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怨念

 桜は、自分の言った言葉に絶句した。顔は強張り、怯え、自分でも気付かないうちに、隣にいた洋介の腕にしがみついていた。不意な出来事に思いながらも、洋介は桜にやさしく話しかける。


「ど、どうしたの? 桜ちゃん?」

「ご、ごめんなさい。変な声が聞こえたものですから、つい咄嗟に」

「ねぇねぇ、どうしたの?」

「逃げろ!」


 叫び声とともに、健一は手に持っていたスマホを壁に向かって投げつけた。みな、健一の声と行動に動揺し、混乱した。桜と鈴音は、洋介の背中に隠れて動こうとしない。綾は、太一の腕にしがみついている。洋介と太一は、不審な行動をとり、混乱を招いた張本人を問い詰めた。


「おい、健一。一体どうした?」

「逃げろって、どういうことだよ!」

「み……見たんだよ。聞こえたんだよ。写ったんだよ! 小さな子供が、誰かの袖口を引っ張ってたのを! ねぇねぇ、どうしたのって!」

「「なっ!」」


 二人は、背筋が凍る思いをする。特に太一は、その声を一度聞いているだけに、空耳ではなかったことに血の気が引いていく。


「早く、ここから出ようぜ!」


 太一の声でみな、入ってきた大きな扉まで移動する。男性三人で扉に向かって、力の限り体当たりをすると以外にも軽く開き、そのままうつ伏せ状態で地面に転んだ。


「あ、開いたぞ」

「健一、早く車で逃げるぞ!」


 六名は急いで車に乗り込むと、後ろを一切振り向かずに前だけを見て、健一はアクセルを踏む。他の五名は、顔を上げたりせずに下を向き、手を合わせながら無事に帰れることを祈っている。薄暗い森を走っていると、次第に周りが明るく見え始めた。


「おい! 森を抜けるぜ!」

「よかったぁ」

「早く、出ますわよ!」

「助かりましたね」

「あっぶねぇ」

「よし、このまま抜けるよ」


 健一が運転する車は森を抜けた。しかし、そこは断崖絶壁で車は重力に従い落下する。そこは森林が広がっていて、人が立ち入ったことがない場所だった。落下した車は天井から潰れた後、炎上。周りの木などに火は回らずにいる。一人、車から出れた人がいる。まともに体を動かせないで状態で、地面を這いつくばっている。そして、回りを見ると覚悟を決めた。


 朽ち果てた、無数の車がそこにあった。植物が車を覆っていることから、長い年月が経っていると推測される。


「あぁ、あの洋館から生きて帰れないって、こう言うことだったんだね……写真を見たのは僕だけ。僕だけが取り憑かれたんだ、きっと。それなのに、僕が運転してたから、みんなを巻き込んだんだ……ごめんね。僕もすぐに後を追うよ」


 ネット上で、偶然発見した一つの噂の記事。彼らのような、心霊スポットなどに興味を持ち、実際にその場所に行くものは後をたたない。森林で朽ち果てた無数の車が、それを物語っていた。

ご愛読、ありがとうございます!

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