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「ねぇ! さっき誰か喋った?」

「僕は何も」

「お、俺もだ!」

「私もですわ!」

「私もです。でも、さっきも太一さんもそのようなことを言っていましたね」

「あ、あぁ。確かにそうだ」


 綾は、他の五人に質問をするが、みな首を横に降りながら返答をする。


「ちょっと、あれ……見て! 壁に何かある」


 綾は、スマホのライトが照らしている壁を、みんなに分かるように指をさした。すると、他の五人はおもむろに、その方向に顔を向けた。六人のスマホのライトが一点に集約しているのため、その部分だけが異様に明るくなっていた。


「なんだ、これ?」

「何かの絵……みたいですわね」

「ですが、埃と植物でよく分かりません」

「だったら、それ取っちまおうぜ」

「僕も同じ意見だ」


 太一と健一、洋介は、壁にある絵に付いている、埃などを取り除き始めてた。綾と桜、鈴音は壁際にいる三人が、作業しやすいように壁にスマホのライトを当てている。埃はある程度取れたが、植物の蔓はびっちりと張り付いていて、顔や体の一部が所々に分かる範囲でしか除去することは出来ずにいた。


「うーん、誰だろう?」

「ここに、住んでたやつだたりして」

「洋介さん、不気味な発言は控えてください」

「全くですわ!」

「おい、健一。写真、撮ってみようぜ?」

「よし、撮るよ」


 健一は、スマホを絵に向けた。

 カメラのシャッター音が、静かで薄暗い洋館に響く。健一は、撮った写真をみんなに見せようと、スマホを横に持ち直した。桜と鈴音以外は、その写真を見ようと、スマホを片手に健一の体に密着させて両側から覗き込む。スマホのライトは、お互いの体が光を遮断されてしまい、少し離れている桜と鈴音のライトと、健一のスマホだけが辺りを照らしていた。


「早速、見てみようぜ」

「みんな、写真開くよ」

「って、健一。何も写ってないじゃんかよ」

「ほんとだ。画面、真っ暗だね」

「桜ちゃんと鈴音ちゃんも、見に来なって。大丈夫だからさ」


 洋介は、桜と鈴音を健一のスマホを見ながら、声に出して何度も呼んだ。呼ばれた二人は、互いに目を合わせ、肩を落としながらも洋介たちが居る場所に行くことにした。そして、洋介の隣から健一のスマホを覗く。


「確かに……何も、写っていませんわね。真っ暗ですわ」

「な! 俺の言った通りだろ?」

「ですが、変です。私たちは、ライトを照らしていました」

「そ、そうだよ! ウチら、スマホで明るくしてたよね?」

「健一。画面、閉じてるってことはねぇよな?」

「それはないよ。僕は、確かに絵の写真を撮ったんだ。間違いないよ」

「ねぇねぇ、どうしたの?」

「もう……分かったから。僕の服、引っ張らないでよ。今度は、保存先から開くから」

「……健一さん。今、誰と話してたん……ですか?」

「え? 話すも何も、誰かが僕の服を引っ張ったんだよ? 君たちじゃないの?」

「えっ……健一さん。何を言って……」


 健一は、スマホから一旦目を離して両側に顔を向けた。

 両腕は密着されていて腕を動かせる範囲は限られていた。みんなは覗き込むように健一が手に持っているスマホに顔を向けている。床を明るく照らしているのは、健一が持っているスマホと、桜と鈴音の三人だけだった。


「え……じゃあ、誰が僕の服を引っ張ったの……?」

「ちょ! 変なこと言わないでよ!」

「き、気のせいだろう? な?」

「気にしないほうがいいぜ? わ、忘れろ!」

「もう、写真なんてどうでもいいですわ! 早くここから出ますわよ!」

「鈴音さんと、同意見です。私も、ここに居たくありません」

「ねぇねぇ、どうしたの?」

「ですから、ここに居たくありま……せ……ん」

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