勝敗
一斉に声の方を見る。
ドアの外に、野村とココアと青菜が立っていた。
「野村…!青菜達と逃げろ…!」
僕は叫んだ。何してるんだ!僕が時間を稼いでいたのに…!
松岡は
「野村!お前らグルだったのか…!どうやってミアキスを奪った?!」
と焦っている。
ただリーダーの男は落ち着いていた。
「野村くん…というのかな。はじめまして。君は今、僕らに指図できるほど有利じゃないと思うよ。僕たちが全力でかかっていけば、君らを取り押さえるなんてわけもない。」
そう言って、建物内にいた男2人に顎で合図した。
それを見た男達はうなづいて、ゆっくり入口のドアに近づいていく。
すると…
「それ以上近づくな。」
地の底から聞こえたような声がした。
青菜だった。
こちらを睨みつけ、拳を握りしめている。
青菜の剣幕に、男達はたじろいだ。
「それ以上近づいたら、今から全頭のミアキスを呼ぶ。お前らの村をめちゃくちゃにしてやる。」
その言葉で周囲の温度が下がったような気がした。
嘘を言っているようには見えない。
ココアも
「フー!!!!!!」
と威嚇している。
これにはさすがにリーダーの男も黙ってしまった。
代わりに松岡が
「何してる!お前らさっさと行け!」
と男達に怒鳴りつける。
しかし
「わかった。今回は引くとしよう。」
リーダーの男がポツリと言った。
松岡がぽかんとして
「え。いいんですか?」
「あぁ。村人が死ぬかもしれん。下手したら村がなくなる。あのミアキスの大群が来たら、無防備な状態の今の村だと太刀打ちできない。今は無理だ。今はな。」
リーダーの男はそう言って不敵に笑った。
「じゃ、お先に失礼するよ。僕は前川だ。また合う日まで。お嬢さん。」
そう言ってリーダーの男:前川は、ほかの男たちと松岡を引き連れて帰っていった。
松岡は悔しそうに、
「明日覚えてろよ。」と怒鳴った。
野村がポツリと
「悪役のセリフじゃん。」
と言った…。