんですね?その人たちがうまくやってれば僕が行く必要無いと思うんですけど、その人たちって今あっちでどうしてるんですか?」


 恭也のこの質問に青年は目をそらすと、わざとらしい口調で会話を打ち切った。


「おっと、もう時間になりました。恭也様ならあちらの世界でうまくやれると信じております。ではこれをどうぞ」


 青年はそう言うと、能力の種となる青い光球を恭也に撃ち込んだ。


「ちょっ、まだ話は終わって、」


 恭しく頭を下げながら自分を見送る青年に近寄ろうとした恭也だったが、突然視界がゆがんだため青年に近づくことはできなかった。


「それではご武運を。恭也様が元いた世界についてはご安心を。元々恭也様がいなかった世界に書き換えておきますので、家族や友人の皆様が悲しむことはありません」

「そんな、勝手な!」


 ついでとばかりにとんでもないことを口にする青年に、恭也は文句を言おうとした。しかしその前に恭也の姿はこの場から完全に消えてしまった。


「本当に頑張って下さいね」


 今までのどこか芝居がかったしゃべり方から一転し、青年はつぶやく様についさっき送り出した恭也への応援を口にした。

 あの世界へ送り出す人間は恭也でちょうど二十人目だ。


 最初の十五人は恭也の言う通り頭の良さや腕っ節で選んでいたのだが、ほとんどの者が一ヶ月も持たずに死んでしまった。

 そして十六人目から十九人目はそのまま生きていれば犯罪史に名を残したであろう人物や世界そのものに強い憎しみを持っているなど欲望の強さで選んだ。


 この判断自体はうまくいっていたので、その集大成となる恭也には青年も期待していた。

 ここで恭也の能力が確定し、青年は笑みを浮かべた。

 あらゆる困難に打ち勝つ能力。

 まさに青年の期待通りの能力を恭也は手に入れてくれたようだった。


 異世界に送る人間は一人選び出すだけでも二、三年はかかる。

 その上送り出す人間が元いた世界の全ての住人の記憶と過去を改変しないといけない。

 これは適当に行うと各所で矛盾が起こってしまうため、それなりに手間がかかる。


 何度も行うのは面倒なので、今度こそうまくいって欲しいものだと青年は考えていた。

 理由はともかく恭也の異世界での成功を祈っていた青年はしばらくすると念のために次に送り込む人物の選定を始めた。


 恭也は気がつくとまたしても見知らぬ場所にいた。

 車二台程の幅に土がむき出しになった、おそらく道の真ん中に立っており、恭也が辺りを見渡すと右手には森が、左手には草原が広がっていた。


 どうしたものかと途方に暮れた恭也は、自分の中に今まで感じなかった何かを感じた。

 これが青年が言っていた能力かと思い、恭也は手をかざして何かを撃ち出そうとした。

 しかし何も起こらず、続いて空を飛ぼうとしたがやはり何も起こらない。


 少し楽しみにしていた能力だったが、まさかノーヒントで使わされるとは思っていなかった。

残念ではあるが、ここで途方に暮れていてもしかたがない。

 とりあえず道に沿って歩けば人に会えるだろうと考えて恭也は歩き出した。


 そして歩いている内に段々と怒りが湧いてきた。

 どうして自分が異世界になど送り込まれなければいけないのか。

 刺激だかなんだか知らないが冗談じゃない。


 理不尽な不幸が人を襲うことは珍しくもないことは子供の頃から理解しているが、それと納得できるかは別の問題だ。

 ぶつける相手もいない苛立ちを抱えた恭也は、街道を当てもなく進んだ。

 そうして歩いていた恭也は、幸運にも三十分も歩かない内に二台の馬車に会うことができた。


「どうした、ボウズ?」


 右ほおに目立つ傷のある男に声をかけられた恭也は、自分が別の世界から来たと言っても信じてはもらえないだろうと考え、旅の途中とだけ答えた。


「そうかい。だったら荷物と一緒でいいなら馬車に乗せてやろうか?」

「いいんですか?ありがとうございます」


 突然見知らぬ場所に放り込まれ、初めて会う人物が親切な人で良かった。

 そう考えて安心していた恭也は、恭也の着ている学生服に視線を向ける男の様子に気がついていなかった。


「おーい、一人追加だ!」


 荷台に乗っている同行者への呼びかけだろう男の声を聞きつつ恭也は馬車の荷台の布をめくり荷台に上がろうとした。

 しかし恭也が荷台の様子を確認するひまも無い程突然に、恭也は胸倉をつかまれて中にいた男に荷台へと引き込まれた。


 その後荷台にいた二人の男に押さえつけられた恭也は、首に金属製の首輪をつけられてしまった。何が起こったのか分からない恭也の視界には不快な笑みを浮かべる四人の男と恭也と同じ首輪をつけられた十人程の少年、少女の姿があった。

 彼らの内何人かは明らかに人間ではなかったが、それに驚く余裕も無く恭也は突然の手荒い扱いに声を荒げた。


「いきなり何をするんですか?」


 なんとか体を起こして男たちに質問をする恭也に、一人の男が馬鹿にしたような口調で説明を始めた。


「お前のその服見りゃ誰でも分かる。お前異世界から来たんだろ?来てそうそう残念だったな。お前はこれから奴隷として売られるんだよ」


 男の発言を聞き、恭也はようやく自分が男たちに騙されていたことに気がついた。

 異世界から来た人間が普通に認知されていることには驚いたが、今の恭也はそれどころではなかった。

 自分の首につけられた首輪に手を伸ばす恭也だったが、別の男がそれを止めた。


「おっと、それに下手に触らない方がいいぜ。それを決められた方法以外で外そうとすると、首輪の内側に仕掛けられてる風魔法が発動してお前の首を斬り落としちまうからな」


 それを聞き、恭也は慌てて首輪から手を放した。

 それを見た男の一人が嘲笑を浮かべながら更に説明を続けた。


「ついでに言っておくと、俺たちが首輪の番号を唱えた場合もその魔法は発動する。どんな能力持ってるか知らないが、諦めな」


 高笑いをあげる男たちとそれを聞き、身をすくめる少年、少女たち。

 それを見て絶望と恐怖で混乱した恭也は思わず近くにいた男をアッパーで殴り倒した。

 そのまま荷台から飛び出した恭也は痛む拳にも気を留めずに走り出した。そんな恭也の後ろから男の怒号が聞こえてきた。


「このクソガキが!くたばれ、二十三!」


 男がそう叫ぶと同時に恭也の首に鋭い痛みが走り、恭也の意識は程なく途絶えた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ