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好奇心

 人里離れた森の奥に、老朽化した一軒の古い洋館がある。

 近くに住む村人には、その洋館に一切立ち入るなと昔から言い伝えられている。猟奇的な殺人者が、洋館に住んでいた者を容赦なく殺害した後に自殺をした。その怨念となった霊に取り憑かれたら生きて帰れないと言うのだ。

 

 この話を、ネット上で偶然見つけた一人が友達五人に話をした。後日、話を持ちかけた人を中心に話し合いをして、全会一致した男女六名を乗せた車がその古い洋館に向かっている。


「なぁ、健一。ホントにこの道で合ってるのかよ? 出発してから二時間は経ってるぜ?」

「そう言うなって太一。さっき寄った村で聞いただろ? あのすげぇ怒った顔で言ってきたんだ、間違いない!」

「でもさ、ほんっとにそんな霊を写真に撮れたら驚きだよね! ウチらの大学でちょっとした有名人? てきな!」


 六名を乗せた車はヘッドライトを点灯させて、太陽の光が届かない薄暗い森の中を奥へと進んでいる。太一、健一、綾の三人は霊の話で会話を弾ませていた。


「綾さん、少しはしゃぎすぎです。本当に取り憑かれたらどうするんですか?」

「心配するなって、桜ちゃん。そのために俺がいるんだろ? 俺んとこの家、寺だし。親父に頼べば除霊してくれんだろ。鈴音ちゃんもそう思うだろ?」

「はぁ、洋介君。別に、あんたが威張ることではありませんわ……ふぅ、本当にでてきそうですわね」


 桜と鈴音は、車が森の奥に進む度に、段々と口数が減ってきている。洋介は、桜と鈴音に会話に参加させようと絶えず話題を振っていた。


「大丈夫だって二人とも。親父はテレビに出たことあるんだから、心配すんなっての」

「……お気楽ですね」

「……同感ですわ」

「おい、みんな! あれじゃないか?」


 健一は、握っていたハンドルから片手を放して洋館を指でさした。みんなは、健一の声を聞き、フロントガラス越しに木でうっすらと見え隠れする建物に目を向けている。近くまで移動して、入り口と思われる場所の近くに車を停める健一。洋館の周りには隙間がなく木で覆われていて、植物の蔓が建物に纏わりついている。激しく老朽化が進んでいて、窓ガラスは所々割れてたりひびが入っていた。車から降りた六名は、洋館を見上げながら言葉を失った。


「……いかにもって感じだね」

「なんだよ、綾ちゃん。さっきまで超がつくほどはしゃいでじゃんか」

「なぁ、俺たち何しにここに来たと思ってるんだ。超常現象サークルにうってつけの場所だぜ?」

「僕も太一に賛成だ。さぁ中に入ってみようか」


 健一の声につられて、意気揚々と洋館に入っていく綾と健一、そして太一。洋介は、入るのを躊躇っている、桜と鈴音の背中を押して前の三人に続く。入り口かもしれない大きな扉は、軽く引っ張っただけで開けることが出来た。中は薄暗く、窓から太陽の光が差し込まないと見えずらく、植物の蔓は建物内までびっしり張り付いていた。六人が中に入ると、ポケットや鞄からスマホを取り出して辺りを照らした。正面には両側から二階に登れる階段があり、その途中にある踊り場には天井まで届きそうな大きなステンドガラスがある。まずは、踊り場まで歩いていくことにした。


「うわぁ、随分でけぇな……教会みたいだぜ」

「素敵……なんの絵だろう? 天使……かな?」

「僕からしてみれば、悪魔のようにも見えるよ」

「やっべ、気分上がってきた!」

「この場所で見なければ、さぞかし美しく見えるでしょう」

「全く、桜さんまでそのようなことを……だけどそれは同感しますわ」

「うん、きれいだね!」


 開いていた筈の扉は、ゆっくり音を立てながら閉まっていく。

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