信頼
「…お、おはよう…ございます…。あの…ほんと…申し訳ございませんでしたぁぁぁぁあ!」
登校早々、教室で僕は野村から盛大な謝罪を受けた。
僕は放心状態で無表情だったので、それを野村が怒っていると勘違いしたようで、野村は延々と寝落ちしてしまい約束を破ってしまったことを詫びている。
大声で謝る野村に何事かとクラスメイトが見ている。
その視線に耐えきれなくなった僕は、野村の腕を引っ張って、屋上へと続く階段まで走った。
「おおおお…な、なに…。」
野村はすっかりビビっている。
僕は意を決して言った。
「…野村に協力してほしい事があるんです。」
僕の様子にただならぬ雰囲気を感じたのか、野村は目を見開いたまま、黙っている。
「…昨日、青菜とココアが捕まった。」
そして昨日起こったことを全て野村に話した。
「…だから、今夜あの子たちを連れ出すのを手伝ってほしい。」
「こ、今夜?!」
「青菜はともかく、ココアは早くしないと発表されて、もう二度と取り返せないところに行ってしまうかも。」
ココアはミアキスという絶滅したとされる種である。
発表されれば、どこか遠い最新の施設に移送されるに違いない。
今朝の段階ではまだ発表されてはいないが、とにかく急がなければならない。
「それってさ、見つかったらどうなる?」
「たぶん不法侵入か窃盗、もしくはその両方で捕まる。」
僕ははっきり言い切った。
野村は目を閉じて、グッとさっきよりも見開いた。
「わかった。助けに行こう。」
野村ならそう言ってくれると思っていた。